「農園型」だからできること一人でも多くの障害者に活躍の場を届けたい

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叶内氏の写真の横に「農園型」だからできること 一人でも多くの障害者に活躍の場を届けたい ~障害者雇用支援に豊富な経験を持つ農園長からのメッセージ~ )と書かれています

障害者雇用支援事業を展開するNEXT ONEが、2024年4月から川崎市内に運営するスマート農園『めぐるファーム』。ここで農園長を務めるのが、精神保健福祉士の国家資格を持ち、ソーシャルワーカーとして障害者雇用の現場で長年の勤務経験を持つ叶内氏だ。同氏が責任者を務める同ファームでは、一人ひとりの障害者が日々、どのように活躍しているのか。『めぐるファーム』の施設概要や運営方針、今後の運営ビジョンなども交えて、同氏に詳しく聞いた。

interviewee

株式会社NEXT ONE
めぐるファーム新百合ヶ丘農園 農園長
叶内 公基 (かのうち たかのり)

企業が悩みを抱える障害者雇用の「4大課題」

――『めぐるファーム』とは、どのような施設ですか。

 自社だけでは障害者雇用の課題解決に困難を感じている事業者・団体に代わり、当社が窓口となって「屋外ハウスで作物を栽培する場所と仕事」を障害者に提供するための農園施設です。障害者の法定雇用率が年を追うごとに上昇していることもあり、事業者・団体がこれを達成するのはますます難しくなっていますが、その主たる要因には、障害者雇用を取り巻く「4大課題」があるとされています。1つは「採用」で、自社の環境に合った良い人材を採用できないという課題です。そして、採用した障害者の受け入れ環境をつくるための「社内調整」の課題。さらに、障害者に適切な業務を準備するのが難しいという「業務切り出し」の課題。これらをすべて乗り越えたとしても、最後に「定着率」の課題があります。指標によっては、精神障害の方の離職率は、一般的な労働者の約3倍にのぼるといわれています。※1
 これらの課題をすべて解決できるサービスとして、当社では『めぐるファーム』を運営しています。企業の皆様には「業務指示」や「定期的な面談」に集中していただき、環境整備やメンタルケアは我々プロが担い、一緒になって障害者雇用にとりくんでいるのが特徴です。

――『めぐるファーム』では、4つの課題をどのように解決できるのでしょう

 それを説明する前に、まず施設の概要からご紹介します。
障害者の皆さんが通いやすい川崎市という都市部に設置された『めぐるファーム』は、奥行42m、幅24m、高さ4mの大型屋外型ビニールハウスです。作物の栽培条件を優先した通常のビニールハウスとは異なり、中で働く人の「働きやすさ」に配慮された環境が最大の特徴です。室内には大型のヒートポンプエアコンが4台、空気を循環させるサーキュレーターが6台設置され、夏は暑さを緩和し、冬は温暖にと室内環境を良好に保っています。

農園内の写真

合理的配慮が行き届いた環境で高い定着率を実現

――そこで、どれくらいの皆さんが働かれているのですか。

 『めぐるファーム』は、クルーと呼ばれる障害者の皆さんが88名、その仕事を手厚くサポートするディレクター20~30名が働ける設計になっています。クルーは、いわゆる3障害といわれる身体、知的、精神のいずれかの障害を抱える方々ですが、現在、社会的に急増している精神障害の方々が『めぐるファーム』でも最も多く、全体の8~9割を占めます。これらの方々を雇用する企業の皆さんは、「社内調整」の負担を感じることなく、合理的配慮が行き届いた業務環境を障害者の皆さんに提供することができます。

――この農園で障害者の皆さんは、どのような作業に従事するのでしょう。

 作物の栽培棚はラック4台を1レーンとし、これをクルー1人が担当します。農園は朝8時30分にオープンし、17時にクローズしますが、その間を9~16時、10~17時というおもに2つの勤務時間体系で、水やりや播種、生育状況や温度・湿度・光量チェックといった農作業に従事していただきます。育てている作物は、「ワインドレス」「エディブルフラワー(食用花)」「ベビーリーフ」という3種類10数品目です。この3種類は、農業コンサルタントと相談し、『めぐるファーム』の生育環境との親和性や、一定の作業量が必要になる作物特性などを考慮し、厳選したものです。この中から実際にどの作物を育てるかは、各企業の皆さんが自由に決めることができます。この農作業で、障害者の皆さんにとっては作物の成長を間近で感じながら、やりがいや喜びを得られるものであり、企業としても「業務の切り出し」の課題を抱えることはなくなります。落ち着いて作業に集中できる環境なので、結果として「定着率」の高さにもつながっています。まもなく運営開始から丸2年を迎える『めぐるファーム』の半年定着率は93.8%になります。(厚生労働省基準に準拠※2

