障害者雇用で「任せる仕事がない」と感じるのは、本当に業務が存在しないからなのでしょうか。多くの場合、原因は業務設計や切り出し方、職場体制にあります。採用時のミスマッチや配慮のしすぎ、サポート不足などが重なると、本人も企業も力を発揮できません。
今回は、仕事不足が生じる原因と具体的な解決策、相談先までをわかりやすく解説します。
障害者雇用で「任せる仕事がない」が生じる原因

障害者雇用に取り組んでいるにもかかわらず、「任せる仕事がない」「業務を振り分けられない」といった悩みを抱える企業は少なくありません。
本来は戦力として活躍してもらうことを目的に採用したはずが、実際には十分な業務を用意できず、本人も職場も戸惑う状況が生まれてしまいます。
なぜこのような事態が起こるのか、主な原因を整理して解説します。
採用時の説明と違う業務になる
面接時に提示した仕事内容と、実際に配属後に任せる業務が大きく異なることは、仕事不足を招く大きな原因です。
例えば、面接では「事務職としてデータ入力や資料作成を担当する」と説明していたにもかかわらず、実際には書類整理のみで業務量が少ない、といったケースがあります。
このようなミスマッチが生じると、想定していた業務量を確保できず、「やることがない」時間が増えてしまいます。
また、法定雇用率の達成を優先し、十分な業務設計を行わないまま採用してしまう場合もあります。その結果、限られた仕事のみを割り振り、残りの時間が待機や自己学習中心になることもあります。
しかし、業務が少ない状態は本人のモチベーション低下や自己肯定感の低下につながりやすく、長期的な定着にも影響します。採用段階での業務設計の甘さが、後の「仕事がない」問題を引き起こしているのです。
業務を適切に切り出せていない
任せられる業務が存在していても、うまく切り出せていないことも原因のひとつです。
既存業務を担当者単位でまとめて捉えていると、新たな役割を設計しにくくなります。業務を分解し、工程ごとに整理する視点が欠かせません。
例えば、営業事務の業務を一括りにすると難しく感じられますが、データ入力、チェック作業、資料フォーマット作成などに分ければ、任せられる業務が見つかることもあります。
「仕事がない」のではなく、「切り出せていない」可能性がある点を見直すことが重要です。
周囲からのサポートがない
職場のサポート体制が不十分な場合も、業務が広がらない原因になります。
既存社員が多忙な環境では、業務の引き継ぎや説明の時間を確保できず、「教える余裕がない」という理由で業務が回ってこないことがあります。
また、質問しづらい雰囲気や相談先が不明確な環境では、本人も業務範囲を広げにくくなります。サポート担当者や相談窓口を明確にすることが、業務の定着や拡大につながります。
障害者雇用は採用して終わりではありません。職場全体で支える体制があってこそ、継続的に仕事を任せられます。
配慮のしすぎで少ない業務量
「無理をさせたくない」という善意が、かえって業務不足を招くこともあります。
企業側が過剰に配慮し、担当業務を極端に限定してしまうと、簡単な作業ばかりを任せる状態になりがちです。その結果、短時間で終わる業務しかなく、空き時間が多く発生します。
さらに、難易度の低い業務だけではスキルアップの機会も得られません。本人の成長機会を奪うだけでなく、「自分は戦力として期待されていないのではないか」という不安を抱かせる要因にもなります。
合理的配慮は重要ですが、能力や希望を踏まえながら段階的に業務範囲を広げていく視点が必要です。過度な遠慮や思い込みが、「任せる仕事がない」状況を生む場合もあります。
障害者雇用で業務を切り出すための具体策

「任せる仕事がない」という状況は、業務そのものが存在しないのではなく、業務が十分に整理・再設計されていないことが原因としてあげられます。
ここでは、仕事不足を解消し、安定的に業務を確保するための具体策を解説します。
外注業務を内製化する
これまで外部に委託していた業務を見直し、社内で担える形にすることは、有効な方法のひとつです。
特に、ルーティンワークや一定の手順に沿って進められる業務は、安定した仕事として設計しやすい傾向があります。
例えば、郵便物の仕分けや社内便の管理、オフィス清掃、社員食堂の運営補助、社内報の作成サポートなどがあげられます。
これらはすでに外注費が発生している業務であるため、コスト面の整理がしやすく、役割も明確にしやすい点が特長です。
後回しになっている重要業務を振る
日々の業務に追われる中で、「重要だが緊急ではない」仕事が後回しになっているケースは少なくありません。こうした業務を洗い出すことも、有効なアプローチです。
具体的には、紙書類のデジタル化、文書のスキャンやアーカイブ管理、各種管理簿の作成、名刺情報の整理、倉庫や備品の整頓などがあげられます。
これらは組織全体の効率化や情報共有の質を高める重要な業務でありながら、担当者不在のまま放置されがちです。役割として明確に任せることで、会社全体の生産性向上にもつながります。
「空いた時間を埋める仕事」ではなく、「会社にとって意味のある仕事」として設計することが重要です。
残業の多い従業員の業務を分担する
慢性的に残業が発生している部署や社員がいる場合、業務を細分化して分担する方法も効果的です。
まずは現場にヒアリングを行い、「時間を取られている業務」や「他の人でも対応可能な業務」を洗い出します。その中から、定型化・手順化できる作業を切り出します。
例えば、経費精算の書類チェックやデータ入力、集計作業、書類のファイリングなどは分担しやすい業務の一例です。
この方法は、障害のある社員の業務創出だけでなく、既存社員の負担軽減や残業削減にもつながります。結果として、組織全体の働き方改善にも貢献できます。
障害者雇用で業務の切り出しに困った際の相談先

