障害者雇用で残業はできる?労働時間と合理的配慮、気を付けたいポイントを解説

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障害者雇用において残業をさせても問題はないのか、どこまで配慮すべきなのか悩む担当者は少なくありません。法令違反にならないか、本人の負担にならないかなど、不安や疑問を抱えたまま判断しているケースもあるでしょう。適切な対応を知らなければ、思わぬトラブルにつながる可能性もあります。

今回は、障害者雇用における残業の考え方や実務上の注意点について解説します。

障害者雇用で残業させても問題はない?

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障害者雇用で残業を命じても良いのか、不安に感じる担当者も多いでしょう。結論として、法令を守り、合理的配慮を前提とすれば残業は可能です。ここでは、障害者雇用における労働時間の基本的な考え方を解説します。

労働基準法の36協定を遵守する必要がある

障害者雇用であっても、時間外労働や休日労働を行う場合は、一般の労働者と同様に36協定の締結と労働基準監督署への届出が必要です。

法定労働時間は原則1日8時間・週40時間であり、これを超えて働いてもらうには労使協定が前提となります。障害があることを理由に特別な扱いになるわけではなく、協定の範囲内であれば残業命令自体が直ちに違法となるものではありません。

ただし、上限規制の遵守はもちろん、体調や通院状況への配慮が欠かせません。形式的に協定を結ぶだけでなく、健康面への影響も踏まえた運用が求められます。

合理的配慮に基づいて残業の可否を判断する

障害者を雇用する際、残業の可否は合理的配慮の観点から判断することが重要です。本人の障害特性や体力、通院の有無などを踏まえ、過重な負担にならない範囲で労働時間を設定することが求められます。

例えば、以下のようなケースでは残業を避ける配慮が必要です。

  • 精神障害者で、疲労の蓄積が症状の悪化につながりやすい場合
  • 通院日が定期的にあり、勤務時間の調整が必要な場合
  • 身体障害者で、長時間の着座や作業継続が身体的負担になる場合

残業の可否は企業の一方的な判断ではなく、本人との合意を前提に決定し、定期的に状況を確認することが大切です。法令遵守と合理的配慮を両立させることが、安定した雇用につながります。

障害者雇用で残業を依頼する場合の伝え方・注意点

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障害者雇用において残業を依頼する際は、法律上の配慮だけでなく、障害特性に応じた伝え方や環境調整が重要です。

ここでは、障害の種類ごとに気を付けたいポイントについて解説します。

知的障害のある方の場合|急な変更を避ける

知的障害のある方に残業を依頼する際は、急な予定変更をできる限り避け、事前に見通しを示すことが大切です。

知的障害のある方の中には、予定外の出来事や生活リズムの乱れに強い不安を感じる方がいます。突然「今日残業をお願いします」と伝えられると、気持ちの整理がつかず混乱してしまうこともあります。そのため、あらかじめ残業の可能性がある日を共有したり、早めにスケジュールを伝えたりする配慮が有効です。

また、残業を依頼する際には「何時まで」「どの業務を行うのか」を具体的かつシンプルに伝えることが重要です。抽象的な表現では理解が難しい場合があるため、時間や作業内容を明確に示すことで安心して取り組めます。

さらに、頼まれると断れず、つい「大丈夫です」と答えてしまう方も少なくありません。しかし、その「大丈夫」は必ずしも本心とは限らないケースもあります。一度確認するだけでなく、「本当に無理はないか」「今日は体調や予定は問題ないか」など、具体的に問いかけることで本人の意思を丁寧に確認する姿勢が求められます。

身体障害のある方の場合|身体への負担を考慮する

身体障害のある方に残業を依頼する場合は、身体的な負担を最優先に考慮することが基本です。

障害の内容や程度によっては、長時間の同一姿勢や移動、作業負荷が体調に大きく影響することがあります。残業をお願いする際は、通常業務と比べて過度な負担にならないかを事前に確認し、必要に応じて業務内容を調整することが大切です。場合によっては、主治医や医療機関と連携し、無理のない範囲で対応できる体制を整えることも検討してください。

