障害者雇用で就労中の方、あるいは就労を検討している方の中には、「障害があってもキャリアアップできるのだろうか」「将来のビジョンが描けない」と不安を感じている方も多いのではないでしょうか。障害があっても、適切な方法と支援を活用することで、着実にキャリアを形成していくことは可能です。今回は、障害者雇用でのキャリア形成に役立つスキル、キャリアアップに向けた取り組み方、利用できるサービスについて解説します。
障害者雇用でもキャリア形成はできる?

パーソルダイバース株式会社が行った調査(調査期間:2025年5月13日~5月20日)によると、働く障害者のうち約8割が正社員での雇用を求めているにもかかわらず、実際の正社員の割合は45.6%にとどまっています。
職位の面では、障害者雇用枠の一般社員の割合は80%を占め、課長以上はわずか3.1%です。こうした現状は、障害者雇用においてキャリアアップの道が十分に開かれていないことを示しています。
一方で、仕事に対する志向性については、「成長・活躍志向」(38.1%)が、「安定・定着志向」(37.8%)をわずかに上回ったことも明らかになっています。はたらく障害者の約4割がキャリアアップを望んでおり、その意欲は確かに存在しています。
出典:
パーソルダイバース株式会社「はたらく障害者の就業実態・意識調査2025 vol.1 就業実態」
パーソルダイバース株式会社「はたらく障害者の就業実態・意識調査2025 vol.2 就業意識と合理的配慮」
障害者雇用でのキャリア形成が難しいと感じる背景には、企業側の理解不足や制度的な課題が挙げられます。しかし、適切な方向性と継続的な努力によって、キャリアを積み上げていくことは十分に可能です。
障害者のキャリア形成に役立つスキルとは

障害者がキャリアアップを目指す際に武器になるスキルは、職種によって異なります。以下では、代表的な職種ごとに有効なスキルと資格を紹介します。
事務職
事務職でキャリアを積む場合、経理事務・営業事務・金融事務・英文事務・貿易事務など、自身が目指したい専門分野を定めた上で、実務経験を積みながら関連資格を取得していくことがおすすめです。
具体的には、経理事務なら日商簿記、金融事務なら証券外務員資格、英文事務なら英語検定やTOEIC、貿易事務なら貿易実務検定などが評価されます。専門性を証明する資格の取得が、給与や役職の交渉に直結します。
事務職は障害者雇用枠での求人が多く、障害特性への配慮を受けやすい職場環境が整っている企業も多い分野です。スキルを着実に積み上げることで、担当業務の幅を広げていくことができます。
営業職
営業管理職に必要なのはマネジメント能力です。統括するチームの業績目標を達成させるマーケティング能力・数字管理能力に加え、チームメンバーを支えるコミュニケーション能力や、新規プロジェクトを開発する戦略策定能力が求められます。
早い段階で上司にキャリアアップについて相談し、必要な実務経験を積む機会を得られるようにしておくことが大切です。英語や中国語などの語学資格の取得も、キャリアの幅を広げる有効な選択肢です。
営業職は成果が数字として可視化されやすいため、努力と実績が正当に評価される環境を選ぶことが、モチベーションの維持につながります。
エンジニア職
PCスキルやプログラミング言語などの知識・スキル、チーム開発のためのコミュニケーション能力が基盤となります。ITスペシャリスト・ITコンサルタント・AIエンジニア・データサイエンティストなど、それぞれに必要とされる専門知識は大きく異なります。
目指すキャリアに合わせた学習計画を立て、必要な技術資格の取得を進めましょう。エンジニア職はリモートワークとの親和性が高い場合が多く、障害特性に合わせた働き方が実現しやすい職種でもあります。
オンライン学習プラットフォームを活用すれば、在宅でも専門スキルを習得できます。学習を継続しながら実績を積み上げることで、フリーランスや上位職種へのキャリアアップも視野に入れられます。
製造・技能職
専門に関する資格取得はもちろん、技術責任者などの管理職を目指す際にはチームや部下をまとめるコミュニケーション能力も必須です。
CAD利用技術者試験や電気工事士、機械保全技能士、危険物取扱者などの国家資格を取得できると仕事の幅が広がります。
製造・技能職では現場経験の積み重ねが評価されるため、日々の業務に誠実に取り組みながら、段階的に責任ある業務を担当していく姿勢が重要です。
障害者雇用でキャリアアップを目指すには?

キャリアアップを目指す上で、意識して取り組みたいことを解説します。
キャリアの方向性を明確化する
まず「自己理解」が大切です。自分が希望する働き方や得意・不得意、働く目的を整理し、体調や配慮事項とのバランスを取りながら、無理なく続けられるキャリアの方向性を定めることが基盤となります。
あわせて、自身の特性に合った職種や業務内容、働く環境の条件を具体的に整理しておくことも重要です。短期的な条件だけでなく、将来的にどのような働き方を実現したいかといった中長期的な視点を持つことで、より納得感のあるキャリア選択につながります。
資格取得に挑戦する
前章で紹介したように、職種ごとに有利な資格があります。障害者向けのキャリア形成支援が、自治体やハローワーク、就労移行支援事業所、NPOなどから提供されています。
職業訓練やオンライン研修など、スキルアップの機会を積極的に活用することが大切です。小さな一歩の積み重ねが、確かなキャリアの土台となっていきます。
キャリア形成のために利用できるサービス
障害者のキャリア形成を支援する機関やサービスを紹介します。適切な支援を活用しながら、着実にキャリアを積み上げていきましょう。
ハロートレーニング
国や都道府県、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構、民間教育訓練機関などが連携して実施する職業訓練制度です。埼玉・岡山の国立職業リハビリテーションセンターや、各地の国立・公立の障害者職業能力開発校で受講できます。
訓練内容はPC操作から製造・サービス業まで多岐にわたります。受講についてはハローワークへの相談から始められます。無料または低コストで専門スキルを習得できる点が魅力です。
就労移行支援
障害者総合支援法(正式法令名:障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律)に基づく就労支援サービスのひとつで、一般企業への就職を目指す障害のある方(65歳未満)を対象としています。就職に必要な知識やスキルを身に付けるための実践的なサポートを受けられます。
キャリアカウンセリング、ビジネスマナー研修、職場実習など、就労に向けた総合的な支援が提供されます。就職後の職場定着支援まで一貫して行ってくれる事業所も多く、安心して活用できます。
障害者雇用に特化した転職エージェント
障害者の仕事探しから選考・入社までサポートを受けられる民間企業のサービスです。専門的なノウハウを持つキャリアアドバイザーが就職活動全般をバックアップしてくれます。
希望条件の整理から応募書類の作成・面接対策まで、きめ細かなサポートが受けられます。キャリアアップを見据えた求人情報の提供も充実しており、長期的なキャリア形成をともに考えてくれるパートナーとして活用できます。
まとめ
障害者雇用においてもキャリア形成は可能です。自己理解を深め、目指す職種に合ったスキルや資格を身に付け、ハロートレーニングや就労移行支援などのサポートを積極的に活用しながら、着実にステップアップしていきましょう。
Profile
著者プロフィール
めぐるファーム編集部
障害者の雇用が少しでも促進されるよう、企業担当者が抱いている悩みや課題が解決できるようなコンテンツを、社内労務チームの協力も得ながら提供しています。