障害者が仕事を辞めた場合、失業保険(雇用保険)を受給できる可能性があります。実は、障害者は一般の離職者と比べて受給条件が緩和されており、給付期間も大幅に長く設定されています。しかし、制度の仕組みや手続きを正しく理解していないと、受け取れる給付金を見逃してしまうこともあります。今回は、障害者が失業保険を受給するための条件・給付額・申請手続きについて解説します。
障害者が失業保険(雇用保険)を受給する際に知っておくべきこと

障害者が失業保険を受給する場合、一般の方とは異なる特例措置が設けられています。まず、受給条件・給付額・給付期間の3点について確認しましょう。
失業保険(雇用保険)を受給できる条件
障害者が失業保険を受給するには、3つの基本条件を満たす必要があります。
- 失業状態にあること(働く意思と能力があるにもかかわらず、現在職に就いていない状態)
- 就労の意思があること
- 雇用保険の加入期間を満たしていること
一般の方の場合、自己都合退職は直前2年間で12か月以上、会社都合退職は直前1年間で6か月以上の加入期間が必要です。
一方、障害者は「就職困難者」として特例が適用され、加入期間が6か月(離職以前1年間)以上あれば受給できます。退職理由に関わらず、通常よりも短い加入期間で受給資格が得られる点は、大きなメリットといえます。
また、受給中の求職活動実績についても、一般の方が4週間に2回以上の実績が必要なのに対し、障害者は4週間に1回以上と緩和されています。
なお、対象となる障害者は身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳を保有している方のほか、医師の診断書がある場合も含まれます。
失業保険の給付額の計算方法
失業保険の給付額は、離職前の賃金をもとに計算します。まず「賃金日額」を算出します。賃金日額は、離職前6か月間の総支給額を180で割った金額です。
次に「基本手当日額」を計算します。基本手当日額は、賃金日額に給付率(50〜80%)を乗じた金額です。
給付率は年齢と賃金日額によって異なり、賃金が低いほど高い給付率が適用されます。
2025年8月時点での基本手当日額の上限は以下の通りです。
| 離職時の年齢 | 基本手当日額の上限額(円) |
|---|---|
| 29歳以下 | 7,255円 |
| 30~44歳 | 8,055円 |
| 45~59歳 | 8,870円 |
| 60~64歳 | 7,623円 |
最終的な総給付額は「基本手当日額×支給日数」で計算できます。自分の受給額を事前に把握しておくことで、離職後の生活設計を立てやすくなります。
出典:厚生労働省「雇用保険の基本手当日額が変更になります」
失業保険の給付期間
障害者は「就職困難者」に分類されるため、一般の方と比べて給付期間が大幅に長く設定されています。一般の方の給付期間は90~150日間ですが、障害者の場合は大きく延長されます。
被保険者期間が1年未満の場合は150日間、1年以上の場合は45歳未満で300日間、45~64歳で360日間の給付を受けられます。最大360日間(約12か月)という長い給付期間により、障害者が焦らず次の仕事を探す余裕が生まれます。
なお、正当な理由のない自己都合退職の場合、1か月の給付制限期間があります(※5年間に2回以上の自己都合退職等の場合は3か月)。
ただし、障害の悪化など正当な理由による退職の場合は、給付制限が免除されるケースもあるため、ハローワークに相談することをおすすめします。
失業保険を申請するための手続きの流れ

失業保険の申請は、最寄りのハローワーク(公共職業安定所)で行います。手続きの流れを順に確認しましょう。
まず、退職後に会社から「雇用保険被保険者離職票」を受け取ります。離職票の内容を確認し、誤りがある場合は速やかに会社へ連絡してください。次に、以下の必要書類を揃えてハローワークへ向かいます。
【必要書類】
- 離職票
- マイナンバーカード(または通知カードと身分証明書)
- 顔写真2枚(3.0cm×2.4cm)
- 本人名義の預金通帳
- 印鑑
- 障害者手帳(または医師の診断書)
ハローワークで申請が受理されると、「雇用保険受給者説明会」への参加が求められます。説明会では受給に関する重要な情報が提供されるため、必ず参加してください。
その後、4週間ごとの「失業認定日」にハローワークへ出向き、求職活動の実績を報告することで給付金が支給されます。自己都合退職の場合は申請後約2~3か月後、会社都合退職の場合は約2~3週間後に受給が開始されます。
失業保険の受給中に知っておきたい注意点

