「うつ病」と「躁うつ病(双極性障害)」は、どちらも気分の落ち込みが現れるため、同じ病気のように見えることがあります。しかし、この2つはまったく異なる疾患であり、治療法も根本的に異なります。特に双極性障害は、うつ状態のときに受診することが多くうつ病と誤診されやすく、誤った治療によって症状が悪化するリスクもあります。正確な知識を持つことが、自分や身近な人を守ることにつながります。
今回は、躁うつ病(双極性障害)とうつ病の違いについて、症状・原因・診断基準・治療法の観点から詳しく解説します。
うつ病と躁うつ病(双極性障害)はそもそも別の疾患

うつ病と躁うつ病(双極性障害)は混同されやすい病気ですが、本質的には異なる疾患です。
うつ病(単極性うつ病)は気分の落ち込みだけが続く病気であるのに対し、躁うつ病(双極性障害)は気分の高揚(躁状態)と落ち込み(うつ状態)を繰り返すことが最大の特徴です。
原因やメカニズムも異なります。うつ病はストレスや環境変化、対人関係のトラブルといった心理的・社会的要因が発症に関わりやすいのに対し、躁うつ病(双極性障害)は脳の神経伝達物質の異常や遺伝的要因の影響がより強いと考えられています。
そのため、治療の方針も大きく異なり、専門家による正確な診断が非常に重要です。
うつ病の症状・特徴

うつ病はどのような症状をもたらし、どのような経過をたどるのでしょうか。主要な症状と、職場に伝える際のポイントもあわせて解説します。
長期間続く気分の落ち込みと意欲の低下
うつ病は、気分の落ち込みや何事にも興味が持てない状態、集中力・判断力の低下が長期間(おおむね2週間以上)にわたって続くのが特徴です。以前は楽しめていた趣味や仕事に対しても無関心になり、「何もしたくない」「何も感じない」という状態が続きます。
また、身体的な症状も多く現れます。不眠や食欲不振、過度の疲労感が伴い、ベッドから起き上がれない日があるほど日常生活に支障をきたすケースも少なくありません。症状が重い場合は就労・就学が困難になることもあります。
うつ病であることを職場に言う際のポイント
うつ病を職場に伝える際は、集中力の低下や強い疲労感により、以前と同じパフォーマンスを維持するのが難しい状態であることを、正直に伝えることが大切です。
「最近ミスが多い」「以前より仕事が遅くなった」と感じている場合は、それが病気による症状であることを説明しておくことで、「怠けている」という誤解を防ぐことができます。
心療内科の診断に基づいていることを伝えた上で、業務量の調整や休養(休職)の必要性について上司や産業医に相談しましょう。
主治医に診断書を発行してもらうことで、職場側も適切な対応を取りやすくなります。
躁うつ病(双極性障害)の症状・特徴

