障害者雇用が進まない背景には、企業が現場で直面する実務的な課題が数多くあります。法定雇用率の未達成は納付金の徴収や行政指導、さらには企業名公表といったリスクにもつながります。では、なぜ雇用が進まないのか、そしてどのような対策が有効なのか。今回は、障害者雇用が進まない主な理由と、企業が取り組むべき具体的な施策について解説します。
障害者雇用が進まない企業側の主な理由

障害者雇用が思うように進まない背景には、制度への理解不足だけでなく、現場レベルで企業が直面するさまざまな実務的課題があります。ここでは、企業側の主な理由を3つに整理して解説します。
理由1|業務の切り出しが難しい
障害者が活躍できる環境をつくるためには、採用前に「どのような業務を担ってもらうか」を具体的に設計しておく必要があります。
しかし、この業務の切り出しが十分にできていないと、能力に合わない単純作業だけを任せてしまったり、逆に「任せられる仕事がない」と感じたりするミスマッチが起きやすくなります。
定型的かつ納期の制約が少ない業務は、ある程度の企業規模がなければまとまった量の確保が難しく、切り出せる業務の幅が限られてしまいます。
さらに、一度業務を切り出して雇用を実現しても、それ以上の人数を増やすための業務量が確保できず、雇用の拡大が頭打ちになるケースも少なくありません。
既存の業務をタスク単位に細分化して再設計するには、現場の担当者が相応の時間と労力をかける必要があります。
こうした体制の整備が後回しになりがちなことが、雇用が前に進まない一因です。
理由2|受け入れ体制が不足している
採用後の定着を左右するのは、職場の受け入れ体制の充実度です。指導担当者の配置や相談窓口の設置といったサポートの仕組みが整っていなければ、障害のある従業員が困ったときに頼れる場所がなく、孤立した状態に陥りやすくなります。
また、現場の社員が障害の特性について学ぶ機会が設けられていないと、コミュニケーションのすれ違いや無用な気遣いが生まれ、本人も周囲も働きにくさを感じる場面が増えてしまいます。
加えて、職場環境のバリアフリー化が進んでいないことも、採用をためらう要因のひとつです。設備面の整備には一定のコストと計画が必要なため、特に中小企業では対応が遅れやすく、雇用のハードルをさらに高める要因となっています。
理由3|合理的配慮への理解が不十分
2024年4月1日の障害者差別解消法(正式法令名:障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律)の改正・施行により、民間企業にも過重な負担とならない範囲で合理的配慮の提供が義務化されました。
しかし、「どこまで対応しなければならないのか」「すべての要望を受け入れる必要があるのか」といった誤解から、採用に慎重になる企業が一定数存在します。
合理的配慮は、企業と従業員が話し合いながら現実的な範囲で合意形成を図るものであり、無制限に対応を求められるものではありません。
ところが、その具体的なプロセスや代替手段の存在を知らないまま「対応が難しい」と判断してしまうケースがあり、制度への正しい理解の普及が課題です。
障害者雇用では法定雇用率を達成することが重要

法定雇用率の達成は、法的義務にとどまらず、経営リスクの回避や企業価値の向上にも直結する経営課題です。制度の基本と未達成時のリスクを正しく理解しておきましょう。
障害者雇用の法定雇用率
法定雇用率とは、障害者雇用促進法(正式法令名:障害者の雇用の促進等に関する法律)に基づき、企業が雇用すべき障害者の割合を示した基準です。現在、民間企業の法定雇用率は2.5%に設定されており、従業員40人以上の企業には1人以上の障害者を雇用する義務が生じます。
さらに、2026年7月には2.7%への引き上げが予定されており、対象となる企業の範囲も広がっていきます。今後を見据えた採用計画の見直しが求められています。
未達成の場合に企業が抱えるリスク
法定雇用率を達成できていない常時雇用労働者100人超の事業主は、不足人数1人あたり月額5万円の障害者雇用納付金を納付する義務があります。
ただし、納付金を支払ったからといって雇用義務が免除されるわけではなく、採用に向けた取り組みは引き続き求められます。
また、未達成の企業はハローワークによる行政指導の対象となります。指導を受けても改善が認められない場合は企業名が公表され、「法律を守らない企業」として社会的な評価を損なうリスクがあります。
採用活動や取引関係への影響も考えると、イメージダウンによる損失は納付金の金額にとどまりません。
障害者雇用を前進させるためのポイント

