従業員数が少ない中小企業でも、一定の規模を超えると障害者雇用が法律で義務付けられています。法定雇用率の引き上げや対象企業の拡大が続くなか、「自社は義務の対象になるのか」「どうやって雇用を進めればいいのか」と悩む人事・総務担当者の方は多いのではないでしょうか。
今回は、中小企業における障害者雇用の義務の内容や現状、雇用が進みにくい理由、そして具体的な進め方について解説します。
中小企業にも障害者雇用の義務がある

「中小企業は障害者雇用義務の対象外」と思われがちですが、企業規模にかかわらず一定の労働者数を超えると障害者雇用が義務となります。現行の基準と今後の変更点、未達成の場合の措置を確認しておきましょう。
現在(2026年4月)の義務範囲と法定雇用率
2026年4月時点では、常時雇用している労働者数が40人以上の企業が障害者雇用義務の対象となっています。
法定雇用率は2.5%に設定されており、例えば常用労働者が40人の企業であれば、少なくとも1人以上の障害者を雇用することが求められます。
中小企業であっても従業員数が40人を超えていれば義務の対象となるため、自社の規模を正確に把握したうえで対応を検討することが重要です。
2026年7月からの義務範囲と法定雇用率
2026年7月以降、対象企業の範囲がさらに広がります。常時雇用している労働者数が37.5人以上の企業へと対象が拡大されます。
法定雇用率も2.7%へと引き上げられます。また、対象企業の拡大により、多くの中小企業が義務の対象に含まれるようになります。
従業員数が37.5人以上40人未満の企業は、2026年7月以降に新たに義務対象となるため、今から採用計画を立てておくことが大切です。
未達成の場合の措置
法定雇用率を達成できない企業には、段階的な措置が設けられています。常用労働者100人超の企業は、未達成1人につき月額5万円の障害者雇用納付金が徴収されます。
100人以下の企業は現時点では対象外とされていますが、将来的に対象拡大が検討されています。
また、ハローワークによる指導・雇入れ計画の提出命令も行われ、改善が見られない場合は企業名が公表される可能性があります。
出典:
厚生労働省「障害者雇用のご案内~共に働くを当たり前に~」
独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構「障害者雇用納付金制度の概要」
厚生労働省「障害者雇用率制度等の在り方について:常用労働者数が100人以下の事業主への障害者雇用納付金の納付義務の適用範囲の拡大」
中小企業における障害者雇用の現状

障害者雇用は大企業を中心に進んでいますが、中小企業ではまだ十分に進んでいないのが現状です。厚生労働省が公表した令和7年の集計結果(※令和7年6月1日時点)から、企業規模別の達成状況を確認してみましょう。
| 企業規模 | 実質雇用率 ()内は前年の数値 | 法定雇用率達成企業の割合 ()内は前年の数値 |
|---|---|---|
| 40~100人未満 | 1.94%(1.96%) | 44.7%(44.3%) |
| 100~300人未満 | 2.18%(2.19%) | 48.6%(49.1%) |
| 300~500人未満 | 2.27%(2.29%) | 40.3%(41.1%) |
| 500~1,000人未満 | 2.41%(2.48%) | 44.5%(44.3%) |
| 1,000人以上 | 2.69%(2.64%) | 57.5%(54.7%) |
1,000人以上規模では前年より実雇用率が上昇している一方、それ以外のすべての企業規模では前年より低下しています。
これは雇用障害者数自体はすべての規模で増加しているものの、2024年4月の法定雇用率引き上げにより達成基準が高くなったことが要因のひとつと考えられています。
出典:厚生労働省「令和7年 障害者雇用状況の集計結果」
中小企業での障害者雇用が難しい理由
中小企業では大企業に比べてリソースが限られており、障害者雇用を進めるうえで構造的な障壁があります。ここでは、代表的な4つの理由を解説します。
適切な仕事の切り出しが困難
中小企業では、一人ひとりが複数の業務を兼務するマルチタスクが常態化しており、障害特性に合わせた限定的な業務を切り出すのが難しいという問題があります。
大企業であれば特定の工程だけを担当するポジションを設けやすいですが、少人数組織では業務の分割自体が組織運営に支障をきたすことがあります。
即戦力を求める傾向が強い中小企業では、定着支援や丁寧な教育に時間を割く余裕がないことも採用をためらう要因です。現場の実情に合わせた段階的なアプローチが重要です。
ノウハウや社内体制の不足
障害者雇用の経験がない企業では、採用プロセスから日常的な配慮まで、「何をどのように準備すればよいのかわからない」という知識・ノウハウの不足が大きなハードルになります。
勤務時間の短縮や業務内容の変更といった合理的配慮を実施するためには、担当者の配置や専門知識の習得が必要ですが、小規模組織ではその体制を整えることが難しい状況です。
外部の支援機関を活用することが有効であり、ハローワークや障害者就業・生活支援センターなどの公的機関が無料で相談に応じています。
現場社員の負担増と理解不足
少人数で業務を回している現場では、障害のある社員へのサポートや教育が既存社員への負担増につながるという懸念が生じやすく、現場の理解を得るのが難しいケースが目立ちます。
障害への知識が乏しいまま受け入れを進めると、双方にとってミスマッチが起きやすくなります。
事前に障害特性を共有する研修や、役割分担を明確化した受け入れ計画を作成することで、現場社員の不安を軽減し、スムーズな受け入れ体制を構築することができます。
採用難と離職リスク
大企業に比べて給与水準や職場環境の整備が劣る中小企業には求人を出しても応募が集まりにくく、採用の入口段階でつまずくケースが多いのが実情です。
さらに、少ない人数の雇用では、1人が離職するだけで法定雇用率の未達成に直結します。
採用後の定着支援・フォロー体制を整えることが、長期的な法定雇用率の維持につながります。採用から定着までを一貫した戦略で臨むことが不可欠です。
中小企業が障害者雇用を進めるための方法

