採用後に内定者が発達障害を持っていると気づいた場合の対処法|働きやすい職場を作るためのポイント

この記事をシェアする

  • x
  • facebook
悩んでいる画像

採用後に内定者や新入社員の発達障害が判明した場合、企業はどう対応すべきか悩む人事担当者も多いのではないでしょうか。今回は、法的な立場の整理から特性別のトラブル事例、具体的な配慮策や組織づくりまで解説します。

採用後に発達障害が判明したときの企業の法的立場

面接の画像

採用後に従業員の発達障害が判明した場合、企業はどのような対応を取るべきか、また法律上どのような立場に置かれるのかは、多くの人事担当者が直面する重要な課題です。ここでは、申告義務の有無から解雇の可否、合理的配慮の義務づけまで、企業が知っておくべき法的な考え方を整理します。

入社時の申告義務と「虚偽報告」の有無

入社時に発達障害であることを会社に伝えなかったとしても、それは原則として「虚偽報告」にはあたりません。

法律上、労働者には入社時に自身の病気や障害を申告しなければならないという義務は定められていません。採用選考において企業が健康状態を確認する場合であっても、本人への十分な説明と同意を得た上で手続きを進めることが求められます。

そのため、申告がなかったという事実だけをもって虚偽報告と判断し、従業員に不利益な扱いをすることは法的に困難です。

発達障害を理由とした解雇は認められるか

「発達障害であること」や「入社時に申告がなかったこと」のみを理由とした解雇は、法律上認められません。こうした対応は病気や障害を理由にした差別的取り扱いとみなされます。

労働契約法第16条は、客観的に合理的な理由を欠く解雇や社会通念上相当とは言えない解雇を無効と定めています。日本における正規雇用の解雇はもともと法的なハードルが非常に高く、企業が法的措置を取られた場合に敗訴するリスクは決して小さくありません。

解雇や重い処分が認められうるのは、障害の有無そのものではなく、業務遂行に重大な支障が生じており、客観的に見て合理的な理由があると判断できる場合に限られます。

合理的配慮の提供が企業に義務づけられている理由

企業には、障害者雇用促進法(正式法令名:障害者の雇用の促進等に関する法律)に基づき、障害のある労働者に対して「合理的配慮」を提供する法的義務があります。

これは、障害のある従業員を特別扱いするものではなく、障害の特性によって生じる職場上の障壁を取り除き、その人が本来持つ能力を適切に発揮できる環境を整えることを目的としています。

また、企業には従業員が安全かつ健康に働ける環境を確保する「安全配慮義務」もあります。過度な負担とならない範囲での業務内容の調整や配置転換など、具体的な対応策を検討することが求められます。

発達障害の特性と職場で起きやすいトラブル

頭を抱えている画像

発達障害といっても、その種類によって特性は大きく異なります。職場でのトラブルを未然に防ぐためには、それぞれの特性がどのような場面で課題として現れやすいかを正しく理解することが重要です。ここでは、ASDとADHDに分けて解説します。

ASD(自閉症スペクトラム障害)の場合

ASDの主な特性として、一般的にコミュニケーションの取りづらさ、こだわりの強さ、感覚の過敏さや鈍感さなどがあげられます。

例えば、曖昧な表現や言外の意図を読み取ることが難しい場合があり、手順やルールが明確に示された環境の方が安心して取り組みやすい傾向があるとされています。

また、一度決めたことを切り替える際に時間がかかることや、光・音・温度などの感覚刺激に対して強く反応することもあります。

職場で直面しやすいトラブル

指示の受け取り方に違いが生じることで、業務の進行に影響が出る場合があります。

例えば、「適宜」「早めに」といった曖昧な表現や、「あれ」「これ」といった指示代名詞が具体的に伝わらず、意図と異なる成果物になることがあります。

また、急な予定変更や想定外の対応が必要な場面では、混乱やストレスを感じやすいことがあります。複数の業務を同時に進めることに負担を感じる場合もあります。

人間関係においては、相手の意図を推測することが難しい場面があり、その結果として意思疎通にズレが生じることがあります。

さらに、オフィスの照明や空調、機械音などの環境要因が負担となり、業務への集中に影響が出る場合もあります。

ADHD(注意欠陥・多動性障害)の場合

ADHDの主な特性として、注意の持続しにくさ、多動性や衝動性、感情のコントロールの難しさなどがあげられます。

例えば、細かな点への注意が抜けやすく、忘れ物や物の置き忘れが生じやすいケースがあります。

また、思いついたことをすぐに言葉や行動に移してしまうことがあり、状況を整理するのに時間がかかると感じる場合もあります。

職場で直面しやすいトラブル

不注意の特性により、タスクの抜け漏れや小さなミスが重なることがあります。その結果、納期の調整が必要になるケースも見られます。

こうした点は本人の努力不足ではなく、特性による影響として理解されることが重要です。特に、正確性が求められる業務や複数の作業を同時に進める場面では、対応に工夫が求められることがあります。

また、感情のコントロールが難しい場面では、不満やストレスが高まった際に強い口調になってしまうことがあり、対人関係に影響が出ることもあります。

さらに、衝動性の特性から、タイミングを問わず連絡をしてしまったり、会話の流れに割って入ってしまったりすることがあり、周囲とのコミュニケーションに課題を感じる場合もあります。

発達障害のある社員への合理的配慮の具体策

握手をしている画像

合理的配慮とは、特別扱いではなく、一人ひとりの特性に合わせた環境を整えることです。ここでは、発達障害のある社員が持つ能力を適切に発揮できるよう、職場で実践できる具体的な配慮の方法を紹介します。

