PTSDの人にかける言葉は、相手の回復や安心感に大きな影響を与えます。特に職場では、何気ない一言が支えになる一方で、症状を悪化させてしまう可能性もあります。そのため、適切な言葉選びと接し方の理解が重要です。今回は、PTSDの社員にかける言葉とかけてはいけない言葉、さらに職場での具体的な対応や関わり方について解説します。
PTSDの主な症状

PTSDは心的外傷後ストレス障害と呼ばれ、事故や災害、ハラスメントなど強いトラウマ体験をきっかけに発症するケースがあります。
職場で適切な配慮や支援を行うためには、症状の特徴を理解することが重要です。ここでは代表的な症状について解説します。
再体験症状(フラッシュバック・悪夢)
再体験症状とは、トラウマ体験が現在進行形の出来事のように繰り返し思い出される状態を指します。
突然、過去の出来事が鮮明によみがえるフラッシュバックや、関連する悪夢を見ることが特徴です。特定の音や匂い、場所、言葉などが引き金となり、本人の意思とは関係なく記憶が呼び起こされます。
そのため、日常生活や業務中でも強い不安や恐怖に襲われ、集中力の低下や業務パフォーマンスへの影響が生じやすくなります。
回避症状・過覚醒・否定的認知
回避症状・過覚醒・否定的認知は、PTSDにおいて日常生活や職場環境に影響を及ぼす重要な症状です。
回避症状では、トラウマを想起させる人や場所、状況を避ける行動が見られます。職場では特定の業務や環境の回避により、業務遂行に支障が出る場合もあります。
過覚醒は神経が常に緊張した状態となり、些細な物音や刺激にも敏感に反応する状態です。不眠や集中力の低下、イライラしやすくなるなどの影響が現れやすくなります。
さらに、否定的認知では自己嫌悪や絶望感が強まり、「自分には価値がない」「皆に必要とされていない」などの思考や、「誰も信用できない」「世界は自分の敵」など周囲への不信感が生じることがあります。
加えて、喜びや楽しさを感じにくくなり、恐怖や怒り、恥といった感情に偏りやすくなる点も特徴です。
PTSDの社員にかける言葉