義務への対応に向けて、中小企業が現実的に障害者雇用を前進させるための方法を4つ紹介します。公的な支援制度や外部サービスを上手に活用することがポイントです。
外部の専門機関に相談する
まず活用したいのが、無料で利用できる公的支援機関です。外部の専門機関によるサポートを受けることで、障害者雇用をスムーズに進めることが可能です。
ハローワーク
求人の出し方から助成金の案内まで幅広く対応しており、障害者雇用に関する手続きや相談を一括して行えます。初めて障害者雇用に取り組む企業にとって最初に相談すべき窓口です。
地域障害者職業センター
専門家が職場を訪問し、具体的な作業手順の改善や社員向けの研修などの助言を行います。ジョブコーチ支援など、現場に密着したサポートが受けられます。
障害者就業・生活支援センター
本人の生活面も含めた長期的な定着支援に強みがあります。就業面と生活面を一体的にサポートしてくれるため、採用後の定着に課題がある企業に特に有効です。
「業務の切り出し」を行う
「障害者に任せる仕事がない」という課題には、既存業務を細分化・再構成する「業務の切り出し」が有効です。現在の社員が「ついでに」こなしているデータ入力・書類整理・備品管理などをリストアップし、業務を可視化するところから始めましょう。
次に、判断が必要な工程を排除し、手順を固定化・マニュアル化します。こうした工夫によって、知的障害や精神障害のある方でも安定して取り組める業務環境を整えることが可能です。
助成金を活用する
障害者雇用に取り組む中小企業を対象に、国からの助成金制度が複数用意されています。初期コストを抑えながら雇用に踏み出すために積極的に活用しましょう。
特定求職者雇用開発助成金
継続して雇用する場合に、採用時の賃金の一部が助成される制度です。雇用コストの削減に直結します。
トライアル雇用助成金
適性を確認するために3か月間の試行雇用を行う際に支給される制度です。ミスマッチリスクを抑えながら採用できます。
障害者作業施設設置等助成金
バリアフリー化や専用作業機器の導入費用を補助する制度です。職場環境の整備を後押しする助成金として活用できます。
農園型やサテライトオフィス型のサービスを検討する
「自社だけで障害者雇用を進めるのが難しい」という企業の初めの一歩として検討できるのが、外部の障害者雇用支援サービスの活用です。代表的なのが「農園型」と「サテライトオフィス型」で、雇用契約は自社で結びながら、働く場所や日常サポートを外部が担う仕組みになっています。
どちらも法定雇用率の達成に役立つため、自社に受け入れ体制が整っていない段階でも活用しやすい選択肢です。
特に農園型は定型的な農作業が多く、障害特性に応じた業務の切り出しがしやすいことから、精神障害のある方の就労場所としても適しています。農園という開放的な環境が、ストレスを感じやすい方にとって働きやすい場として機能します。
まとめ
中小企業であっても常時雇用する労働者数が40人以上(2026年7月以降は37.5人以上)であれば、障害者雇用は法的義務です。現状では中小企業の達成率は半数に届いておらず、適切な業務の切り出しや受け入れ体制の構築が課題となっています。
公的機関への相談、業務の切り出し、助成金の活用、そして外部支援サービスの導入といった方法を組み合わせることで、無理なく障害者雇用を進められます。
障害者雇用の法定雇用率の達成にお困りの場合は、農園型障害者雇用支援サービス「めぐるファーム」の活用もひとつの選択肢です。
「めぐるファーム」では、農園を活用した就労機会の提供から、定着支援までを一括でサポートし、企業の負担を抑えながら安定した障害者雇用の実現を支援します。
詳しくは以下よりご確認ください。
※本コラムに記載の内容は、2026年4月7日時点の情報に基づきます。
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著者プロフィール
めぐるファーム編集部
障害者の雇用が少しでも促進されるよう、企業担当者が抱いている悩みや課題が解決できるようなコンテンツを、社内労務チームの協力も得ながら提供しています。