テレワークの普及により、障害のある方にとって働きやすい環境が広がっています。通勤負担の軽減や体調に合わせた勤務が可能になる一方で、「どのように管理・支援すべきか」「対面が減ることで孤立しないか」といった新たな課題も顕在化しています。今回は、障害者雇用におけるテレワークの現状、主な課題、そして実施する際のポイントを詳しく解説します。
障害者雇用におけるテレワークの現状

近年、障害者雇用においてもテレワークの活用が急速に広がっています。背景には障害のある方のニーズと、企業側の採用課題の両方があります。
ここでは、障害者雇用におけるテレワークの現状について解説します。
障害者雇用でテレワークが増えている背景
2021年10月に行った「テレワークに関する障害者のニーズ等実態調査」によると、テレワークを経験した障害のある方が「良かった点」として最も多くあげたのは「通勤の負担軽減」でした。
毎日の通勤は、体力的な消耗だけでなく、体調の波がある方にとって大きな壁となりがちです。テレワークであれば自宅で仕事ができるため、体調に合わせてペースを調整しながら働きやすくなります。
企業側にとっても、テレワークは採用の選択肢を広げる手段として機能しています。
都市部では企業が集中していることで障害者雇用をめぐる競争が激しくなっており、地方在住の障害のある方を遠隔で採用できるテレワークは、その課題を解消する有効な方法のひとつです。
さらに、こうした流れを後押しする環境整備も進んでいます。政府・自治体による推進策や助成金制度の拡充に加え、Web会議システムや業務管理ツールの普及により、オフィスに出社しなくても円滑なコミュニケーションや業務遂行が実現しやすくなっています。
近年の障害者のテレワークの特徴
障害者のテレワークは、かつてとは大きく様変わりしています。
1980年代から2000年代にかけて、在宅での就労は主に、重度の身体障害のある方を対象とした限られた働き方でした。
しかし現在では、知的障害・精神障害・発達障害・高次脳機能障害など、多様な障害のある方がテレワークを通じて就業するようになっています。
また、担える業務の種類も増えました。以前は専門知識を必要とするプログラミングが中心でしたが、高速通信網の整備とICTの進歩により、担える業務の幅は大きく広がりました。
現在ではマーケティングリサーチや動画の字幕制作、さらには分身ロボットを活用した遠隔接客など、専門性や創造性を必要とする業務にも従事する事例も見られます。
デジタル技術の進化が、障害のある方の就労可能性をさらに押し広げており、今後も新たな職域の開拓が期待されます。
出典:独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構障害者職業総合センター「テレワークに関する障害者のニーズ等実態調査」
障害者雇用でテレワークする上での課題

テレワークの普及に伴い、企業・従業員の双方にさまざまな課題が生じています。ここでは、主な4つの課題を解説します。課題を正しく把握することで、適切な対策を講じることが可能になります。
テレワークに適した業務が見つからない
業務の切り出しがオフィス前提となっており、テレワーク向けに分解できていない企業は少なくありません。その結果、継続的に仕事を提供できず、自宅待機状態になってしまうケースも見られます。
テレワークに適した業務を意識的に洗い出さなければ、在宅勤務の機会を十分に活用することは難しくなります。
そのため、業務プロセスの細分化と、PC1台で完結できる業務の整理が重要です。業務の切り出しに課題がある場合は、支援機関や専門サービスへの相談も有効です。
コミュニケーションが取りづらい
対面でのやり取りが減ることで、疑問の解消や報・連・相が滞りやすくなり、業務効率の低下や認識のズレが生じる可能性があります。また、障害特性によってはオンラインでのコミュニケーション自体が負担となる場合もあります。
孤立感が高まることで、体調の悪化や離職につながるリスクもあります。こうした課題を解決するためには、適切なツールの導入と連絡ルールの整備が不可欠です。加えて、テキストベースのやり取りにも対応できる体制を構築しておくことが重要です。
適切な人事評価がしづらい
勤怠・業務量が見えにくく、成果把握の根拠となる情報が不足しがちです。管理側は「サボりの懸念」、従業員側は「低評価への不安」が双方に生じやすくなります。
テレワーク下での評価基準を明確に設定し、成果と行動の両面で評価できる仕組みを整えることが重要です。評価の透明性を高めることが、従業員の安心感と意欲の維持につながります。
定期的な成果報告の場を設け、可視化されたデータをもとに評価することが効果的です。
体調の把握が難しい
テレワークでは、従業員の表情や様子を直接確認できないため、体調の変化に気づくことが遅れやすくなります。
また、障害を持つ方の中には、体調の波が就労に直結しやすく、早期のサインを見逃すと休職・離職につながるリスクがあります。
定期的なオンライン面談や日報・体調チェックシートの活用など、テレワーク下でも体調を可視化できる仕組みを設けることが重要です。
障害者雇用でテレワークを実施する際のポイント

課題を踏まえた上で、障害者雇用でテレワークを効果的に実施するためのポイントを3つ紹介します。これらを実践することで、テレワーク環境下でも障害のある方が安心して働き続けられる体制を整えられます。
テレワークに適した業務を洗い出す
職種や仕事単位でテレワークの可否を判断するのではなく、業務を細分化し、プロセスごとに整理することが重要です。これにより、テレワークに適した業務を見つけやすくなります。
例えば、データ入力、資料作成、情報収集、経理補助など、PC1台で完結する業務は特に適しています。業務の可視化とプロセス整理を行いながら、テレワークで担える範囲を段階的に広げていくことが現実的です。
また、担当業務を明確に定義することで、在宅環境でも自律的に働きやすくなります。さらに、定期的に業務内容を見直し、本人の成長に応じて業務範囲を拡充することも大切です。
ITツールでコミュニケーションしやすい環境をつくる
チャットツールやWeb会議ツール、勤怠管理ツールなどを目的に応じて使い分け、障害特性に適した連絡手段を選びましょう。また、始業・終業の報告方法や進捗共有のルールをあらかじめ明確にしておくことで、「見えない不安」を双方で解消できます。
加えて、定期的なオンラインミーティングやテキストでの声かけを行い、孤立感を防ぐことも重要です。
一方で、過度な連絡は集中を妨げる可能性があるため、連絡頻度のルールを設け、適切なバランスを保つことが求められます。ツールの操作に不安がある従業員に対しては、丁寧なオンボーディング(導入研修)を実施しましょう。
体調管理しやすい体制を取り入れる
フレックスタイム制や中抜け勤務の導入など、体調に応じて柔軟に勤務時間を調整できる体制を整えることも欠かせません。通院や服薬、休憩のタイミングを確保しやすいように、業務スケジュールには余裕を持たせましょう。
また、過集中や長時間労働を防ぐため、上司が定期的に勤務状況を確認することも大切です。
さらに、生活リズムを整える観点から、起床時間や就業時間を一定に保つことや、終業後の業務連絡を原則控えるといったルールを設け、オンとオフの切り替えをサポートすることも効果的です。
まとめ
障害者雇用でテレワークを成功させるには、単に在宅勤務を認めるだけでなく、適した業務の整理、円滑なコミュニケーション環境の整備、柔軟な体調管理体制の構築が重要です。障害特性に配慮した仕組みを整えることで、安心して働き続けられる環境づくりにつながります。自社に合った運用方法を見直し、継続しやすい体制づくりを進めていきましょう。
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著者プロフィール
めぐるファーム編集部
障害者の雇用が少しでも促進されるよう、企業担当者が抱いている悩みや課題が解決できるようなコンテンツを、社内労務チームの協力も得ながら提供しています。