障害者雇用を義務履行で終わらせず、定着まで実現するには、採用前の準備から職場環境の整備まで、一貫した取り組みが求められます。ここでは、雇用を前進させるための4つのポイントを解説します。
会社全体で障害への理解を深める
障害者雇用がうまく機能しない背景には、職場全体の理解不足が関係していることが少なくありません。
合理的配慮を「特別扱い」と受け取る社員がいると不公平感が生まれ、接し方がわからない現場では戸惑いや孤立が生じやすくなります。こうした状況は、採用した人材の定着を妨げる一因となります。
まず経営層が障害者雇用の方針と目的を明確に示し、会社としての姿勢を現場に伝えることが重要です。その上で、社内研修などを通じて、障害特性や適切なコミュニケーション方法、合理的配慮の意義について学ぶ機会を設けましょう。
理解が深まることで、多様な人材が安心して働ける環境が整い、定着率の向上にもつながります。
障害者の受け入れ体制をつくる
障害のある従業員が定着するには、特定の担当者だけで対応するのではなく、会社全体で受け入れる体制を整えることが重要です。
人事担当者・管理職・現場担当者が連携し、役割分担を明確にしたチーム支援の仕組みを構築することで、従業員が孤立せず安心して働ける環境が生まれます。
相談窓口は一本化せず複数設けることで、状況に応じて使い分けられるようになり、相談へのハードルも下がります。
社内だけでの対応が難しい場合は、ハローワークや地域障害者職業センターなどの外部専門機関と継続的に連携することも有効です。専門的な知見を取り入れながら支援体制を補うことが、定着率の底上げに役立ちます。
障害者に任せる業務を明確化する
採用後のミスマッチを防ぐには、入社前に担当業務を具体的に設計しておくことが欠かせません。
無理に新しい仕事を作ろうとするのではなく、既存の業務プロセスを洗い出し、データ入力やスキャンなどのタスク単位に細分化して整理する方法が現実的です。
また、複数の部署からタスクを集約する方法もひとつの手です。必要な業務量を確保しやすくなるだけでなく、業務の標準化を通じて組織全体の生産性向上も期待できます。
求職者と業務内容の相性が良いか確認する
定着率を高めるためには、採用の段階で求職者の特性と業務内容のミスマッチを防ぐことが重要です。
選考過程では、得意な業務や苦手な業務、障害の状態、必要な配慮事項を丁寧に確認しましょう。
同時に、企業側も担当してもらう業務内容や職場環境を具体的に伝え、双方が十分に理解し合える場を設けることが大切です。
障害者雇用を進める上で活用したい支援機関
障害者雇用を自社だけで進めようとすると、体制の整備や採用実務の面で行き詰まることがあります。公的機関から民間サービスまで、目的に応じた支援機関を上手に活用することが、雇用をスムーズに前進させる鍵となります。
ハローワーク
ハローワークは、障害者雇用において中心的な役割を担う公的支援機関です。求職者に対しては適職診断や求人紹介、面接サポートを行う専門窓口が設けられており、企業にとっても採用計画の相談や雇用管理に関するアドバイスを受けられる重要な窓口です。
また、ハローワークは他の就労支援機関との連携窓口としての機能も持ち、各種助成金の申請手続きもここを通じて行うことができます。障害者雇用に取り組む際の最初の相談先として、積極的に活用したい機関です。
地域障害者職業センター
地域障害者職業センターは、企業と障害者の双方を専門的に支援する機関です。企業にとって特に心強いのは、ジョブコーチ(職場適応援助者)による支援を利用できる点です。
ジョブコーチは実際に職場へ入り、障害のある従業員への直接的な業務指導を行うとともに、企業側に対しても環境調整や合理的配慮に関する具体的な助言を提供します。現場担当者の負担を分散させながら、採用後の安定した定着に向けたサポートが期待できます。
就労移行支援事業所
就労移行支援事業所は、障害者の就職準備から職場定着までをサポートする専門機関です。職業訓練やビジネスマナー、パソコンスキルなどの実務研修を通じて、求職者の就労スキル向上を支援しています。
企業側にとってのメリットは、職場体験実習を通じて求職者の適性や自社との相性を採用前に確認できる点です。入社後のミスマッチを事前に防げるため、定着率の向上にも効果的な選択肢といえます。
障害者雇用支援サービス
障害者雇用に特化した人材紹介やコンサルティングを提供する民間の支援サービスも、有効な選択肢のひとつです。
法的な知識にとどまらず、受け入れ体制の構築や定着施策といった実務的な専門知見を活用できるため、社内にノウハウが蓄積されていない企業でも雇用を着実に進めやすくなります。
人材要件の設定から採用代行、業務の切り出し、入社後の定着支援まで、幅広い領域で一貫したサポートを受けられる点が強みです。
農園型障害者雇用支援サービス「めぐるファーム」では、業務の切り出しが不要であり、社内リソースへの負担を最小限に抑えながら障害者雇用を進められます。神奈川県川崎市に構える屋外ハウス型の施設では定着率93.8%(※)を実現しており、障害者が長く安心して働ける環境が整っています。
施設リース料なし・違約金なしのシンプルな料金体系で、最小1名から導入できるため、初めて障害者雇用に取り組む企業でも低リスクでスタートできます。
※厚生労働省が指標としている「就職後6か月定着率」の算出方法に準拠。2026年3月12日時点、自社調べ。
まとめ
障害者雇用を前進させるには、業務の切り出しや受け入れ体制の整備、職場全体での理解促進など、採用前から定着後までを見通した一貫した取り組みが欠かせません。ハローワークや就労移行支援事業所、民間の支援サービスなど外部機関も積極的に活用しながら、自社に合った雇用環境を着実に整えていきましょう。
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著者プロフィール
めぐるファーム編集部
障害者の雇用が少しでも促進されるよう、企業担当者が抱いている悩みや課題が解決できるようなコンテンツを、社内労務チームの協力も得ながら提供しています。