「従業員の参画」を重んじる会社運営が愛社精神を育て、活躍を引き出した

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『「従業員の参画」を重んじる会社運営が 愛社精神を育て、活躍を引き出した ~障がい者雇用の「成功事例」として注目される先達企業の軌跡(後編)~』と書かれています。

障がい者雇用に対する社会的な要請が高まるなか、この課題に真剣に取り組む企業にとって、「成功事例」として注目される東京都チャレンジドプラスTOPPAN。3年前の2023年に創立30周年を迎えた同社は現在、従業員数 196名を抱え、そのうちの約74%を障がいのある社員が占めているという。前編では、同社が高い水準の障がい者雇用を実現する現在の姿へといかにして成長してきたのか、その歩みを振り返った。この後編では、その姿を実現するために、行ってきた施策や心がけている姿勢などについて詳しく聞いた。
※記載されている所属・肩書きは、2026年3月取材時のものです。

interviewee

東京都チャレンジドプラスTOPPAN株式会社
常務取締役 経営管理部長 兼 ユニバーサル研究所長
兼 人財開発・オフィス推進センター担当
棟方 輝彦(むなかた てるひこ)氏

クリエーション推進部 部長
宮永 裕志(みやなが ひろし)氏

販売推進チーム 兼 経営管理部広報チームリーダー
齊藤 浩次(さいとう こうじ)氏

ユニバーサル研究所ユニバーサル研究チーム チームリーダー
八尋 洋光(やひろ ひろみつ)氏

事業再編を機に社名を変更
新社名も社員証も従業員のアイデアから

――創立30周年を迎え、この間には大きな事業転換も果たしています。そうした環境変化の中でも、従業員の定着率は高かったと聞きました。その理由はなんだとお考えですか。

棟方 従業員たちの愛社精神が強かったのだと思いますが、その愛社精神がなにから生まれたのかを振り返れば、おそらく会社の方向性を経営者たちだけが決めるのではなく、従業員も含めた全員で決めるという姿勢が、従業員たちに受け入れられたのかもしれません。2021年4月に社名を現在の「東京都チャレンジドプラスTOPPAN株式会社」に変更しましたが、この社名も実は、従業員からの公募で決めたものなんです。この時、同時に変えた社員証のストラップも、障がいのある従業員が考案したものですし、それまで着用していた制服も廃止し、自由な服装に変えた際にも社員の意見を取り入れました。そこには、「もうプリプレスの工場ではない」「もっと自由にいろいろなことを表現できる会社になるんだ」というメッセージを表現したいとの狙いもありました。

各事業をイメージしたジオラマの写真

――菜園事業など、従業員の意見から生まれた新事業もありましたね。

棟方 そうですね。それに、現在当社の代表的な事業の1つと位置付けているユニバーサル研究所の発足も、ここにいる八尋の「どうしてもやりたい」という強い希望があって立ち上がった事業なんです。「この事業で稼いで、小豆沢の本社を建て替えてみせます。だからやらせてください」と。これは本当の話なんですよ(笑)。

八尋 一従業員の意見を取り入れて、事業を立ち上げるなんていうことは、そうあることではありませんから、本当にうれしく、ありがたかったですね。能動的に動けることは、仕事のやりがいや、生きがいそのものにもつながります。私にとっては、本当にこの会社にいてよかったと思えた瞬間でしたね。