失業保険の受給中は、給付金の受け取りだけでなく、社会保険や税金の手続きも必要です。見落としがちな注意点を解説します。
健康保険の切り替えを行う
会社を退職すると、それまで加入していた健康保険(社会保険)は失効します。退職後は速やかに健康保険の切り替え手続きを行う必要があります。
選択肢は主に3つあり、退職前の健康保険を最長2年間継続できる「任意継続」、市区町村が運営する「国民健康保険」への加入、もしくは家族の健康保険の「扶養」に入る方法があります。
保険料や給付内容を比較した上で、自分に合った選択をしましょう。
国民年金の手続きを行う
会社員時代は厚生年金に加入していましたが、退職後は国民年金への切り替えが必要です。
退職後14日以内に、住所地の市区町村窓口で手続きを行ってください。失業中で収入がない場合は、保険料の「免除・猶予申請」ができます。
特に障害者は一定の条件を満たせば全額免除が認められる場合もあるため、窓口に相談することをおすすめします。
住民税の非課税対象になるか確認する
住民税は前年の所得に基づいて課税されるため、退職した年にも納税義務が発生することがあります。
一方、障害者は住民税の非課税措置の対象となる場合があります。
前年の合計所得金額が一定以下の場合は住民税が非課税となるため、市区町村の税務窓口で自分が対象となるか確認しましょう。
非課税と認定されれば、退職後の生活費の負担を軽減できます。
アルバイトをする場合は収入の申告をする
失業保険の受給中でも、アルバイトは禁止されていません。
ただし、収入が生じた場合は必ず申告が必要です。申告なしにアルバイトをすることは「不正受給」とみなされるリスクがあります。
また、収入額によっては給付金が減額される場合もあります。在宅ワークやボランティアの謝礼なども申告対象となるため、少額でも正直に報告することが重要です。
不正受給とみなされないようにする
失業保険の不正受給は、受給した金額の全額返還に加え、最大2倍の追徴金が課されます。
アルバイト収入の未申告や求職活動実績の虚偽報告も不正受給にあたります。「バレないだろう」という考えは禁物です。
疑問点はハローワークの担当者に確認し、正しく手続きを進めることが、長期的には自分を守ることにつながります。
再就職をする際に利用できる支援機関
失業保険の受給中に、積極的に再就職支援サービスを活用することで、次のステップへの移行がスムーズになります。障害者の再就職をサポートする主な支援機関を紹介します。
・ハローワーク(公共職業安定所)
失業保険の申請窓口であると同時に、求人紹介や就職支援も提供しています。障害者専門の窓口を設けているハローワークも多く、障害の状態に合わせた求人を紹介してもらえます。
・障害者就業・生活支援センター
障害者の就職に向けた準備から職場定着まで、一貫した支援を行う機関です。就職活動中の相談だけでなく、生活面のサポートも受けられます。
・就労移行支援事業所
一般企業への就職を目指す障害者に向け、職業訓練や就職活動の支援を提供します。個別の支援計画をもとに、スキルアップと就職活動を同時に進められます。
・障害者職業センター
障害者に特化した職業リハビリテーションを提供する機関です。職業評価や職業準備訓練など、より専門的なサービスを受けたい方に適しています。
まとめ
障害者が失業保険を受給する際は、一般の方と比べて加入期間の要件が緩和され、給付期間が最大360日間と大幅に延長されるなど、多くの優遇措置が設けられています。手続きはハローワークで行い、障害者手帳や医師の診断書を持参することで就職困難者として認定され、特例の適用を受けられます。
受給中は健康保険・国民年金・住民税の手続きを忘れずに行い、アルバイト収入は必ず申告しましょう。再就職に向けては、ハローワークや障害者就業・生活支援センターなどの支援機関を積極的に活用していきましょう。
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著者プロフィール
めぐるファーム編集部
障害者の雇用が少しでも促進されるよう、企業担当者が抱いている悩みや課題が解決できるようなコンテンツを、社内労務チームの協力も得ながら提供しています。