特別支援学校の卒業後、わが子の進路をどう考えればいいのか悩んでいる保護者の方は多いのではないでしょうか。一般就職以外にも、本人の特性や状況に合わせたさまざまな選択肢があり、卒業後も頼れる支援機関が全国に整備されています。今回は、特別支援学校卒業後の主な進路の種類と、就職相談ができる支援機関について解説します。
特別支援学校卒業後の就職率について

令和7年3月に特別支援学校を卒業した21,001人のうち、一般企業へ就職したのは6,263人で、割合にすると約29.8%です。卒業生のおよそ3~4人に1人が一般就労へ進んでいる計算になりますが、裏を返せば残りの約7割は別の進路を選んでいることになります。
一般企業への就職以外で多いのが、就労系の障害福祉サービスを利用するケースです。就労移行支援・就労継続支援A型・就労継続支援B型といったサービスを利用する割合は約34.5%にのぼり、一般就職の割合をわずかに上回っています。
こうした現状からわかるのは、特別支援学校卒業後の進路は一般企業への就職だけではなく、障害福祉サービスを経由して段階的に就労を目指すルートも広く活用されているということです。
本人の特性や状況に合わせた多様な選択肢を理解しておくことが、卒業後の進路を考える上で重要です。
出典:厚生労働省「障害福祉サービスからの求職者」
特別支援学校卒業後の主な選択肢

特別支援学校を卒業した後の進路は、一般企業への就職だけにとどまりません。障害者雇用、就労系福祉サービス、在宅ワーク、進学など、さまざまな選択肢があります。
ここでは、それぞれの特徴やメリット、注意点について解説します。
障害者雇用
障害者雇用とは、企業が障害のある方を受け入れるために設けた雇用枠を活用して働く方法です。
障害への理解がある職場環境のもと、業務内容や量の調整、適切な休憩時間の確保、相談窓口の設置といった合理的配慮を受けながら働けるのが大きな特徴です。
給与水準は一般的に福祉的就労よりも高く、企業の福利厚生を利用できるため、社会人としての自立やキャリア形成を目指しやすい点も魅力です。
一方で、利用するには原則として障害者手帳の取得が必要になります。また、一般企業に雇用される形になるため、決められた勤務時間を守ることや業務上の責任を果たすなど、自己管理能力が求められます。
就職を目指す場合は、手帳の取得手続きを早めに進め、自分の特性に合った職場かどうかをしっかり見極めることが大切です。
就労継続支援(A型・B型)
就労継続支援は、一般企業への就職にすぐ踏み出すことが難しい方に向けた、福祉的就労のサービスです。A型とB型の2種類があり、それぞれ働き方や収入の仕組みが異なります。
就労継続支援A型
就労継続支援A型は、事業所と雇用契約を結んだ上で働く形式です。労働基準法にもとづいて最低賃金以上の給与が保証され、一定の条件を満たす場合は社会保険にも加入できるため、安定した収入を得ながら就労を続けられます。
ただし、雇用契約を結ぶ分、週に複数日の安定した出勤や、責任をもって業務に取り組む姿勢が求められます。体力・スキルにある程度自信があり、支援を受けながらも実践的な環境で働きたい方に向いています。
就労継続支援B型
就労継続支援B型は、事業所と雇用契約を結ばずに働く形式です。体調や心身の状態に合わせて週1日・短時間から通うこともできるため、働くことへの不安が大きい方でも無理なくスタートできます。
ただし、賃金ではなく「工賃」として対価を受け取る形になり、最低賃金の保証はありません。工賃は年々増加しているものの、令和6年度の月額平均が2万4,141円と、収入面は期待しにくい点には注意が必要です。
まずは社会とのつながりを持ちながら、働く練習を積みたい方に適した選択肢といえます。
出典:厚生労働省「令和6年度工賃(賃金)の実績について」
就労移行支援
就労移行支援は、一般企業への就職を目指す方が、就職に必要なスキルや知識を段階的に身につけるための訓練の場です。
最大2年間の利用期間中に、ビジネスマナーやPCスキルの習得、履歴書・職務経歴書の作成、面接対策、職場実習(インターン)など、実践的なプログラムに取り組むことができます。
また、専門スタッフがマンツーマンで就職活動をサポートし、就職後の職場定着までフォローしてくれる点も心強いポイントです。
一方で、原則として訓練期間中に工賃などの収入は発生しません。卒業後すぐに就職するよりも、しっかりと準備期間を設けてから働き始めたいという方に向いているサービスです。
在宅ワーク
在宅ワークは、インターネット環境を活用し、自宅など慣れた場所で働くスタイルです。通勤による身体的・精神的な負担がなく、職場での人間関係のストレスも抑えやすいため、外出が難しい方にとっても取り組みやすい選択肢です。
データ入力、Webライティング、デザイン、動画編集、プログラミングなど、ITに関わる仕事が多く、スキルを身につけることで活躍の幅が広がります。
ただし、「作業ごとの歩合給」や「成果報酬型」の契約形態が多く、安定して作業をこなせなければ収入が不安定になりやすいというデメリットがあります。就労支援サービスの利用と組み合わせながら慎重に検討することが大切です。
進学
特別支援学校を卒業した後、大学・短期大学・専門学校などへ進学し、さらに専門的な分野を学ぶ道もあります。専門的なスキルや資格を取得することで、将来の就職先の選択肢や可能性を大きく広げられる点が魅力です。
一方で、受験準備や学費の負担が必要になります。また、自分の体調や障害の特性に合わせて学業を続けられるか、希望する進学先に十分なサポート体制(合理的配慮)が整っているかどうかを、事前にしっかりと確認しておくことが重要です。
オープンキャンパスへの参加や学校への問い合わせを通じて、情報を収集してから判断すると良いでしょう。
特別支援学校卒業後の就職相談ができる支援機関