従業員の「定着」を支える先輩たちの背中
ピアサポート体制や1on1も機能

――従業員の「定着」という意味では、そうした八尋さんや創立式典でテープカットをした緑川さんなど、長く活躍する先輩の存在も大きいかもしれませんね。

齊藤 先輩の背中を見る後輩たちは、たとえ「辞めようか」と悩んだときにも、もう一度自分の気持ちを立て直す際に勇気をもらうのかもしれませんね。

宮永 先輩の背中を見る機会は、当社では多くの現場でありますね。たとえば、紙すき事業は比較的若い従業員が多い部門なのですが、リーダーが各担当に作業工程や業務のコツを教えてあげていて、その各担当は覚えたことを実習生に教えてあげるという、いわゆる「ピアサポート体制」が自然とできていますね。紙すき事業には、精神障がいや知的障がいの従業員が多く、できないことも多いのですが、学ぶときはみな真剣に学びますし、教えるときは集中して教えている姿をよくみます。菜園事業も同様で、9人がチームになって教えあいながら一緒に取り組んでいる姿を頻繁に見かけます。人に教えるのがとてもうまい従業員もおり、それぞれの特性を活かした「教育の場」になっているように思います。

宮永氏がお話している写真

――障がい者雇用に向き合う企業においては、評価の難しさや、合理的配慮と育成とのバランスには多くの企業が悩んでいます。

宮永 当社も同じように悩んでいますよ。当社の評価制度では、「チャレンジ宣言」というシートを各自つくるんですが、そこには半年ごとの業務上の目標を書いてもらいます。管理者はそのシートをもとに、各メンバーと面談をして、期首にはお互いにシートを確認しながら目標に対して納得感をもってもらうことを大切にし、期末にはその達成度をお互いに確認しあいます。障がいの度合によって、うまく文章を書けない場合には、業務を離れたプライベートの目標を書いてもらうケースもあります。しかし、基本的には、このシートにある業務上の目標と1年間の勤務態度で評価します。そこは一般企業と変わりはありません。
 ただし、半期ごとに行う従業員との「1on1」は決して欠かさないように心がけています。少ないときでも10分程度は必ず各メンバーの話を傾聴し、それぞれの特性やその変化については、つぶさに確認するようにしています。それが求められる「合理的配慮」を見極めるうえでの重要な情報になると考えているからです。

――「合理的配慮」には、会社としてどのように向き合っていますか。

齊藤 さまざまな障がい者を雇用していくうえで、「合理的配慮」をめぐる対応も変化を迫られています。身体障がい者が被雇用者の大半だったかつては、合理的配慮といえば、バリアフリーなどの物理的なインフラの整備を意味しました。しかし、現在増えている精神障がい者、知的障がい者にとっては、精神的な配慮や、指導方法の工夫がそれにあたります。そこで現在は精神・知的障がい者5人に対し、1人の割合で指導員・コーチを配置する方針をとっており、従業員の拡大とともに指導者・コーチの採用にも力を入れています。彼らには、配慮に偏りすぎることなく、その人が将来、自立しても困らないような指導を心がけてもらっています。

齊藤氏がお話している写真

随所で得られた親会社の理解
まずは活躍を知ってもらうことが先決

――30有余年の会社の歴史においては、苦境もあったと思います。どのように乗り越えてきたのですか。

棟方 正直、苦境だと思ったことはないんですけど(笑)。ありがたかったのは、我々のさまざまなチャレンジに対して、そのたびに「社会貢献の一環」として親会社が理解を示し、ゴーサインを出してくれたことですね。

齊藤 障がい者雇用をめぐる施策については、本社の理解、当社の場合は親会社の理解を得られるかどうかは、その成否にとても大きな影響を及ぼすと思いますね。そのためには、まずは存在や活動を知ってもらうことが先決です。 
 私がTOPPANの本社からこの会社の営業担当に配属されたのは、2019年だったのですが、実はその当時、グループ内にこのようなすばらしい会社があること自体、知らなかったんです。赴任後は、この会社にとって、営業担当としての責務とはなんなのか、日々悩みながら活動している中で思い至り、また、2021年社名変更の機もあり、取引先でもあるTOPPANの社員たちに、商品を通じて当社の存在をアピールすることでした。営業活動とは、すなわち広報活動でもあることに気づいたんです。それは現在、グループ外に対しても同様で、従業員たちもスポットライトを浴びる中で、モチベーションが上がっていくでしょうから、積極的に情報発信に努めています。

