障害のある子どもを持つ親にとって、「自分が先に亡くなったとき、この子はどうやって生きていくのか」という不安は切実なものです。食事や金銭管理、住まいの確保など、これまで親が担ってきたサポートが急になくなると、障害のある方は多くの困難に直面します。しかし、今から準備できることは数多くあります。
今回は、「親亡き後問題」として直面する具体的な課題と、今からできる解決策について解説します。
親亡き後に直面する問題

親が亡くなった後、障害のある方は生活・財産・住まい・手続きなど、さまざまな場面で困難に直面することがあります。特に親が主な支援者だった場合、その影響は非常に大きくなります。
ここでは、それぞれの問題を詳しく見ていきましょう。
生活の問題
食事・入浴・服薬管理など、日常生活のサポートを親だけに頼っていた場合、親亡き後に「誰がその代わりを担うか」が大きな課題になります。家事や金銭管理が十分にできない場合、基本的な生活を送るだけでも困難が生じやすくなります。
とりわけ、複数の障害がある方や医療的ケアが必要な方の場合、日々の服薬や通院管理が滞ることで、体調悪化や入院につながるリスクもあります。
また、これまで親が担っていた「買い物」「調理」「公共料金の支払い」といった日常的な作業も、突然すべて自分でこなすことを求められるため、一気に生活が立ち行かなくなるケースも少なくありません。
生活リズムの乱れや社会的孤立も起こりやすく、精神的なダメージが大きくなることもあります。
グループホームの利用や相談支援専門員によるサポートなど、外部の支援体制を事前に整えておくことが重要です。
財産の問題
親が亡くなると相続が発生しますが、判断能力に課題がある方の場合、財産を自分で管理することが難しくなります。
適切なサポートがなければ、詐欺被害や浪費のリスクにさらされる可能性もあるため、財産管理の仕組みを事前に整えておくことが不可欠です。
また、相続手続きには書類の準備や本人の意思確認が必要です。適切なサポートがなければ、不利益を被るリスクもあります。
親が生前のうちに財産管理の仕組みや相続の方法を整えておくことが、子どもの将来を守ることにつながります。
住まいの問題
親と同居していた場合、親が亡くなると住む場所を失うリスクがあります。持ち家の相続関係が複雑なケースや、住宅ローンが残っている場合は特に注意が必要です。
障害のある方が一人で生活を続けるには、居住環境の確保とともに生活支援の体制が欠かせません。
グループホームや障害者支援施設への入居は、申し込みから入居まで数か月~数年かかることもあるため、親が元気なうちから情報収集や見学を始めておくことが大切です。
親の死後事務に関する問題
親が亡くなった後には、葬儀・埋葬の手配、医療費・公共料金・負債の清算、各種行政手続きなど、いわゆる「死後事務」が発生します。判断能力や手続きの知識が十分でない場合、こうした処理が滞って生活に支障をきたすことがあります。
親が生前に「死後事務委任契約」を司法書士・行政書士・弁護士などの専門家と結んでおくと、子どもへの負担を最小限に抑えることができます。
必要な手続きをリストアップし、支援者や専門家と共有しておくことが重要です。
障害者の親亡き後問題への解決策

親亡き後の問題は、生前からの計画的な準備によって大幅にリスクを減らすことができます。法的手続き・財産管理・生活支援・住まいの確保という観点から、具体的な解決策を6つ紹介します。
遺言書で財産相続の指定をする
遺言書を作成すると、親の死後の財産分配を生前に指定できます。障害のある子どもに多くの財産を遺したり、特定の財産を指定して遺したりすることも可能です。
遺言執行者として司法書士・弁護士などの専門家を指定しておくと、手続きをスムーズに進められます。
公正証書遺言として作成すれば改ざんのリスクがほとんどなく、遺言書が無効とされるリスクも比較的低いため、早めに準備しておくことをおすすめします。
成年後見制度を利用する
成年後見制度とは、判断能力をほとんど欠いている方の財産管理や契約を、後見人がサポートする法的な制度です。詐欺被害や不当な契約のリスクを減らす効果があり、本人が結んだ不当な契約を後から取り消すこともできます。
一方で、後見人は家庭裁判所が選任するため、手続きに時間がかかる点に注意しましょう。できるだけ早い段階から検討を始め、準備を進めておくことが大切です。
家族信託を利用する
家族信託とは、親が信頼できる家族に財産の管理・処分を任せる仕組みです。親が亡くなった後も、子どもの生活資金を継続して管理してもらうことができます。成年後見制度よりも柔軟な財産管理が可能で、信託の目的や範囲を自由に設定できる点が特徴です。
親が認知症になった後や亡くなった後も、信託契約にもとづいて財産管理が続くため、長期的な安心感が得られます。子どもの日常生活費を安定して賄える仕組みを整えられる点でも、長期的な財産管理の手段としても有効です。
任意後見契約を結ぶ
任意後見制度とは、本人の判断能力があるうちに、将来後見人になってほしい人と事前に契約を結んでおく制度です。
本人の意思が反映された後見人を選べるため、法定後見よりも本人の望む形での支援が受けやすい点が大きなメリットです。
契約は公正証書で作成し、後見が実際に始まる際は、家庭裁判所に申し立てて「任意後見監督人」を選任する必要があります。
親が元気なうちに手続きを済ませておけば、判断能力が低下した後も安心して子どもを支える体制を整えられます。
日常生活自立支援事業を申請する

日常生活自立支援事業とは、判断能力が十分でない方が地域で自立した生活を送れるよう、専門員が日常的な金銭管理や書類の保管をサポートする制度です。
社会福祉協議会が窓口となっており、利用には一定の判断能力(サービス内容を理解できる程度)が必要です。
親亡き後の金銭管理に不安がある場合は、成年後見制度と組み合わせて利用することも有効です。親が生前に申請しておけば、親亡き後もスムーズに支援が継続されます。
入居施設を決めておく
障害のある方が安心して生活を続けるためには、グループホームや障害者支援施設への入居を早めに視野に入れておくことが大切です。施設によっては申し込みから入居まで数か月〜数年かかる場合もあるため、親が元気なうちから情報収集や施設見学を進めることが望ましいです。
相談支援専門員に「サービス等利用計画」の作成を依頼して、本人に合った施設を探す準備を早めに始めましょう。住まいの選択肢を早めに確保しておくことが、親亡き後の生活基盤を安定させることにつながります。
まとめ
障害者の「親亡き後問題」は、生活・財産・住まい・手続きと幅広い分野にわたります。しかし、生前からの準備によって、リスクを大幅に減らすことができます。遺言書の作成や成年後見制度・家族信託の活用、入居施設の早期確保など、今から取り組めることは数多くあります。重要なのは、問題が起きてから動くのではなく、親が元気なうちに具体的な準備を始めることです。まずは家族で話し合い、必要に応じて弁護士・司法書士・相談支援専門員などの専門家に相談しながら、一歩ずつ準備を進めていきましょう。
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めぐるファーム編集部
障害者の雇用が少しでも促進されるよう、企業担当者が抱いている悩みや課題が解決できるようなコンテンツを、社内労務チームの協力も得ながら提供しています。