学校に行けない、友人と遊べない、将来のことを考える余裕もない。家族のために毎日ケアを続けながら、誰にも打ち明けられずにいる子どもたちがいます。こうした状況にある子どもたちは「ヤングケアラー」と呼ばれ、日本社会でも近年注目を集めています。その実態はまだ広く知られておらず、適切な支援につながっていないケースも多くあります。今回は、ヤングケアラーの定義や現状、抱えやすい悩み、利用できる支援について解説します。
ヤングケアラーとは

ヤングケアラーとは、本来大人が担うべき家族の介護や、日常生活上の世話を日常的に行っている子どもや若者のことを指します。
法律上の定義でも、家族の介護その他の日常生活上の世話を過度に行っていると認められる子ども・若者が対象とされています。
世話の内容は、介護・看護にとどまらず、障害や病気のある家族の代わりに行う家事、幼いきょうだいの世話、家計を支えるためのアルバイト、感情面のサポートなど多岐にわたります。
学業・就職・友人関係などに支障が生じているケースが多く、国や地方公共団体によるきめ細かな支援が必要とされています。特に、「自分の状況が特別だとは気づいていない」子どもも少なくなく、支援につながりにくいことが課題の一つです。
ヤングケアラーの現状

ここではヤングケアラーの現状について、調査データをもとに解説します。
どのぐらいのヤングケアラーがいる?
ヤングケアラーは、想像以上に多くの子どもたちに関わる問題です。三菱UFJリサーチ&コンサルティングが行った「ヤングケアラーの実態に関する調査研究報告書」(厚生労働省・令和2年度子ども・子育て支援推進調査研究事業)によると、「世話をしている家族がいる」と回答した中学2年生は5.7%、全日制高校2年生は4.1%にのぼります。
クラスに30人いれば、そのうち1~2人がヤングケアラーにあたる計算になります。こうした実態は社会的に十分認知されておらず、子どもたち自身も自分がヤングケアラーだと認識していないことが少なくありません。
ヤングケアラーは具体的にはどんなことをしている?
ヤングケアラーが行うケアの内容は非常に幅が広く、子どもによってさまざまです。近年の中学生や全日制高校生が置かれている状況について、特に多いとされているのは。家族の代わりに幼いきょうだいの世話をしているケースです。
次いで多いとされているのは、中学生であれば、障がいや病気のある家族に代わり、家事をしているケースであり、全日制高校生の場合は、家計を支えるためにアルバイト等をしているケース等が挙げられます。
食事の準備や掃除・洗濯といった家事だけでなく、見守り、感情面のサポートまで含まれ、大人でも負担に感じるほど重いものです。
出典:三菱UFJリサーチ&コンサルティング「ヤングケアラーの実態に関する調査研究 報告書」
ヤングケアラーが抱えやすい悩み

ここでは、ヤングケアラーが日常生活の中で抱えやすい主な悩みを4つ紹介します。
学業がままならない
家族のケアにより、学業に影響が出る場合があります。家族のケアに時間を取られ、勉強する時間が十分に取れないほか、学校への遅刻・早退・欠席が続くケースも考えられます。
こうした状況は成績の低下につながるだけでなく、学習機会の喪失として将来の進路にも影響を及ぼします。「他の子と同じように勉強したい」という気持ちがあっても、家の事情を優先せざるを得ない状況は、子どもの心理的な負担にもなります。
就職に影響する
ヤングケアラーが抱える影響は、学生時代だけでなく就職活動にもおよびます。家族のケアとの両立を意識し、進路や就職先の選択に悩む場合があります。
また、長年ケアを続けてきた経験は本来大きな価値を持ちますが、就活の場でうまくアピールできないというケースも見られます。自分の経験に自信が持てない状態では、面接でも本来の力を発揮しにくくなります。
自身の健康が損なわれる
家族のケアで夜間も対応が必要になると、昼夜が逆転して睡眠不足になることがあります。生活リズムが崩れると、身体的な不調だけでなく、精神的な疲弊にもつながります。
自分の健康よりも家族を優先してしまうことが多いため、「少し調子が悪い」と感じても医療機関を受診できないことも少なくありません。長期にわたる負担は、慢性的な疲労や精神的な不調につながる場合があります。
友人との付き合いが減る
ヤングケアラーの子どもたちにとって、友人とのコミュニケーションは後回しになりがちです。放課後や休日に家族のケアが入るため、友達と遊ぶ時間が取れません。友人関係が希薄になることで孤立感が増し、「自分だけ違う」という感覚を持つようになる子もいます。
うまく友人関係を築けないまま時間が経つと、社会的なスキルの発達にも影響が出ることがあります。孤立している子どもほど相談先が見つかりにくく、支援の手が届きにくい状況に陥りやすいです。
ヤングケアラーに対する具体的な支援
支援につながることで、家族のことだからとあきらめていた悩みも解消できるかもしれません。ここでは、具体的な支援内容と相談先を紹介します。
法改正で国や自治体に支援努力義務
ヤングケアラーへの支援は、近年制度面でも大きく前進しています。2024年6月に改正子ども・若者育成支援推進法が施行され、ヤングケアラーの支援に関する国や地方公共団体等の努力義務が新たに定められました。
具体的には以下の6項目が定められています。
①必要な相談・助言・指導の実施
②医療・療養を受けることを支援する
③生活環境を改善する
④修学・就業を助ける
⑤社会生活を営むために必要な知識技能の習得を助ける
⑥その他社会生活を円滑に営むための援助
法整備によって、相談や支援につながりやすい体制づくりが進められています。
出典:
こども家庭庁「『子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律』の一部施行について
(ヤングケアラー関係)」
e-Gov法令検索「子ども・若者育成支援推進法」
相談できる場所
ヤングケアラーやその家族が相談できる場所は複数あります。学校の先生やスクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーへの相談のほか、都道府県・市区町村の窓口、各地域のこども家庭センター、ヤングケアラー支援団体などが対応しています。
電話・SNS・オンラインコミュニティなど、さまざまなチャネルで支援につながれる点も特徴です。そのほか、こども家庭庁では、エリアごとの相談窓口検索も可能です。
「誰かに話してみたい」と思ったら、まずは身近な窓口に声をかけることが支援への第一歩となります。
まとめ
今回は、ヤングケアラーの定義から現状、抱えやすい悩み、利用できる支援まで解説しました。ヤングケアラーは特別な存在ではなく、生徒30人のクラスがあれば、その中にヤングケアラーが1~2人いても不思議ではありません。家族のことだからと一人で抱え込まず、学校や地域の窓口、支援団体に相談することで状況を改善できる可能性があります。
ヤングケアラー本人や家族はもちろん、周囲の大人が「もしかしてヤングケアラーかもしれない」と気づくことも重要です。社会全体でヤングケアラーを理解し、一人ひとりが声を上げやすい環境をつくっていきましょう。
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めぐるファーム編集部
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