オフィスの写真

――そうした情報発信の一環でしょうか。会社の玄関には、障がい者技能競技大会(アビリンピック)での従業員の活躍がポスターで大々的に紹介されていましたね。

棟方 ええ。ユニバーサル研究所の吉田純一さんが、「ホームページ種目」において東京アビリンピック、全国アビリンピックで相次いで金賞を獲得しました。このホームページ種目ではアクセシビリティやダイバーシティ&インクルージョンに配慮した作品が求められ、まさにユニバーサル研究所で培ったスキルが評価されたと思います。
 先日は、さらにうれしい報告がありまして、2027年5月にフィンランドのヘルシンキで開催される第11回国際アビリンピックに、吉田さんがホームページ種目の日本代表として出場することが決定したというのです。知らせを聞いて、会社中が沸き立ちましたし、従業員一人ひとりの「個性」を大切にした当社のチャレンジの歴史が評価されたようで、私自身にも感慨深いものがありました。同時に思ったのは、八尋さんが宣言してくれたように、いつの日かユニバーサル研究所の業績で、本社が建て替わるのも夢ではないかもしれないと(笑)。いずれそんな日が来ることを心待ちにしています。

棟方氏、宮永氏、齊藤氏、八尋氏の集合写真

障がい者雇用の「成功事例」として注目される先達企業の軌跡(前編)

一人ひとりの障がいを「個性」と捉えそれを活かす発想が新しい事業を生んだ

法定雇用率を2026年7月に2.7%へと引き上げる方針を厚生労働省が決めるなど 、障がい者雇用に対する社会的な要請が年々高まっている。こうしたなか、障がい者雇用に真剣に取り組む企業にとって、「成功事例」として注目される企業がある。1993年6月に、凸版印刷株式会社(現:TOPPANホールディングス株式会社、以下 TOPPANで表記)、東京都、板橋区の共同出資により設立された重度障がい者雇用モデル企業の東京都チャレンジドプラスTOPPANである。同社は、従業員数 196名を抱え、そのうちの約74%を障がいのある社員が占めているという。この高い水準の障がい者雇用はどのように実現されていったのか。前編では、現在の姿に至る同社のこれまでの歩みを、4人のキーパーソンに話を聞いた。※記載されている所属・肩書きは、2026年3月取材時のものです。interviewee東京都チャレンジドプラスTOPPAN株式会社常務取締役 経営管理部長 兼 ユニバーサル研究所長兼 人財開発・オフィス推進センター担当棟方 輝彦(むなかた てるひこ)氏クリエーション推進部 部長宮永 裕志(みやなが ひろし)氏販売推進チーム 兼 経営管理部広報チームリーダー齊藤 浩次(さいとう こうじ)氏ユニバーサル研究所ユニバーサル研究チーム チームリーダー八尋 洋光(やひろ ひろみつ)氏「社名を公表しますよ」とハローワークから指導を受けた過去――東京都チャレンジドプラスTOPPANが、障がい者雇用に向き合った経緯を教えてください。棟方 実は、当社が設立される数年前まで、親会社の凸版印刷㈱は、恥ずかしながら障がい者雇用に全く力を入れていない会社だったと聞いています。管轄のハローワークから、「この状態が続けば、社名を公表しますよ」と大変なお叱りと指導を受けたようです。それをきっかけに、社長直轄のプロジェクトチームを結成し、障がい者雇用に本気で向き合い始めました。 どのような業務で雇用すべきか、当時さまざまな検討を重ねた結果、選定したのが出版系の※プリプレス業務でした。そこで、同業務を手がけていた板橋工場の近隣にあるこの小豆沢の地に、東京都と板橋区からも出資を受けた第3セクターの特例子会社「東京都プリプレス・トッパン株式会社」として1993年に発足しました。――そこから事業内容も、さらには社名も大きく変わってい…

https://me-gu-ru.net/media/column/842/

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