障害があっても、一人暮らしは事前準備と支援制度の活用によって十分に実現可能です。しかし、住まい探しや家事、金銭管理など、実際には不安や負担を感じやすい場面も少なくありません。特に、自分の障害特性に合った環境づくりや、困ったときに頼れる支援先を把握しておくことが大切です。今回は、障害者が一人暮らしを始める際に必要な準備や利用できる制度、相談窓口について詳しく解説します。
障害者が一人暮らしする際に必要なこと

障害のある方が一人暮らしを始める際には、住まい探しから日常生活の管理まで、事前に準備すべき事柄が多岐にわたります。スムーズに自立した生活をスタートできるよう、必要なステップを解説します。
住居を探す
障害の種別に応じた住環境を整えることが、安定した一人暮らしの第一歩です。
車椅子を使用している場合は、段差のない間取りや幅の広い廊下が確保された物件が求められます。視覚障害がある場合は、室内の照明が十分か、点字案内が整備された建物かどうかも確認すべきポイントになります。
家賃については、月収の3分の1以下に収めることが目安とされています。収入と住居費のバランスを事前にしっかり確認しておくことが重要です。
物件探しは一般的な不動産会社への相談も選択肢の一つですが、日頃から支援を受けている支援員や相談員に相談するという方法も有効です。障害への理解が深い不動産会社に相談することで、実際の生活に即した物件が見つかりやすくなります。
また、入居時に保証人や連帯保証人を求められるケースがあるため、事前に相談できる親族や知人を確認しておくと安心です。
生活必需品や家具を購入する
新生活に向けて、ベッド・布団・テーブル・椅子・キッチン用品といった基本的な家具と、冷蔵庫・電子レンジ・洗濯機などの家電を揃える必要があります。
障害の状態によっては、特定の用途に対応した設備が必要になる場合もあります。例えば、肢体に不自由がある場合は高さ調整のできるテーブルや椅子、視覚障害がある場合は点字に対応した家電などが選択肢として挙げられます。
費用を抑えるには中古品やリサイクルショップを活用する方法も有効です。すべてを一度に揃えようとせず、実際の生活に合わせて少しずつ必要なものを購入していくことで、支出を分散させることができます。
設置や組み立てが難しい場合は、自治体や福祉団体が提供する支援サービスの活用も検討してみましょう。
必要書類を役所に提出する
新居への転居後は、速やかに役所で住所変更の手続きを行う必要があります。住民票の移動や転入届の提出がその中心となります。
手続きを怠ると、公共料金の請求書や行政からの通知が届かなくなるリスクがあります。役所の窓口は平日日中の対応が基本のため、スケジュールに余裕を持って訪問する準備が必要です。必要書類や身分証明書・印鑑などは事前に確認しておきましょう。
郵便局での転居届の提出、公共料金・銀行・保険会社への登録住所変更なども忘れずに行う必要があります。
一度にすべてを済ませようとするのではなく、優先順位をつけて計画的に進めましょう。オンラインで対応可能な手続きも増えているため、自身の状況に応じた活用をおすすめします。
引越し直後で手続きに手が回らない場合や、煩雑な作業が難しいと感じる場合は、家族などに代理を依頼することもできます。
日常生活全般をひとりで行う
一人暮らしでは料理・掃除・洗濯といった家事のすべてを自分で担うことになります。
調理については市販の調理キットや電子レンジ対応食品を活用することで負担を軽減でき、掃除・洗濯は定期的なスケジュールを組んで行うことで習慣化しやすくなります。
どうしても一人でこなすことが難しい場合は、家事代行サービスを利用しながら自立した生活を維持するという選択肢もあります。
水道光熱費や家賃の支払いについては、口座引き落としの設定を活用することで、払い忘れを防ぐことができます。
日常的に服薬が必要な方は、専用のピルケースを用意した上で、スマートフォンのリマインダー機能などを活用して服薬時間を管理すると良いでしょう。
障害者の一人暮らしを始める際の確認事項

一人暮らしを始める前に、自分の障害の程度をしっかりと把握し、実際に一人での生活が可能かどうかを慎重に考えることが大切です。
身体障害がある場合はバリアフリー設備など障害の特性に合った住環境が必要かどうか、精神障害がある場合は症状の波がどの程度あるか、また料理などの家事を無理なくこなせそうかといった点を、生活を始める前に十分に検討しておく必要があります。
民間の賃貸住居では、障害の特性に合った物件を見つけること自体が難しいケースもあります。そのため、物件探しには余裕を持った時間が必要です。
一方で、完全に自立した生活が難しい状況にある場合でも、外部のサポートを活用したり、障害の特性に合わせて物件の設備や生活の方法を工夫したりすることで、スムーズに一人暮らしを実現できるケースもあります。
障害者が一人暮らしする際に活用できる制度