特別支援学校を卒業した後、就職活動をひとりで進めることに不安を感じる方は少なくありません。実は、卒業後も活用できる就職相談の窓口が全国に整備されています。ここでは、代表的な3つの支援機関について解説します。
ハローワーク
ハローワーク(公共職業安定所)は、国が運営する就職支援機関であり、全国の各都道府県に設置されています。
障害のある方の就職を専門にサポートする窓口(専門援助部門など)が設けられており、専門員や職業相談員が個人の特性・適性・希望に合わせた求人紹介や職業相談に対応しています。
具体的なサポート
障害者専用の求人情報の提供をはじめ、履歴書の書き方や企業への問い合わせ方法、面接対策など、障害の特性を踏まえた実践的なサポートを受けられます。職業訓練の案内や、障害者雇用に関する優遇制度・助成金の情報提供も行っています。
施設によっては、発達障害のある方を専門に支援する「発達障害者雇用トータルサポーター」と呼ばれる職員が配置されているケースもあり、より細やかな対応が期待できます。
地域障害者職業センター
地域障害者職業センターは、各都道府県に最低1か所設置されている、専門的な「職業リハビリテーション」を提供する機関です。地域に密着した支援を行っており、個別のニーズに合わせたキャリアカウンセリングや、現状の職業能力の評価などを行います。
具体的なサポート
自身の強みや課題を把握した上で、就職に向けた準備支援や職場体験の提供、企業とのマッチング支援を行い、就職までの道のりを継続的にサポートしてもらえます。
地域の雇用情報や支援制度を幅広く把握しており、地域社会との連携を重視したサービスを提供しているのも特徴です。
障害者就業・生活支援センター
障害者就業・生活支援センターは、名称の間に「・」が入ることから「なかぽつ」や「なかぽつセンター」とも呼ばれています。
最大の特徴は、働くこと(就業)に関する悩みだけでなく、日常生活における不安や課題(生活面)までを一体的・総合的にサポートしてくれる点です。
具体的なサポート
専門の職員が個別のニーズに応じ、職業訓練や就労継続支援などを提供します。特別支援学校とも連携しており、就職相談や法律・制度に関する助言(助成金の申請支援など)、就職後の「職場定着相談」にも対応しています。
就労と生活の両面から自立を後押ししてくれるトータルサポートの機関として、活用価値の高い窓口です。
まとめ
特別支援学校卒業後の進路は一般就職だけでなく、本人の特性や状況に合わせた多様な選択肢があります。大切なのは「どの道が正解か」ではなく、「その子らしく働き・生きていける環境」を見つけることです。卒業後も相談できる支援機関が各地に整備されているので、一人で抱え込む必要はありません。
在学中から支援機関を積極的に活用しながら、お子さんに合った進路をじっくり検討してみてはいかがでしょうか。
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めぐるファーム編集部
障害者の雇用が少しでも促進されるよう、企業担当者が抱いている悩みや課題が解決できるようなコンテンツを、社内労務チームの協力も得ながら提供しています。