病院・医療機関での障害者雇用の課題とは?具体的な業務例、実例、促進策を解説

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医療機関でも、障害者雇用の義務を果たすことが求められています。しかし、業務の特殊性や専門性の高さから、「どのような仕事を任せれば良いのか」「受け入れ体制をどう整えるか」と頭を悩ませている担当者も少なくありません。

今回は、医療機関における法定雇用率の現状とメリット、切り出せる業務の具体例、実際の取り組み事例、そして雇用を軌道に乗せるためのポイントを詳しく解説します。

医療機関における障害者の法定雇用率

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医療機関においても、一定規模以上の事業主は障害者雇用義務の対象となります。2025年4月1日以降、医療業の除外率は従来の30%から20%に引き下げられました。

さらに2026年7月より法定雇用率が2.7%に引き上げられるため、医療機関の障害者雇用義務は以前よりも厳しくなります。法定雇用率達成に向けた計画的な取り組みが急務といえるでしょう。

出典:厚生労働省「障害者の法定雇用率引上げと支援策の強化について

医療機関で障害者雇用を進めるメリット

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障害者雇用は義務であるだけでなく、医療機関にとって多くのメリットをもたらします。雇用を進めることで、組織全体の変革や生産性向上が期待できます。主な3つのメリットを解説します。

生産性の向上が期待できる

障害者が能力を発揮できるよう職場環境を改善することで、他の職員にとっても安全で働きやすい環境が整い、生産性向上につながります。バリアフリー化はその好例です。

また、障害者の担当業務を切り出す過程で、全体の業務フローの見直しや無駄の削減が図られ、業務効率の改善が期待できます。

看護補助者の確保につながる

障害者雇用は看護補助者確保の有力な選択肢となります。これまで募集をかけてもなかなか集まらなかった看護補助者を、障害者雇用によって充当できるケースがあります。看護師の業務負担を軽減しながら、医療現場全体のサービス品質を維持・向上できる点で、病院経営にとって大きなメリットとなります。

健康経営を実現できる

障害者雇用を推進することで、職場のメンタルヘルス環境が改善され、健康経営を実現できます。

障害への理解が深まることで職場全体の相互理解が促進され、コミュニケーションの質が向上します。従業員が安心して働ける環境づくりが、離職率の低下と組織の活性化につながることが期待できます。

医療機関で障害者に切り出しできる業務

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医療機関では専門的な医療行為は難しいものの、サポート業務や事務系業務を中心に、障害者が活躍できる職域は幅広く存在します。具体的な業務例を紹介します。

事務系業務

大手企業の本社などで精神障害や知的障害のあるスタッフが活躍しているメッセンジャー系の業務(郵便物の仕分け・配達、文書や物品の搬送など)は、医療機関でも展開しやすい職域です。

データ入力、アンケートの集計、カルテ庫の文書整理、図書室の本の整理などの事務系業務も代表的な職域です。

廃棄文書の回収、シュレッダー処理、廃棄物の分別・回収、寝具・シーツなどの病棟への配達と使用済み品の回収などの軽作業業務も担当できます。

医療系の業務

看護補助、薬剤補助(薬の補充・仕分けなど)、検査室での補助作業(器具の洗浄・片付けなど)、リハビリテーション部門での補助、人間ドックでの案内や誘導のサポート、デイケアでの利用者支援など、医療機関には補助的な業務が数多くあります。こうした業務は、障害者が担う職域としても注目されています。

各部署の業務内容や現場の状況を踏まえ、負担が偏らないように業務を切り分けて設計することが重要です。

医療機関における障害者雇用の事例

実際に障害者雇用に取り組んでいる医療機関の事例を2つ紹介します。他機関の事例から学ぶことで、自院の取り組みのヒントを得ることができます。

国立研究開発法人国立がん研究センター中央病院

国立がん研究センター中央病院では、知的障害、精神障害、発達障害の方を雇用しています。郵便仕分け・配達、点滴テープカット、リネン業務、清掃のほか、名刺作成、パスカード(通行証)の貸し出しや受付など多岐にわたる業務に広がっていきました。