本人の特性に合わせた業務を切り出す

発達障害の特性上、どれほど努力しても適応が難しい業務があります。まずはその人の能力や特性を把握した上で、自分の力で完遂できる仕事を割り振ることが重要です。

その都度柔軟な判断が求められる業務が苦手な場合は、手順が明確に決まっているルーチン業務を担当してもらうことで、持っている能力が発揮されやすくなります。

また、複数の業務を同時に進めるマルチタスクは避け、目の前のひとつのことに集中できるシングルタスクを中心に依頼することも有効です。

最初は手厚いサポートを用意しながら、本人の成長や習熟度に応じて段階的に業務の幅を広げていくことで、自律性が育まれます。

具体的な指示を意識する

ASDの傾向がある場合、曖昧な表現や口頭だけのやり取りで情報を正確に処理することを苦手とされる方がいます。指示の出し方そのものを見直すことが、トラブル防止の第一歩になります。

「適当に」「早めに」「だいたい」といった曖昧な言い回しや、「あれ」「これ」といった曖昧な指示は使わず、簡潔かつ明確な言葉で伝えることを徹底します。

具体的には、納期を時間・分単位で指定する、最終的な成果物のイメージを共有する、作業手順を順序立てて伝えるといった方法が効果的です。

また、口頭だけで完結させず、後から見返せるテキストや視覚的な資料を活用することで、認識のズレを大幅に減らすことができます。

業務内容を理解しているかの確認を行う

初めての業務を依頼する場合は、「言わなくてもわかるだろう」という思い込みを手放し、正しく伝わっているかどうかを、指示する側から積極的に確認することが必要です。

「わからなければ聞きに来て」と本人に委ねるだけでは、独自の解釈で業務が進んでしまうリスクがあります。

業務のポイントを箇条書きで伝えた上でその場で復唱させる、試しに1つ作業をやってもらう、一時間後に進捗を確認するといった段階的なチェックを取り入れることで、早い段階でズレを修正できます。

さらに、作業を振るだけでなく「何のためにやる仕事か」「なぜあなたに任せるのか」という目的や意味づけをあわせて伝えることが大切です。業務の意義を本人が理解できると、集中力やモチベーションの維持にもつながります。

発達障害のある社員の活躍を支える体制づくり

合理的配慮を個別の対応にとどめず、組織全体で支える仕組みを整えることが、長期的な活躍につながります。ここでは、職場環境の土台を固めるための体制づくりについて解説します。

社内で障害特性の理解を深める

発達障害への対応力を組織全体で高めるためには、定期的な勉強会の開催や社内マニュアルの整備が有効です。多様な特性を持つ人材をマネジメントするスキルとして、研修を位置づけることが重要です。

人事担当者だけが知識を持っていても、現場での対応には限界があります。配属先の上司やチームメンバーを含めた全員が特性を理解することで、組織全体の対応力が底上げされます。

また、特定の社員に合わせた業務分担や配慮が「えこひいき」や「不平等」と誤解されるケースもあります。職場全体で障害に関する理解を共有しておくことが、不満や摩擦を未然に防ぐ上でも欠かせません。

1on1の機会を設ける

心理的安全性を保ち、信頼関係を築くために、担当業務以外の話題を中心とした1on1の場を定期的に設けることが推奨されます。

体調やメンタルの状態を確認したり、仕事の悩みをカジュアルに話したりする場として機能させることで、問題が深刻化する前に早期に把握できます。キャリアに関する希望や不安をすくい上げる機会としても活用できます。

ただし、事前準備を過剰に求めて本人の負担になったり、業務の枠を超えてプライベートに深入りしたりしないよう、適切な距離感を保つことが大切です。

あくまでも本人が話しやすいと感じる雰囲気づくりを優先します。

外部支援と連携する

発達障害のある社員への支援を自社だけで抱え込む必要はありません。ジョブコーチの派遣や、地域の「障害者就業・生活支援センター」といった外部支援機関と積極的に連携することが推奨されます。

専門機関の知見を活用することで、社内だけでは対応が難しい課題にも現場に即した形で対処できます。

職場で誤解やトラブルが生じた際には、発達障害に詳しいカウンセラーや医療関係者、社内の産業医などの専門家を交えて解決策を検討することも有効です。

当事者と周囲の双方が働きやすい環境を整える上で、外部の視点は大きな助けになります。

まとめ

採用後に発達障害が判明しても、それを理由とした解雇は認められず、企業には合理的配慮を提供する義務があります。大切なのは、障害の有無ではなくその人の特性を正しく理解し、指示の出し方や業務の切り出し方を工夫することです。社内研修や外部支援機関とも連携しながら、一人ひとりが力を発揮できる職場環境をつくっていきましょう。

Profile

著者プロフィール

めぐるファーム編集部

障害者の雇用が少しでも促進されるよう、企業担当者が抱いている悩みや課題が解決できるようなコンテンツを、社内労務チームの協力も得ながら提供しています。

まずはお気軽にご相談ください。

提案書・見学・導入のご質問まで、専任スタッフが丁寧にご対応します。

「障害者雇用めぐるメディア」 は、株式会社NEXT ONEが運営する障害者雇用支援事業のメディアサイトです。
働くことは、誰かの役に立つこと。そして、自分自身を誇りに思うこと。
私たちは、障害のある方が自分らしく働ける環境を広げ、
雇用を支える企業や支援者とともに、持続可能な社会の実現を目指します。
このメディアでは、支援の現場、当事者の声、そして雇用のヒントを発信し、
すべての「はたらく」にあたたかいつながりを届けていきます。

Support work. Grow together.