PTSDの症状をもつ社員への言葉かけでは、「安心感を与えること」と「共感を示すこと」が重要です。無理に励ましたり原因を追及したりするのではなく、本人が安全で受け入れられていると感じられる関わりが求められます。ここでは具体的な言葉のかけ方について解説します。
安心感を与える言葉
安心感を与える言葉は、相手の不安や緊張を和らげる上でとても重要です。
「無理しなくていいよ」「ゆっくりでいいよ」「あなたのペースに合わせるから」などの声かけは、焦りやプレッシャーを軽減します。自分のペースで出社や仕事、治療や休憩をしても問題ないというメッセージになります。
また、「そばにいるから大丈夫だよ」と伝えることで、心理的な安全性を感じやすくなります。さらに「話したくなったら、いつでも聴くよ」といった言葉は、無理に話させない配慮を示しつつ、支援の姿勢を明確にします。
過度な期待や負担を取り除き、安心して業務や治療に向き合える環境づくりを意識しましょう。
共感・寄り添いを示す言葉
共感や寄り添いを示す言葉は、本人の孤立感を和らげる効果があります。
「つらいんだね」「それは大変だったね」などの言葉は、感情を否定せず受け止める基本的な姿勢を示します。
さらに「あなたの気持ちは間違っていない」と伝えることで、自己嫌悪や自責の念を軽減できます。「一緒に考えよう」といった言葉は、問題を一人で抱え込まなくて良いという安心感につながります。
加えて、相手の話を遮らず「そうなんだね」と静かに受け止める姿勢も重要です。評価や否定をせずに耳を傾けることで、信頼関係が築かれ、回復を支える土台となります。
PTSDの社員にかけてはいけない言葉
PTSDの社員に対しては、善意からの発言であっても症状を悪化させたり、信頼関係を損なったりする可能性があります。特に、本人の感じている苦痛を軽視したり、回復を急かしたりする言葉は注意が必要です。ここでは、避けるべき言葉の具体例について解説します。
回復を急かす言葉
PTSDの回復には個人差があり、時間を要するケースも少なくありません。そのため、回復を急かす言葉は本人に強いプレッシャーを与え、自己嫌悪や焦りを招く原因になります。
例えば「早く良くなってね」「いつまでも落ち込まないで」などの言葉は、本人のペースを無視している印象を与えかねません。
また「もう大丈夫でしょ?」という発言は、症状の深刻さを軽視していると受け取られる可能性があります。
さらに「気持ちを切り替えて前向きに」といった言葉も、努力不足と捉えさせてしまい、かえって心理的負担を強める要因になります。回復を促すつもりでも、結果的に追い詰めてしまうリスクがあるため注意が必要です。
気持ちを否定・責める言葉
本人の感情を否定したり責めたりする言葉は、PTSDの症状を悪化させる大きな要因となります。特に回避や過覚醒といった反応を強める可能性があり、職場での適応にも影響を及ぼします。
「気にしすぎだよ」「それくらい平気でしょ」などの言葉は、感じている恐怖や不安を否定するものであり、信頼関係の低下につながります。また「もっと頑張らないと」「弱いな」といった発言は、本人を責める形となり、自己否定感をさらに強めてしまいます。
加えて「なんでそうなったの?」など原因を追及する質問も注意が必要です。無理に過去を思い出させることでフラッシュバックを誘発する可能性があるため、問い詰めるのではなく、本人のペースを尊重した関わりが求められます。
PTSDによる症状が見られた際の対処法
職場でPTSDの症状を示す社員を発見した場合は、まず本人の不安を和らげ、安心できる状態をつくることが重要です。その上で、無理に対応しようとせず、適切なサポートや専門機関につなぐことが求められます。ここでは具体的な対処法を解説します。
落ち着ける職場環境を整える
PTSDの症状が見られた際には、まず安心して落ち着ける環境づくりが最優先です。
フラッシュバックの引き金となる話題や音、状況を把握し、可能な限り避ける配慮が必要です。例えば、大きな音や強い叱責などは症状を悪化させる可能性があります。
また、刺激の少ない静かな場所へ移動できるようにすることで、過度な緊張や不安を軽減できます。業務量についても見直しを行い、無理のない範囲に調整することが大切です。
さらに、休憩を取りやすい体制を整え、本人が安心して一息つける環境の確保も重要です。無理に話させず、本人が話せるようになるまで静かに寄り添う姿勢が信頼関係の維持につながります。
専門機関への相談・受診を促す
症状が継続する場合は、専門機関への相談や受診の検討が必要です。
産業医や社内カウンセラーへの相談を、本人のペースに合わせて提案することで、安心して次のステップに進みやすくなります。
精神科や心療内科、メンタルヘルス専門機関の受診を勧める際は、あくまで選択肢として提示し、強制しないことが重要です。「一人で抱え込まなくて良い」と伝えることで、心理的なハードルを下げられます。
また、企業としてはEAP(従業員支援プログラム)の活用も有効です。外部の専門家による支援を受けられる体制を整えることで、社員が安心して相談できる環境づくりにつながります。
PTSDの社員と接する際のポイント

PTSDの社員と長期的に良好な関係を築き、安定した就労を支援するためには、日常的な関わり方が重要です。無理のない配慮と継続的な支援を意識することで、安心して働ける環境づくりにつながります。ここでは具体的なポイントを解説します。
相手のペースを尊重する
PTSDの回復には時間がかかるため、本人のペースを尊重する姿勢が欠かせません。
回復を急かしたり、他の社員と比較したりすると、焦りや自己否定感を強めてしまう可能性があります。
「いつでもサポートできる」という姿勢を示しつつ、最終的な判断は本人に委ねることが大切です。
また、声をかけるタイミングにも配慮し、本人が比較的落ち着いている時間帯を選ぶことで、安心してコミュニケーションを取りやすくなります。
継続的なサポートを心がける
PTSDへの対応は一度きりではなく、継続的な関わりが重要です。定期的な1on1や日常的な声かけを通じて、安心して相談できる関係性を築いていきます。
また、業務上の配慮内容や対応履歴を記録し、上司や人事と共有することで、一貫したサポートが可能になります。日々の様子を観察し、体調や心理状態の変化に気づくことも重要です。
過度な特別扱いではなく、あくまで自然な関わりの中で支える姿勢をもつことで、本人の安心感と自立の両立につながります。
まとめ
PTSDの社員への対応では、症状の理解を前提に、安心感と共感を重視した関わりが求められます。適切な言葉かけや環境調整、専門機関との連携を通じて、無理のない支援を行うことが重要です。継続的に寄り添う姿勢が、信頼関係の構築と安定した就労につながります。
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めぐるファーム編集部
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