採用前に院内職員を対象とした研修を実施し、知的障害への理解を深めることで受け入れ側の不安を解消しました。専任の企業在籍型ジョブコーチが業務マニュアルの作成や作業の指導を担い、各部署との橋渡し役を果たしています。

社会医療法人厚生会 木沢記念病院

木沢記念病院では、肢体不自由、内部障害、知的障害、精神障害の方を雇用しています。

ハローワーク、地域障害者職業センター、地域生活支援センターなどのサポートを受け、職域や業務の見直しを行い障害者雇用につなげました。看護業務補助、事務業務、リネン洗濯・保管、医療機器の洗浄などを担当しています。

採用前は不安の声も多かったものの、コツコツと仕事をこなす姿を目にすることで、職員の意識が変わり、「この業務なら障害者にも依頼できる」という視点が生まれました。

医療機関で障害者雇用を進めるためにやるべきこと

医療機関での障害者雇用を軌道に乗せるためには、採用前から定着後までの一貫した取り組みが不可欠です。主なポイントを3つ解説します。

職場実習を実施する

障害のある方を採用する前に、まず職場実習の受け入れを検討してみましょう。職場実習とは、一定期間、障害のある方に実際の職場で業務を体験してもらう取り組みです。

医療機関側は事前に働く様子を見て適性を判断でき、求職者側も業務内容や院内の雰囲気を事前に把握できるという、双方にとってのメリットがあります。

また、職場実習を通じて本採用前に適性を見極められるため、適切な配属先を決めることも可能です。相互理解が深まることで、採用後の定着率の向上が期待できます。

サポート体制を構築する

採用後の定着には、院内のサポート体制づくりが欠かせません。

障害者が少数の場合は、各職場の上司や同僚が兼務で指導・支援する「分散配置」が一般的です。一方、複数の障害者をチームとして配置する「集中配置」の場合は、専任の院内ジョブコーチを置くケースが多いです。

専任のジョブコーチは業務マニュアルの整備や日々の作業指導を担い、本人と各部署との橋渡し役を果たします。

院内ジョブコーチの配置には助成金も活用でき、離職率の低下による採用コストの削減効果も期待できます。

外部の支援機関を利用する

院内だけで抱え込まず、外部の専門機関をうまく活用することが、無理のない障害者雇用の継続につながります。

特に生活面の課題(服薬管理・金銭管理・住居問題など)は職場での対応が難しいため、その場合は障害者就業・生活支援センターに依頼することをおすすめします。同センターは、雇用・保健・福祉・教育などの関係機関と連携しながら、就業面・生活面の両方を一体的にサポートする機関として全国に設置されています。

採用後に体調を崩しやすい、働きにくさを感じているといった状況が生じた場合には、職場訪問やジョブコーチの派遣を通じて職場環境の改善を支援してもらうことも可能です。

自社での推進が難しい場合は、農園型障害者雇用サービス「めぐるファーム」のような民間サポートの活用もご検討ください。

めぐるファームは、農業を通じて安定した就労環境を提供し、障害のある方が無理なく働き続けられる仕組みを整えています。

現場には支援スタッフが常駐し、日々の業務フォローや体調面のサポートを行うため、企業側の負担を抑えながら雇用の定着を図ることが可能です。採用から定着まで一貫した支援を受けられる点も特長です。

>>めぐるファームの詳細はこちら

まとめ

医療機関における障害者雇用は、義務であると同時に生産性向上や看護補助者確保などのメリットをもたらします。業務の切り出しや受け入れ体制の整備を丁寧に行い、支援機関とも連携しながら取り組むことが重要です。準備と継続的なサポートの重要性は、事例からも明らかです。

自院での推進に不安がある場合は、専門の支援機関や民間サービスへの相談をぜひ検討してください。障害者雇用の推進は、すべての方が活躍できる職場環境の実現への出発点でもあります。

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著者プロフィール

めぐるファーム編集部

障害者の雇用が少しでも促進されるよう、企業担当者が抱いている悩みや課題が解決できるようなコンテンツを、社内労務チームの協力も得ながら提供しています。

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「障害者雇用めぐるメディア」 は、株式会社NEXT ONEが運営する障害者雇用支援事業のメディアサイトです。
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