農園作業について語る(株)NEXT ONE叶内 公基氏の写真

障害者と企業の「橋渡し」こそ、専門職の存在意義

――「4大課題」のうちの「採用」については、どのように解決できるのですか。

 障害者の方々から、『めぐるファーム』で働きたいという問い合わせを受けた際には、企業に直接紹介する前に、まず人材紹介業の認可も受けている当社が対応します。ソーシャルワーカーとして障害者の就労支援に従事してきた私をはじめ農園の専門スタッフが面接を行い、障害者それぞれの方々の特性を吟味します。さらに、農園での体験実習に参加してもらったうえで、各社に適切と思われる人物を紹介しますので、企業の皆さんは「採用」の課題を抱える心配はありません。
 とはいえ、『めぐるファーム』では、多くの障害者の皆さんに活躍の場を提供することも大切に考えていますので、入職の門戸は大きく広げているのも事実です。うまく言葉にできない場面があったり、一般の採用面接では評価されにくい場合でも、その方々の本質を丁寧に見極め、活躍の道を探り出して、企業側の承諾を得たうえで入職いただくケースも実際にあります。皆さん、入職後は問題なく活躍されています。こうした人材の発掘や、障害者と企業の「橋渡し」こそ、専門職たる我々の存在意義だと思っています。

――叶内さんは、そうした障害者の就労支援には豊富な経験をお持ちだと聞きます。

 私が障害者雇用支援の世界に入ったのは、2012年2月で、法定雇用率が2.0%に上がろうとするタイミングでした。最初に従事したのは、国が提供する「就労移行支援」というサービスでした。職業訓練校で障害者にパソコンの使い方やビジネスマナーといった職業スキルを教え、2年以内に就職へとつなげる仕事でしたが、時には、ものの考え方や捉え方、人とのコミュニケーションのとり方なども寄り添って支援していくこともありました。
 この当時の経験は現在にも活きています。『めぐるファーム』では、障害者の方々が主体的に取り組み、物事を決めていくことを大切にしており、我々としても障害者の方々が自己決定していけるような関わり方を心がけています。
 その志向は、業務設計にも反映されており、最初は簡単な農作業の基本から始めながらも、成長に合わせてより複雑な農作業へとステップアップし、農園管理のスキルを身につけられるスキルアップ支援のプログラムも用意されています。

――『めぐるファーム』で成長される方々も多いのですか。

 多いですね。クルーのリーダー役や将来はディレクターに推したい人材もいます。ゆくゆくは農園を出て企業の本社へステップアップする目標の方もいらっしゃいますね。先日は、ある若いクルーからうれしい報告もありました。携帯電話の写真を見せてきて説明するには、初めての給料日に両親へ食事をごちそうしたらしいのです。お酒を召し上がる両親にぴったりの献立が並ぶ、楽しそうな食事風景でした。以前の職場だった障害者作業所では、最低賃金に満たない給料だったため、とても食事の招待などできなかったと言っていました。ご両親もとても喜んでいましたね。
『めぐるファーム』では、こうした障害者のご家族との関係も大切にしており、入職前の職場見学などには、親御さんや保護者の方々も一緒に参加してもらえるようお願しています。また、農園で働く中で、障害者は徐々に企業への帰属意識が薄まりがちになるので、企業の皆さんには定期的な面談を通じた障害者とのコミュニケーション確保をお願いしています。その心のつながりが、定着率の向上にもつながっていきますから。

農園内で笑顔で話す叶内氏と農園マネージャーの写真

『めぐるファーム』で180度変わった「農園型」に対する先入観

――最後に、今後の農園の運営ビジョンを聞かせてください。

 この川崎市を起点に、『めぐるファーム』を全国に広げていき、障害者の方々の働ける場を増やしていきたいですね。現在、第1ハウスが定員いっぱいの状況で、今年6月には隣接地に同規模の第2ハウスが完成する予定です。これまで働けなかった障害者が活躍の場を見つけ、自分の人生を明るく輝かしいものにしていくことは、本当に素晴らしいことだと思います。私自身、この世界で長く働きながらも、農園型障害者雇用支援に対しては知識が足りなかったので、かつては企業の本業とかけ離れた農園型で雇用するビジネスモデルに懐疑的なものを感じる先入観も実はありました。しかし、『めぐるファーム』で障害者の皆さんが活き活きと農作業に従事する姿や、それに喜ばれる家族の笑顔を目の当たりにして、その先入観が180度変わりました。この事業だからこそ活躍できる障害者がたくさんいる現実があるんです。
 職場を求めている障害者の皆さん、そして障害者雇用の促進に課題や悩みを感じている企業の皆さんは、ぜひお気軽にご相談ください。

農園内で苗を植えてる写真

※1:厚生労働省「令和5年雇用動向調査」(一般労働者の離職率約15%)および、独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)の調査による精神障害者の1年離職率(約50.7%)より算出。

※2:厚生労働省が指標としている「就職後6ヶ月定着率」の算出方法に準拠。当農園をご利用の企業様が雇用する障害者クルーのうち、算出時点で入社から6ヶ月が経過しているスタッフを対象に計算。(2026年3月12日時点)

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