社内で業務の棚卸しを行っても「どう切り出せば良いか分からない」「本当にこの業務で良いのか不安」と感じることは少なくありません。
そのような場合は、自社だけで抱え込まず、専門機関へ相談することが有効です。第三者の視点が入ることで、業務創出のヒントや具体的な改善策が見えてくる可能性があります。
ここでは、業務の切り出しや障害者雇用の体制づくりに役立つ主な相談先を紹介します。
ハローワーク|幅広いレンジで支援
ハローワークは、厚生労働省が設置する公的機関で、全国に500か所以上あります。求職者だけでなく、事業主に対してもさまざまな雇用支援サービスを提供しています。
障害者雇用に関しては、採用前の準備段階から採用後の定着支援まで、幅広い支援を受けられるのが特徴です。障害特性への理解を深めるためのセミナーや、雇用管理に関するアドバイス、具体的な仕事の切り出しに関する相談などにも対応しています。
「何から手をつければ良いか分からない」という初期段階の悩みにも応えてくれるため、はじめて障害者雇用に取り組む企業にとって心強い存在です。まずは地域のハローワークに相談し、情報収集から始めることをおすすめします。
地域障害者職業センター|具体的なアドバイスを提供
より専門的かつ実践的な支援を求める場合は、地域障害者職業センターの活用が効果的です。
全国の各都道府県に少なくとも1か所設置されており、独立行政法人高齢・障害者・求職者雇用支援機構が運営しています。障害のある方に対しては専門的な職業リハビリテーションを提供し、事業主に対しては雇用管理や職場定着に関する相談・援助を行っています。
特筆すべき強みは、アドバイスが具体的で実務に即している点です。業務の切り出し方法や職務設計、職場内での配慮事項などについて、実例を交えた助言を受けられます。
ハローワークとあわせて活用することで、制度面と実務面の両方からサポートを受けられるため、より実効性の高い体制づくりが可能になります。
民間の障害者雇用サービス|細かなニーズに対応
近年は、民間企業による障害者雇用支援サービスも充実しています。より細かなニーズや専門領域に特化した支援が受けられる点が特徴です。
例えば、地方在住の障害者と企業をオンラインでマッチングするサービスや、エンジニアなど専門スキルを持つ人材の採用支援に強みを持つサービスなど、多様な選択肢があります。
業務の切り出しから職務設計、採用活動、定着支援までワンストップで伴走してくれるケースもあり、「自社だけでは設計が難しい」と感じている企業にとって有効なパートナーとなります。
障害者雇用サービスを活用する際は、農園型障害者雇用支援サービスの「めぐるファーム」もぜひご検討ください。
めぐるファームは、リース契約を必要としない柔軟な導入形態を採用しており、1名単位からの雇用にも対応できる点が特長です。企業ごとの課題や体制に応じて運用しやすく、初めて農園型モデルを取り入れる場合でも検討しやすい仕組みとなっています。
また、自然光を取り入れたハウス環境や専門スタッフによるサポート体制が整っており、働く方が安心して業務に取り組める環境を作っています。
まとめ
障害者雇用で「任せる仕事がない」という課題は、業務の棚卸しや再設計、適切なサポート体制づくりによって解消できます。外注業務の内製化や業務の細分化、専門機関の活用を通じて、意味のある役割を創出することが重要です。自社だけで抱え込まず、できることから業務を見直し、持続的に活躍できる環境を整えていきましょう。
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著者プロフィール
めぐるファーム編集部
障害者の雇用が少しでも促進されるよう、企業担当者が抱いている悩みや課題が解決できるようなコンテンツを、社内労務チームの協力も得ながら提供しています。