障害者雇用は、求人数の少なさや企業とのミスマッチなどから競争率が高くなる傾向にあります。なぜ採用が難しいのか、どんな人が不採用になりやすいのかを知らないままでは、対策も立てづらいでしょう。今回は、障害者雇用が狭き門といわれる理由と、突破するための具体的な対策について解説します。
障害者雇用が「狭き門」といわれる理由

ここでは、なぜ障害者雇用が“狭き門”といわれるのか、その背景にある具体的な理由について解説します。
求人数が少ないため
障害者雇用が狭き門といわれる大きな理由のひとつは、1回あたりの求人数が非常に少なくなるケースが多いことです。
一般枠の採用であれば一度に複数名を採用するケースもありますが、障害者雇用枠では「1名のみ募集」という求人が多く見られます。企業側は、法定雇用率を満たすための不足人数を補う目的や、欠員補充として募集を出すことが多いため、大規模採用になるケースは限られています。
その結果、1名枠に対して多数の応募者が集まり、競争率が高くなります。特に大手企業や在宅勤務可など人気条件の求人では、応募が集中しやすく、書類選考の段階で大きく絞り込まれることも珍しくありません。
必要な配慮によっては、採用判断が慎重になることがあるため
障害者雇用では、企業に合理的配慮の提供が求められています。ただし、その配慮が企業にとって過重な負担となる場合には、対応が難しいと判断されるケースもあります。
企業の設備や人員体制、業務内容との兼ね合いによっては、必要な支援を十分に用意できない場合があります。例えば、常時のサポートが必要なケースや、安全面で特別な配慮が求められる業務では、対応が難しいと判断されることもあります。
採用の可否は、応募者の能力だけで決まるものではありません。企業側がどのような環境や支援を整えられるかという点も含めて、総合的に検討されます。そのため、企業ごとの受け入れ環境の違いが、選考結果に影響する場合があります。
ブランク期間の長さがハードルになるため
ブランク期間があることだけで、すぐに不採用になるわけではありません。ただし、その理由や期間中の過ごし方を十分に伝えられない場合、選考に影響することがあります。
企業は、安定して長く働けるかどうかを重視する傾向があります。療養やリハビリ、スキル習得など前向きに過ごしていた場合でも、具体的に説明できないと状況が伝わりにくいことがあります。
ブランクがある場合は、その期間に取り組んでいたことや、現在どのような状態で働けるのかをあらかじめ整理しておくと、安心して選考に臨みやすくなります。
年齢が上がると採用されにくくなるため
法律上、年齢を理由とした不採用は原則として禁止されています。ただし、採用の現場では、若手や将来性を重視する企業があるのも現状です。
障害者雇用に限らず、多くの企業は長期的な育成や組織全体のバランスを考慮して採用を行っています。同じ条件で比較された場合、将来の成長や柔軟性が期待される若年層が評価されやすいこともあります。
また、年齢が上がると、それまでの経験や専門性がより重視される傾向があります。職務経験やスキルが企業の求める水準に届いていない場合、即戦力としての評価を得にくいこともあります。
障害者雇用で採用に至りにくいケースの特徴

ここでは、障害者雇用で不採用に至りがちな特徴について、企業側の視点も踏まえながら解説します。
障害の理解や説明が不足している
自分の障害特性を十分に整理できていない場合、面接でうまく説明できず、評価に影響することがあります。
例えば、どのような場面で困りやすいのか、どのような配慮があれば力を発揮しやすいのかを具体的に言葉にできないと、働くイメージが伝わりにくくなります。企業は合理的配慮を検討するために、障害特性や必要なサポート内容を把握したいと考えています。
説明が曖昧なままだと、自己理解が十分でないと受け取られたり、職場での対応が難しいのではないかと懸念されたりすることがあります。
重要なのは、障害の程度そのものではなく、自分の特性や必要な配慮をどこまで具体的に伝えられるかという点です。
体調が不安定な状態が続いている
体調の波が大きく、安定して出勤できる見通しが立っていない場合は、採用に慎重な判断がなされることがあります。
企業は「継続して働けるかどうか」を重要な判断材料のひとつとしています。欠勤や早退が頻繁に発生する可能性が高いと受け取られると、業務への影響を懸念されることがあります。
通院や体調管理に取り組んでいること自体は前向きな姿勢ですが、現在の安定度や働ける状況が十分に伝わらない場合、企業側が判断に迷う要因となることがあります。
企業が求めるスキルを満たしていない
応募先企業が求めるスキルや経験を満たしていない場合、採用に至らないことがあります。
障害者雇用であっても、業務を遂行するための基本的なスキルは求められます。PC操作やビジネスマナー、専門知識など、職種ごとに必要な能力が不足していると判断されれば、評価につながりにくくなります。
また、必要なスキルを持っていたとしても、それが十分に伝わらない場合には、本来の強みが評価されにくいこともあります。
質問の受け答えにズレがある
面接での受け答えが質問の趣旨とズレている場合、コミュニケーション面に不安があると判断されることがあります。
例えば、「志望動機」を尋ねられているにもかかわらず前職の不満が中心になってしまう、「配慮事項」を聞かれているのに具体性に欠ける説明に終始してしまうなど、質問と回答がかみ合わないケースです。
企業側は、業務上のやり取りが円滑に行えるかを確認しています。そのため、質問に対して的確に答えられない状況が続くと、意思疎通に課題があるのではないかと受け取られることがあります。
障害者雇用の狭き門を突破するための対策

