障害者のウェルビーイングが注目される背景と企業が取り組むべき施策

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障害者雇用率を達成したにもかかわらず、採用した社員が定着せず離職や休職を繰り返すという課題を抱える企業は少なくありません。採用数の充足という表面的な目標を達成した先に、障害のある社員が心身ともに良好な状態で働き続けられる環境づくりへの対応が求められています。今回は、障害者雇用において、こうした「ウェルビーイング」が注目される背景と、企業が取るべき具体的な施策について解説します。

障害者雇用においてウェルビーイングが注目される背景

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障害者雇用においてウェルビーイングが注目される背景には、主に4つの変化があります。それぞれの変化が重なり合い、企業に「ただ雇用するだけ」でなく「安心して働き続けられる環境づくり」を求める社会的な流れが生まれています。

精神障害者の雇用拡大と定着支援

かつて障害者雇用の中心は身体障害者でしたが、近年は精神障害や発達障害のある方の雇用も広がっています。

精神障害や発達障害のある方の中には、外見から困りごとが分かりにくく、職場の環境や人間関係の影響を受けやすい場合があります。

単に席を用意するだけでなく、メンタル面の安定や働きやすさ、すなわちウェルビーイングへの配慮が不可欠となっています。定着率の向上には、個々の障害特性に応じた継続的なサポート体制の整備が欠かせません。

「合理的配慮」の法制化と質の重視

2021年の障害者差別解消法改正(2024年4月施行)により、民間企業における合理的配慮の提供は義務化されましたが、雇用分野における合理的配慮は、障害者雇用促進法に基づき、2016年4月から事業主の法的義務とされています。

企業が対応すべき内容は、段差の解消やバリアフリー設備といった物理的な対応や、業務の切り出しにとどまるものではありません。

「周囲の理解」「個人の成長」「働きがい」といった、より主観的かつ長期的な幸福感を重視する方向への移行が求められており、配慮の「量」から「質」へと評価軸が変化しています。

出典:内閣府「事業者による障害のある人への『合理的配慮の提供』が義務化

ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)の推進

多様な人材が活躍できる組織づくりは、企業の競争力や持続可能性(SDGs)の向上に寄与すると考えられています。

心理的安全性のある環境整備は、組織全体のエンゲージメント向上にもつながる可能性があります。

D&Iを真に実現するためには、数値上の雇用率を達成するだけでなく、インクルージョンの観点からウェルビーイングへの配慮を実践することが重要です。

人材不足の深刻化

少子高齢化による労働力人口の減少を背景に、障害者一人ひとりの能力や強みを最大限に発揮してもらうことが企業にとっての急務となっています。

「雇用したら終わり」ではなく、能力や強みを発揮しながら長く働き続けられる環境整備は、企業の持続的成長を支える土台です。

ウェルビーイングへの投資は、採用コストの削減や生産性向上につながると考えられます。

障害のある従業員のウェルビーイングを下げる職場要因

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ウェルビーイングを効果的に向上させるには、まず何が低下要因になっているかを正確に把握することが重要です。職場では主に次の4つの要因がウェルビーイングを大きく下げており、これらへの対応が定着支援の前提となります。

合理的配慮と業務内容のミスマッチ

合理的配慮が形骸化し、障害特性に合わせた業務調整がなされない場合、障害者に過度なストレスや身体的負荷がかかります。一方で、配慮を意識するあまり、本人の能力やキャリア志向を無視した単調な業務ばかりを割り当てるケースも少なくありません。

後者はアンダー・エンプロイメントと呼ばれ、やりがいの喪失やモチベーション低下を招きます。配慮の不足と過剰は、どちらもウェルビーイングを損なうという認識が必要です。

コミュニケーションと心理的安全性

発達障害など「外見からは判断しにくい障害」への理解が職場に浸透していないと、誤解や偏見を生む可能性があります。また、過度な干渉とサポートの放置という極端な対応も問題となります。

適切なフィードバックやコミュニケーションがなければ、障害者は孤立感を深め、ウェルビーイングは著しく低下します。心理的安全性を確保するには、上司・同僚を含めた職場全体への理解促進が不可欠です。