また、見落とされがちなのが通勤面の負担です。障害によっては、通勤時間の長さや交通機関の混雑が体調悪化につながるケースもあります。終業時間が遅くなることで帰宅が困難にならないか、混雑時間帯に重ならないかといった点も配慮が必要です。

精神障害のある方の場合|本人の意向を慎重に確認する

精神障害のある方に残業を依頼する場合は、本人の意向やその時点でのコンディションを慎重に確認することが不可欠です。

精神障害の特性として、疲れやすい、緊張しやすい、症状の波によって仕事のパフォーマンスが変動しやすいといった傾向があります。普段は問題なく業務をこなしていても、ストレスや環境変化によって急に不調が表れることもあります。

そのため、残業を依頼する際には、日頃からのコミュニケーションを土台に「今の体調で問題ないか」「最近負担が増えていないか」などを丁寧に確認することが重要です。一方的に業務都合を優先するのではなく、本人の状況を尊重する姿勢が信頼関係を築きます。

ただし、精神障害のある方も責任感から「大丈夫です」と答える場合があります。表面的な返答だけで判断せず、残業時間を短く設定する、翌日の業務量を調整するなど、無理を前提としない運用を心がけることがポイントです。

障害者雇用で残業の発生を抑えるための対策

障害者雇用においては、残業が常態化しない仕組みづくりが特に重要です。一般の従業員以上に、業務の適正化やコミュニケーションの質が就労の安定に直結します。

ここでは、残業を未然に防ぐための具体的な対策を解説します。

仕事の切り出しを適正化する

残業を防ぐためには、業務量を適切に設定し、所定労働時間内に終えられる設計にすることが大前提です。

障害のある方に業務を任せる際、「できることを増やそう」という意識が先行しすぎると、結果として負担が過剰になるケースがあります。まずは本人の能力やスキル、得意・不得意を正確に把握し、それに見合った仕事量を設定することが重要です。

また、業務の難易度や作業スピードを見誤ると、時間内に終わらず残業が発生しやすくなります。定期的に作業時間を確認し、「どの工程に時間がかかっているのか」「無理な割り振りになっていないか」を見直すことが効果的です。

仕事の切り出しを細分化し、優先順位を明確にすることで、時間内に完了しやすい体制が整います。適切な業務設計こそが、安定した雇用継続の土台となります。

社内コミュニケーションや職場環境を改善する

残業の発生を抑えるには、日常的なコミュニケーションと職場環境の整備が欠かせません。

業務の進捗状況をこまめに確認し、「今の業務量は適切か」「内容は本人に合っているか」を定期的にすり合わせることが大切です。放置してしまうと、不要な作業を続けていたり、指示があいまいで理解に時間がかかっていたりすることに気づけません。

特に、「何となく分からないまま作業している」「確認しづらい雰囲気がある」といった状態は、作業効率を下げ、結果として残業につながります。指示は具体的かつ明確に伝え、不明点をその場で確認できる環境を整えることが重要です。

さらに、「仕事をフォローしてほしい」「少し業務量を調整してほしい」といった相談を気軽にできる雰囲気づくりも不可欠です。安心して声を上げられる職場は、問題の早期発見につながり、不要な残業を未然に防ぐことができます。

業務設計とコミュニケーションの両面を整えることで、無理のない働き方を実現し、長期的な活躍を支える環境が構築できます。

まとめ

障害者雇用で残業を行う際は、法令を遵守するだけでなく、合理的配慮の視点から本人の障害特性や体調、意向を丁寧に確認することが不可欠です。さらに、業務量の適正化や職場環境の整備によって残業そのものを抑える仕組みを整えることが、安定した就労継続につながります。無理のない働き方を実現できる体制づくりを進めていきましょう。

自社だけでの対応に限界を感じている場合は、専門的なノウハウを持つ外部支援の活用も有効です。

障害者雇用の「めぐるファーム」では、採用支援、就業後の定着フォローまで一貫してサポートし、企業と当事者双方にとって無理のない体制づくりを支援しています。農園型という特性を活かした安定的な就労環境の提供にも強みがあり、初めて障害者雇用に取り組む企業でも導入しやすい仕組みが整っています。具体的な支援内容や導入の流れについては、以下をご確認ください。

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