障害者雇用が狭き門といわれる中でも、事前準備を徹底することで通過率を高めることは可能です。企業は「長く安定して働ける人材か」「自社で活躍できるか」を総合的に見ています。ここでは、採用されるためにぜひ準備しておきたい具体的な対策を解説します。
自身の障害特性について理解する
まず取り組みたいのは、自身の障害特性についての理解を整理することです。
企業は、応募者が自分の特性をどの程度把握しているかを確認しています。どのような場面で困りやすいのか、どのような配慮があれば力を発揮しやすいのかを具体的に伝えられると、働く姿をイメージしてもらいやすくなります。
一方で、説明が曖昧なままだと、職場での対応を検討しにくくなることもあります。主治医や支援機関と相談しながら、特性や強み、必要な配慮を整理しておくことが大切です。
心身が安定した状態で仕事を探す
就職活動は、できるだけ心身が安定している時期に進めることが望ましいといえます。
体調が不安定な状態では、本来の力を発揮しづらくなることがあります。まずは治療やリハビリ、生活リズムの安定を優先し、無理のない状態で活動を始めることが安心につながります。
また、「現在は安定している」と客観的に示せる材料があると、企業側も判断しやすくなります。必要に応じて、医師や支援者の意見を共有することもひとつの方法です。
医師からの労働時間等の許可を明確にする
応募時には、どの程度の労働時間や業務内容に対応できるのかを整理しておくことも重要です。
フルタイム勤務の可否や残業の可否、通院頻度などが曖昧なままだと、企業側は働き方を具体的に想定しにくくなります。医師から労働時間や業務負荷について意見をもらい、共有できる状態にしておくと、受け入れ体制を検討しやすくなります。
自分の希望だけでなく、医学的な見解も踏まえた働き方を提示できると、より現実的な話し合いがしやすくなります。
資格取得をする
資格は、スキルや努力を客観的に示すひとつの方法です。
例えば、事務職であればMOSや簿記、IT分野であれば基本情報技術者試験など、職種に関連する資格は能力の裏付けになります。業務に直結する資格があると、担当できる業務のイメージを持ってもらいやすくなります。
また、ブランク期間中に資格取得へ取り組んでいた場合は、前向きな姿勢を示す材料にもなります。
自己PRや志望動機を明確にする
自己PRと志望動機は、選考において重要な要素です。
自己PRでは、自分の経験や強みを企業の業務内容と結びつけて伝えることがポイントです。「この経験をどのように活かせるのか」を具体的に示すことで、説得力が増します。
志望動機についても、その企業を選んだ理由や、どのように貢献したいのかを整理しておくことが大切です。
面接対策を入念に行う
面接では、障害特性や必要な配慮、職務適性について質問されることが多くあります。
あらかじめ想定される質問を整理しておくと、落ち着いて受け答えしやすくなります。また、これまでの経験や工夫を具体的なエピソードとしてまとめておくと、内容が伝わりやすくなります。
面接は、能力だけでなく、お互いに安心して働けるかを確認する場でもあります。準備を重ねることで、自分らしく伝えられるようになります。
障害者雇用で就職する上で活用したい支援機関
障害者雇用での就職を目指す際は、一人で抱え込まず、専門の支援機関を活用することが大切です。
自分に合った相談先でサポートを受けることで、求人紹介だけでなく、準備段階から定着支援まで一貫した支援を受けられ、スムーズな就職活動につながります。
ハローワーク
ハローワークには障害者専用の窓口が設けられており、専門の担当者が個別に対応してくれます。
障害者雇用枠の求人紹介だけでなく、応募書類の添削や面接対策、各種就労支援制度の案内なども受けられます。地域の求人情報に強みがあり、地元で働きたい人にとって心強い存在です。
障害者就業・生活支援センター
障害者就業・生活支援センターでは、就職活動の準備から生活面の相談まで幅広い支援を行っています。
職務の選定に関するアドバイスや、生活習慣の改善に向けた助言など、働く前の土台づくりをサポートしてくれるのが特徴です。就職後の定着支援も行っており、長く働き続けるための相談先としても活用できます。
地域障害者職業センター
地域障害者職業センターでは、専門的な職業リハビリテーションを受けられます。
職業評価をもとにリハビリテーション計画を作成し、センター内での職業体験や職業準備支援を実施しています。自分に合った働き方や職種を客観的に見極めたい人に適した支援機関です。
就労移行支援
就労移行支援事業所では、就職に必要な知識やスキル向上のための訓練を受けられます。
ビジネスマナーやPCスキルの習得、模擬面接など、実践的な支援が行われています。また、ハローワークや障害者就業・生活支援センターと連携しながら、希望や状況に合わせた職場探しをサポートしているのも特徴です。
就職後のフォローもあるため、就労に不安がある方にも心強い選択肢です。
まとめ
障害者雇用が狭き門といわれる背景には、求人数の少なさや企業との適性のミスマッチ、準備不足など複数の要因があります。自己理解を深め、心身を安定させ、スキルや面接対策を徹底することが内定への近道です。支援機関も積極的に活用しながら、自分に合った働き方を実現していきましょう。
Profile
著者プロフィール
めぐるファーム編集部
障害者の雇用が少しでも促進されるよう、企業担当者が抱いている悩みや課題が解決できるようなコンテンツを、社内労務チームの協力も得ながら提供しています。