一人暮らしにかかる経済的な負担を軽減したり、日常生活を支えたりするために、障害者が活用できる制度が複数あります。それぞれの内容を確認しておきましょう。
制度1|障害年金
障害年金は、障害の程度に応じて支給される公的年金制度で、一人暮らしの生活費の一部として活用できます。
支給額は加入していた年金制度(国民年金または厚生年金)と障害の等級によって異なります。国民年金に基づく障害基礎年金は1級・2級、厚生年金に基づく障害厚生年金は1級・2級・3級に区分されており、等級の数字が小さいほど支給額が大きくなります。
受給には申請手続きと医師の診断書が必要ですが、一度受給が始まると定期的な収入源となるため、経済的な安定につながります。
制度2|障害者控除
障害者控除は、所得税や住民税の負担を軽減できる制度です。
障害の程度が重く特別障害者に該当する場合は、通常よりもさらに控除額が大きくなります。年末調整や確定申告の際に申告することで年間の税負担を抑えることができ、限られた収入でも生活にゆとりが生まれやすくなります。
制度3|生活保護
生活保護は、最低限度の生活を保障することを目的とした制度で、障害者であっても一定の条件を満たすことで支給を受けられます。
収入が定められた水準を下回る場合に申請でき、家賃補助や生活費の一部を補填する形で支援が行われます。
支給の基準や対象は地域によって異なりますが、一人暮らしを始めたばかりで収入が不安定な時期の選択肢として活用できます。
制度4|特別障害者手当
特別障害者手当は、重度の障害を持つ方が自宅で生活する際に支給される手当です。
介護が必要な状態にあるなど特定の条件を満たすことで、月々の手当が支給され、生活費や医療費の一部を補う形で利用できます。
申請方法は自治体によって異なるため、まずは地元の福祉窓口で対象条件や必要書類を確認した上で手続きを進めましょう。
制度5|地域生活支援事業
地域生活支援事業は、地域の実情や利用者の状況に合わせた支援を提供する制度です。
移動の支援や買い物のサポートなど、日常生活上の困りごとを軽減するサービスが含まれており、自立した生活を維持する助けになります。
自治体が主体となって取り組んでいるため、利用を検討する際は各自治体の窓口に相談することが必要です。
制度6|日常生活支援事業
日常生活支援事業は、一人での生活に不安を抱える障害者を対象に、必要な支援を提供する制度です。
家族からのサポートが受けにくい状況にある場合や、日常的な活動が難しい場合に特に役立ちます。食事の準備・掃除・洗濯といった家事を手伝う訪問支援サービスや、通院・外出時の付き添いを提供するサービスなどが利用可能です。
サービスの内容や対応範囲は居住する地域によって異なるため、自治体の福祉窓口に問い合わせて具体的な内容を確認することが大切です。
また、利用頻度や支援内容によっては費用が発生する場合もあるため、事前に確認した上で利用計画を立てておくと安心です。
障害者の一人暮らしで困ったときの相談窓口
一人暮らしを続けるなかで困りごとが生じた際には、適切な相談窓口を頼ることが大切です。障害者の生活をサポートする機関を紹介します。
相談窓口1|自治体の福祉担当窓口
自治体の福祉担当窓口では、障害者の日常生活や福祉サービスに関する幅広い相談に対応しています。
どこに相談すれば良いかわからない場合も、まずはここに問い合わせることで、悩みの内容に合った相談先を紹介してもらえます。一人暮らしに関する困りごとの入口として気軽に活用できる窓口です。
相談窓口2|基幹相談支援センター
基幹相談支援センターは、地域における障害者支援の中核的な役割を担う機関です。
生活上の困りごとから就労支援・医療の手配まで、相談内容は多岐にわたります。
一人暮らしを始めたばかりで生活に不安がある場合でも、必要なサポートを提供するサービス事業所の紹介や、生活リズムを整えるためのアドバイスを受けることが可能です。
相談窓口3|特定相談支援事業所
特定相談支援事業所は、日常生活での困りごとや支援ニーズに応じた計画作りを手助けしてくれる窓口です。
生活リズムが不安定になりやすい方に向けたスケジュール管理のアドバイスや、適切な家事支援サービスの紹介なども行っています。
個々の状況に合わせた福祉サービス利用計画の策定も依頼でき、自分に必要な支援を整理する上で心強い存在です。
相談窓口4|一般相談支援事業所
一般相談支援事業所は、障害者やその家族が抱える幅広い悩みや課題に対応する相談機関です。
日常生活の困りごとや社会参加に関するアドバイスのほか、通院や買い物が難しい方に向けた移動支援サービスの手配、緊急時の連絡先案内なども行っています。
生活のさまざまな場面で具体的なサポートにつないでもらえる窓口として活用できます。
まとめ
障害者の一人暮らしを安定して続けるためには、自分に合った住環境を整えることに加え、福祉制度や支援サービスを上手に活用することが重要です。無理に一人で抱え込まず、自治体や相談支援機関を頼ることで、生活の不安を軽減しやすくなります。事前準備をしっかり行い、自分に合った支援を取り入れながら、安心できる一人暮らしを目指していきましょう。
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めぐるファーム編集部
障害者の雇用が少しでも促進されるよう、企業担当者が抱いている悩みや課題が解決できるようなコンテンツを、社内労務チームの協力も得ながら提供しています。