障害者雇用を推進するための選択肢のひとつとして「特例子会社の設立」があります。障害者雇用のノウハウや体制を子会社に集約することで、法定雇用率の達成を目指す方法です。しかし、特例子会社にはメリットだけでなく、見落とせないデメリットも存在します。
今回は、特例子会社を設立するデメリットと、その対策、そして設立に踏み切る前に把握しておきたいメリットを詳しく解説します。
特例子会社を設立するデメリット

特例子会社の設立は、一見すると障害者雇用をまとめて推進できる理想的な方法に映ります。しかし、実際の運営にはさまざまな課題が伴います。事前に十分な理解がないまま設立に踏み切ると、後から大きな問題に直面することになりかねません。
ここでは、主なデメリットを3つ紹介します。
障害者雇用に対して親会社の意識が薄れる
特例子会社が設立されると、障害者雇用はそちらに任せきりになりがちです。親会社では障害のある方と実際に働く機会が減り、多様性への理解が深まりにくくなります。ダイバーシティ&インクルージョン(DE&I)の観点から、組織全体としての成長機会を失うリスクがあります。
インクルーシブな職場文化を育てるには、親会社側でも継続的な取り組みが必要です。
障害者雇用を「特例子会社に集約する」という意識が広がれば、グループ全体で多様な人材が活躍できる環境の実現が遠のきます。
キャリア形成が限定的になりやすい
多くの場合、特例子会社では親会社やグループ企業のサポート業務を担う形になります。社員が成長してキャリアアップを望んでも、それに見合った仕事を提供しにくい構造になりがちです。
やりがいや成長機会を感じられずに離職してしまうおそれがあり、せっかくの雇用が定着しないという問題が生じます。
また、特例子会社での経験が親会社やグループ内でのキャリアパスにつながりにくいため、長期的な雇用継続が難しくなるケースもあります。
持続的な仕組みづくりが難しい
特例子会社は親会社のサポート業務が収入の中心となることが多く、独自の付加価値を生み出しにくい傾向があります。
専門人材の常駐配置など障害者雇用に伴うコストも必要で、収益面での貢献は容易ではありません。長期的な経営安定のための仕組みづくりには、相応の労力と戦略が求められます。
また、親会社の事業規模や方針が変わった場合に影響を受けやすく、自律した経営基盤の確立が課題です。
特例子会社の設立にはメリットもある

デメリットだけに目を向けず、特例子会社ならではのメリットも正しく理解しておきましょう。適切に運営できれば、障害のある方にとっても企業にとっても大きな価値を生み出せます。
ここでは、代表的な4つのメリットを紹介します。
法定雇用率を達成しやすくなる
特例子会社として認定されるには、厚生労働省が定める以下の要件をすべて満たす必要があります。
【特例子会社の認定要件】
1.親会社の要件
- 親会社が、特例子会社の意思決定機関(株主総会等)を支配していること。(具体的には、子会社の議決権の過半数を有すること等)
2.子会社の要件
- 親会社との人的関係が緊密であること。(具体的には、親会社からの役員派遣等)
- 雇用される障害者が5人以上で、全従業員に占める割合が20%以上であること。また、雇用される障害者に占める重度身体障害者、知的障害者及び精神障害者の割合が30%以上であること。
- 障害者の雇用管理を適正に行うに足りる能力を有していること(具体的には、障碍者のための施設の改善、専任の管理者の配置等)
- その他、障害者の雇用の促進及び安定が確実に達成されると認められること。
この要件を満たすことで、特例子会社に在籍する障害者の雇用数を親会社グループ全体の雇用率として合算して算定できます。一般企業単独では難しい法定雇用率の達成が、大幅に実現しやすくなります。
法定雇用率が段階的に引き上げられる中で、特例子会社の活用は雇用率目標の確実な達成を支える有効な手段です。
出典:厚生労働省「『特例子会社』制度の概要」
障害者の特性に合わせた運営ができる
就業規則や給与制度、勤務体系などを障害者雇用に合わせて柔軟に設計できます。人事評価も障害特性や職務能力を前提として定めることができるため、適正な評価がしやすくなります。
スキルアップの機会も提供しやすく、障害のある方が安心して働ける環境を整えられます。障害特性に合わせた業務設計や設備環境の整備を集中的に行えることも、大きな強みです。
設備投資を効率良くできる
障害のある方を集約してマネジメントできるため、バリアフリー設備や支援ツールへの投資を一か所に集中できます。分散投資に比べてコストパフォーマンスが高く、障害のある方が使いやすい設備・環境を整えやすいのが強みです。
専門的な支援機器や作業補助ツールの導入コストを抑えながら、より多くの方に活用してもらえる環境を実現できます。
採用活動で有利になる
障害への配慮が行き届いた職場であるとのイメージが定着することで、一般企業よりも応募が集まりやすくなります。また、障害者同士のコミュニケーションが活性化しやすく、支援スタッフが常駐しているなどの理由から定着率向上も期待できます。結果として、採用・定着の両面でメリットを享受できます。
企業の社会的責任(CSR)の観点からも、特例子会社の設立と運営は対外的なアピールポイントです。
特例子会社のデメリットを軽減するための対策

