障害者雇用の法定雇用率を達成しても、採用した障害者が離職してしまえば採用コストが無駄になります。定着率の低さは多くの企業に共通する課題であり、原因を正しく理解して対策を講じることが重要です。今回は、障害者雇用における定着率のデータ、定着がうまくいかない主な原因、そして定着率を改善するための具体的な施策を詳しく解説します。
障害者雇用の定着率

独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構が2015年7月1日から8月31日の2か月間に行った「障害者の就業状況等に関する調査研究」によると、障害者雇用における定着率は時間の経過とともに低下する傾向があります。
まず、全体の定着率と障害種別の定着率を確認しましょう。
全体の定着率
障害者雇用の定着率について、就労継続支援A型(以下A型)を含む就職先と、A型を除く一般企業で大きな違いが見られました。
| 就職先 | 就職後3か月時点 | 就職後1年時点 |
|---|---|---|
| A型を含む就職先 | 80.5% | 61.5% |
| A型を除く一般企業 | 76.0% | 58.4% |
就職後1年時点の定着率は約6割にとどまり、約4割が1年以内に離職している実態がわかります。
採用できても定着しなければ、採用コストが無駄になるだけでなく、既存社員の負担も増えます。
定着支援に早期から取り組むことが、長期的なコスト削減と組織の安定につながります。
障害種別の定着率
障害種別の定着率については、以下の通りです。
| 障害の種類 | 就職後3か月時点 | 就職後1年時点 |
|---|---|---|
| 身体障害者 | 77.8% | 60.8% |
| 知的障害者 | 85.3% | 68.0% |
| 精神障害者 | 69.9% | 49.3% |
| 発達障害者 | 84.7% | 71.5% |
精神障害者の1年時点定着率は49.3%と唯一5割を下回っており、4種別の中で最も低い水準です。精神障害のある方を雇用する際には、より手厚いサポート体制が求められるといえるでしょう。
一方、発達障害者は1年時点で71.5%と4種別の中で最も高い定着率を示しています。
障害特性に応じた個別対応が定着率改善のカギであり、各種別の特性を正しく理解した上で適切な支援を行うことが大切です。
出典:独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構「障害者の就業状況等に関する調査研究」
障害者雇用の定着がうまくいかない原因

定着率を改善するためには、まず離職の原因を正しく理解することが大切です。障害のある方が離職に至る主なケースを3つ解説します。
それぞれの要因を把握することで、的確な対策を講じることが可能になります。
障害の理解不足による摩擦・孤立感
人間関係におけるストレスは、離職につながりやすい要因のひとつです。周囲の社員による障害への理解が十分でない場合、コミュニケーションの行き違いが生じることがあります。
また、障害を持つ方が「障害(病気)について理解されていない」「適切に評価されていない」と感じてしまうと、孤立感が増したり、職場への帰属意識が薄れたりすることがあります。
こうした課題に対応するためには、組織全体で障害への理解を深めることが重要です。職場内での研修や情報共有の機会を設けることが有効です。
業務内容とのミスマッチ
業務内容が本人のスキルや経験と合っていない場合、負担感や働きにくさにつながることがあります。例えば、業務の難易度が高すぎる、あるいは単調な作業が続くといった状況は、意欲の低下を招く可能性があります。
また、キャリア形成の見通しが持ちにくい場合にも、不安を感じやすくなります。
そのため、業務設計やキャリアパスの提示を行い、本人の成長や希望に応じた役割を検討していくことが大切です。定期的な見直しも有効です。
本人の健康・適応力の課題
体調の変化や通勤負担、業務による疲労などが重なると、就労の継続が難しくなることがあります。特に精神障害の場合は、体調の変動やストレスの影響を受けやすいケースもあります。
また、職場環境や業務の進め方に慣れるまでに時間を要するケースも見られます。
こうした状況に対応するためには、定期的な面談や体調確認の仕組みを整え、変化に早期に気づける体制を構築することが重要です。無理のない働き方を支える環境づくりが求められます。
障害者雇用の定着率を改善する方法

定着率を改善するための施策は多岐にわたりますが、まず取り組むべき重要な4つの方法を紹介します。これらを組み合わせることで、より効果的かつ継続的な定着支援が実現できます。
トライアル雇用・職場実習を活用する
本採用の前に短期の職場実習やトライアル雇用を取り入れ、双方が無理なく働き続けられるかを見極めましょう。
実際の業務を体験することで、企業は本人の適性や必要な配慮を把握しやすくなり、本人も仕事の進め方や職場の雰囲気を理解しやすくなります。
双方が納得した上で本採用に進むことで、入社後の定着率向上が期待できます。トライアル期間中から丁寧なコミュニケーションを重ねることが、長期的な定着の基盤となります。
研修を通じて障害に対する理解を促進する
障害特性の理解や合理的配慮の具体例、ハラスメント防止などについて、管理職や現場の従業員が学ぶ機会を設けましょう。
制度の周知にとどまらず、日常業務の中でどのようにサポートすべきかを具体的に共有することが重要です。理解が深まることで、障害のある方が安心して相談できる環境が整い、問題の早期解決にもつながります。
継続的に研修を実施することで、誰もが安心して働ける職場づくりを進められます。
本人の業務・健康状態を確認する仕組みづくりを行う
定期的な面談や日報などを活用し、日々の体調の変化や悩みを早期に把握・共有できる仕組みを整えましょう。
あわせて、面談の機会を通じて小さな成果も丁寧に評価し、フィードバックを行うことで、本人が成長を実感できるようにすることも大切です。
こうした取り組みにより、変化の兆候に早く気づきやすくなり、休職や離職のリスク低減につながります。
外部機関と連携する
企業内だけで抱え込まず、地域障害者職業センターや障害者就業・生活支援センター、就労移行支援事業所などの外部支援機関と連携することが重要です。
必要に応じて、職場に直接出向いて支援を行う職場適応援助者(ジョブコーチ)の活用も有効です。
支援機関と連携することで、企業単独では対応が難しい課題にも専門的な知見を活かして対応しやすくなります。外部リソースを適切に活用することが、定着率の向上に寄与します。
めぐるファームでも、障害者雇用の定着率に関するご相談を受け付けています。
めぐるファームは、農園での就労を通じて安定した雇用環境を提供するサービスで、障害のある方が無理なく働き続けられる仕組みを整えています。
現場には支援スタッフが常駐し、日々の業務フォローや体調面のサポートを行うため、企業側の負担を抑えながら雇用を進めることが可能です。
また、採用から定着まで一貫した支援を受けられるため、初めて障害者雇用に取り組む企業でも安心して活用できます。
まとめ
障害者雇用の定着率を高めるには、採用前の準備から採用後のフォローまで一貫した取り組みが重要です。原因を正しく把握し、職場実習や研修、定期的な面談、外部機関との連携を組み合わせて対応することが求められます。
自社だけで難しい場合は専門サービスの活用も有効です。継続的な取り組みにより、誰もが安心して働ける職場づくりを目指しましょう。
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著者プロフィール
めぐるファーム編集部
障害者の雇用が少しでも促進されるよう、企業担当者が抱いている悩みや課題が解決できるようなコンテンツを、社内労務チームの協力も得ながら提供しています。