躁うつ病(双極性障害)はうつ状態と躁状態を繰り返す病気です。それぞれの状態でどのような症状が現れるのかを詳しく見ていきます。
激しい気分の波(うつ状態と躁状態)を繰り返す
躁うつ病(双極性障害)の最大の特徴は、深い落ち込みが続く「うつ状態」に加えて、気分が著しく高揚し活動的になる「躁状態(または軽躁状態)」を周期的に繰り返す点にあります。
躁状態のときは、睡眠をほとんどとらなくても疲れを感じなくなったり、次々とアイデアが浮かぶ万能感に包まれたりします。
また、過剰な自信から浪費や無謀なビジネス計画の実行、衝動的な言動に走ることも多く、本人は「絶好調」と感じているため病気の自覚が生まれにくいのが特徴です。
双極I型では入院治療が必要なほどの激しい躁病エピソードが現れ、双極II型では比較的軽度な「軽躁状態」が現れることが多いです。
躁うつ病(双極性障害)であることを職場に言う際のポイント
躁うつ病(双極性障害)を職場に伝える際は、症状に波がある病気であることへの理解を求め、うつ状態の時だけでなく躁状態の時のサインも周囲に知っておいてもらうことが有効です。
「急に饒舌になる」「睡眠時間が短くなっている」「業務の進め方が突然変わる」などの変化が前兆サインとして当てはまる場合は、あらかじめ共有しておきましょう。
自分がハイペースになりすぎているときに、職場の同僚や上司から「最近少し多弁になっていますよ」と客観的な声をかけてもらうなど、周囲のサポート体制をお願いしておくことが再発防止にもつながります。
うつ病と躁うつ病(双極性障害)が混同されやすい理由
なぜ、この2つの病気は同じ疾患と思われやすいのでしょうか。主な理由を解説します。
診察を受けるタイミングの多くが「うつ状態」であるため
躁うつ病(双極性障害)の患者の多くは「うつ状態」の期間のほうが長く、気分が落ち込んだタイミングで心療内科を受診するため、初診ではうつ病と診断されやすい状況が生まれます。
躁状態のときは「調子が良い」と感じており、医療機関に行こうとは思いにくいためです。
その結果、診察時点では「うつ症状のみ」が前面に出ており、過去の躁状態が確認されないまま診断が進んでしまうことがあります。抗うつ薬で改善しないどころか症状が悪化したことで、初めて双極性障害の可能性が浮上するケースも少なくありません。
躁状態や軽躁状態に気づきにくいため
双極II型の軽躁状態は「いつもより元気で活発」「よく眠れなくても疲れない」といった状態であり、周囲からは「単に元気になった」ようにしか見えません。本人も「うつ状態がようやく回復した」と勘違いしてしまうことが多く、病気のサインとは気づかれにくいのが現実です。
躁状態と「うつ状態」が切り替わる周期は数か月から数年と個人差が大きく、軽躁状態を見逃したまま診断が進んでしまうことも少なくありません。
うつ病・躁うつ病(双極性障害)の診断基準と治療法の違い
2つの病気の診断基準と治療法には決定的な違いがあります。どう異なるのかを確認しましょう。
過去の躁状態の有無を確認する診断基準
正確な診断のためには、現在の症状だけでなく、過去に気分が高ぶる躁状態や軽躁状態があったかどうかを詳細に振り返る丁寧な問診が必要です。
うつ病の診断は2週間以上続くうつ症状の存在が主な要件となるのに対し、躁うつ病(双極性障害)の診断には過去または現在の躁病・軽躁病エピソードの確認が不可欠です。
「異常に元気だった時期」「眠れなくても疲れなかった時期」「浪費や衝動的な行動が増えた時期」などの経験がある場合は、主治医に正直に伝えましょう。
こうした情報が、うつ病か双極性障害かを見極める重要な手がかりになります。
治療薬の違いと誤診による悪化リスク
うつ病の治療では、一般的に脳内のセロトニンやノルアドレナリンに働きかける「抗うつ薬(SSRIなど)」が使用されます。
一方、躁うつ病(双極性障害)には「気分安定薬(炭酸リチウムなど)」や一部の抗精神病薬が一般的な治療の方法とされています。
躁うつ病(双極性障害)の方に抗うつ薬を単独で使用すると、急激に躁状態へ転じる「躁転」を引き起こしたり、症状が複雑化したりするリスクがあります。
そのため、うつ病か躁うつ病(双極性障害)かを慎重に診断することは、適切な治療を行う上で重要です。
職場と協力して回復できる環境を整えよう
どちらの疾患においても、薬物療法と並行して十分な休養と生活環境の調整が回復への近道であることが多いです。
一人で抱え込まず、心療内科で診断書を発行してもらい、休職制度・傷病手当金の利用を検討することが大切です。
特に躁うつ病(双極性障害)の場合は、規則正しい睡眠リズムを保つことや、前兆サインが出た際に早めに主治医に相談できる環境を整えることが再発防止にもつながります。
治療に専念できる環境を職場と連携して整えることが、長期的な就労継続への第一歩です。
まとめ
うつ病と躁うつ病(双極性障害)はどちらもうつ状態が現れる点では共通していますが、原因・症状の経過・治療薬がまったく異なる別の疾患です。正確な診断を受けた上で自分の状態を正しく理解し、職場への伝え方や求める配慮も含めて主治医と相談しながら、無理のない治療環境を整えていきましょう。
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めぐるファーム編集部
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