物理的・制度的バリア

物理的な設備(段差、通路の幅、トイレなど)やITツールの操作性が不十分な場合、障害者は業務遂行のために余分なエネルギーを消費することになります。

加えて、障害に応じた柔軟な評価基準やキャリアパスが整備されていなければ、将来の成長や昇進が見えにくくなります。

こうした制度的バリアは、将来のキャリア展望を描きにくくし、長期的な定着に影響するおそれがあります。

相談体制の不備

困りごとを安心して相談できる社内窓口がない、または就労移行支援やジョブコーチなど社外の専門機関との連携が機能していない場合、障害者は悩みをひとりで抱え込みます。

悩みの蓄積はメンタル不調の深刻化を招き、場合によっては休職・離職につながるおそれがあります。

早期に課題を把握し対応するためにも、社内外の相談体制を整備することが企業に求められています。

企業が取るべきウェルビーイング向上の具体的対応

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ウェルビーイングを組織的に高めるには、心身のケア・柔軟な働き方・心理的安全性・キャリア支援という4つの領域で継続的な施策を実施することが効果的です。それぞれの代表的な取り組みを紹介します。

身体と精神の健康増進(心身のケア)

従業員が心身ともに良好な状態を維持できるよう、予防とサポートを両輪で強化することが基本となります。

健康診断の充実

法定健診に加え、人間ドックの費用補助や各種がん検診の補助を実施します。定期的に健康状態を確認できる仕組みが、異変の早期発見と早期対処につながります。

ストレスチェックの活用

定期的なストレスチェックを実施し、高ストレス者への面接指導を徹底します。個人の改善にとどめず、集団分析を活用して職場環境の課題を組織的に把握することが重要です。

メンタルヘルス相談窓口

産業医との連携や外部のメンタルヘルス相談窓口(EAP:従業員支援プログラム)を設置し、気軽に相談できる体制を整備します。匿名で利用できる仕組みにすることで、相談のハードルを下げることができます。

柔軟な働き方の推進(ワークライフバランス)

時間や場所にとらわれない働き方を提供し、仕事とプライベートの両立を支援することがウェルビーイングの向上につながります。

ハイブリッドワーク

テレワークと出社を組み合わせた働き方を導入し、障害特性によって通勤に困難を抱える社員の負担を軽減します。

フレックスタイム制

コアタイムを除き、始業・終業時間を従業員の裁量に委ねる制度を導入します。通院や体調に合わせて柔軟に働ける環境は、精神障害や発達障害のある方に有効です。

有給休暇の取得促進

アニバーサリー休暇やリフレッシュ休暇などの特別休暇を設け、計画的な有給取得を奨励します。休暇を取得しやすい文化の醸成が、慢性的なストレスの軽減につながります。

心理的安全性のある環境づくり(人間関係・コミュニケーション)

従業員が意見や感情を安心して表明できる開放的な組織風土を醸成することが、ウェルビーイングの基盤となります。

1on1ミーティング

上司と部下で定期的な1対1の面談を実施し、業務進捗だけでなくキャリアの悩みや体調の変化を把握します。話を聞いてもらえる機会を確保することは、障害者の心理的安全性を高める一助となります。

ピアボーナス制度

従業員同士で日頃の感謝や称賛を送り合い、少額の報酬(ポイントなど)を付与する仕組みを導入します。互いの貢献を可視化することで称賛文化が根付き、職場への所属感や自己肯定感が高まります。

社内イベント・交流促進

部署を超えた交流ができるランチ補助や、オンライン・オフラインでの社内イベントを開催します。障害の有無にかかわらず社員同士が自然に交流できる場は、孤立感の解消に効果的です。

キャリア支援とやりがいの創出(パーパスの共有)

日々の業務にモチベーションを持ち続けるには、自分の成長やキャリアビジョンを描ける環境が欠かせません。企業は以下の制度を通じて、障害者のキャリア形成を積極的に支援することが求められます。

社内公募制度・FA制度

従業員が希望する部署や新プロジェクトに自ら手を挙げられる制度を導入します。自律的なキャリア選択の機会を与えることが、仕事への主体性とエンゲージメントを高めます。

研修・リスキリング支援

資格取得の奨励金や外部のオンライン講座受講費用の補助を通じ、キャリア形成を継続的に支援します。

これらの施策は単発で終わらせず、定期的なアンケートで従業員の声を収集しながら、自社の風土に合わせて継続的に改善することが重要です。

まとめ

障害者雇用においてウェルビーイングが注目される背景には、精神・発達障害者の雇用拡大、合理的配慮の法制化、D&Iの推進、そして人材不足という構造的な変化があります。一方で、職場にはウェルビーイングを低下させる要因が多く潜んでおり、配慮のミスマッチや心理的安全性の欠如、相談体制の不備がその代表例です。これらに対応するには、心身のケア・柔軟な働き方・心理的安全性・キャリア支援の4領域で、継続的な施策を組み合わせて実施することが重要です。

障害者一人ひとりが「ここで働き続けたい」と感じられる職場環境を整えることは、組織全体のエンゲージメント向上と企業の持続的成長にも寄与し得ます。まずは自社の現状を振り返り、できる取り組みから一歩ずつ進めていきましょう。

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めぐるファーム編集部

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