デメリットを把握した上で、以下の対策を講じることで特例子会社の効果を最大化できます。設立前の計画段階から整理しておくことが、長期的な運営安定につながります。
雇用方針と戦略を再確認する
なぜ障害者を雇用するのか、何を達成すべきかを明確に定め直しましょう。特例子会社のミッションと、達成すべき雇用数・中長期計画を整理することで、運営方針がブレなくなります。その内容は、経営層を含めた組織全体で共有しておく必要があります。
さらに、定期的に方針を見直し、社会情勢や法改正への対応を盛り込んだ柔軟な計画にアップデートしていくことも大切です。
親会社との協力関係を強化する
親会社がアウトソーシングしている業務を優先的に特例子会社に回す仕組みを作りましょう。親会社の経営コスト削減と特例子会社の継続的な利益創出を両立させることで、持続可能な運営が実現します。
運営を安定させるためには、定期的な業務見直しと親会社との連携会議の設置が効果的です。グループ内での業務連携を深め、特例子会社の存在意義を明確に位置づけることが重要です。
支援機関に相談する
専門的知見を持つハローワークや地域障害者職業センター、民間の支援サービスに相談しましょう。設立要件や手続き、活用できる助成金など幅広い情報を提供してもらえます。
設立前の段階から相談しておくと、準備の進め方や事業計画の立て方を整理しやすくなります。運営上の課題が生じた際も、早期に専門家のアドバイスを得ることで、問題が深刻化する前に対処できます。
特例子会社の取り組みを広報する
特例子会社は、障害者雇用を通じて金銭的利益以外の社会的価値を生み出します。取り組み内容を社内外に積極的に発信し、企業イメージ・社会的信用の向上を目指しましょう。
CSRレポートや採用情報、SNSなどを活用した継続的な広報が効果的です。特例子会社での取り組みが社会貢献として評価されると、グループ全体のブランド価値の向上にもつながります。
まとめ
特例子会社には、法定雇用率の達成や専門的な支援体制の構築というメリットがある一方、親会社の意識が薄れることやキャリア形成の限界、持続性の確保といったデメリットも存在します。設立の検討に際しては、メリット・デメリットの両面を正しく理解した上で、自社の状況と目標に照らした判断が重要です。
運営が軌道に乗るまでには相応の時間と労力が必要であり、継続的な改善と関係機関との連携が欠かせません。
自社での推進が難しいと感じる場合は、農園型障害者雇用サービス「めぐるファーム」のような民間サポートの活用もご検討ください。
めぐるファームは、農園での就労機会を提供しながら、障害のある方の安定した雇用と定着を支援するサービスです。企業側の業務切り出しや雇用管理の負担を軽減しつつ、専門スタッフによるサポートを受けられる点も特長です。
障害者雇用を検討している企業様は、ぜひお気軽にご相談ください。
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著者プロフィール
めぐるファーム編集部
障害者の雇用が少しでも促進されるよう、企業担当者が抱いている悩みや課題が解決できるようなコンテンツを、社内労務チームの協力も得ながら提供しています。