障害者雇用における助成金一覧|申請における注意点も解説

この記事をシェアする

  • x
  • facebook
助成金の画像

法定雇用率の達成に向けて、障害者雇用を検討しているものの、コスト面で悩んでいませんか。障害者雇用に関連して、さまざまな助成金制度が設けられています。今回は、障害者雇用で活用できる助成金の種類や注意点について紹介します。

障害者雇用における助成金とは

車椅子の画像

障害者雇用における助成金とは何か、助成金の背景や受給できる事業者の条件について紹介します。

障害者雇用における助成金制度の概要

障害者雇用促進法により、一定数以上の従業員を雇用している事業主には、法定雇用率以上の障害者を雇うことが義務化されています。法定雇用率とは、国が定める、常用労働者のうちに占める対象障害者の割合です。

法的に障害者雇用が促進されたことにより、障害者の積極的な採用が進むようになりました。障害者雇用のためには、障害者の安全を確保した職場環境の整備が求められます。また、多様な特性をもつ障害者を受け入れる支援体制も必要です。

障害者雇用の助成金制度は、事業主が障害者雇用を進めるために必要な環境整備ができるようにするものです。障害者雇用促進に役立つさまざまな、雇用関連の助成金があります。

障害者雇用で活用できる助成金の受給条件

事業者が雇用関連の障害者雇用の助成金を受給するには、各助成金の要件のほか、以下の共通事項を満たす必要があります。

  • 雇用保険適用事業所であること
  • 必要な書類を整備・保管すること
  • 審査や調査に協力すること
  • 会社都合による雇止めなどの事実がないこと(助成金によります) 等

雇用保険適用事業所とは、原則として、労働者を1人以上雇用する事業所のことです。上記のほか、助成金ごとに定められた申請期間内に申請することも求められます。

企業が活用できる障害者雇用の助成金一覧

男性がiPadで説明をしている画像

障害者雇用に関連して、企業が利用できる助成金を紹介します。

障害のある方を雇用したい場合

障害がある方を雇用した場合に利用できる助成金を紹介します。

特定求職者雇用開発助成金|特定就職困難者コース

就職が困難とされる高齢者や障害者を雇用した場合の助成金です。障害者については、身体障害者、知的障害者、精神障害者、重度障害者が対象です。

支給要件として、ハローワークなどの職業紹介事業者を通しての雇用が求められます。継続して雇用することも条件です。対象の労働者を雇用した場合の1人あたりの助成金の額は、週あたりの労働時間や障害の重さなどで異なります。

対象労働者 支給額
短時間労働者以外 身体・知的障害者
(重度障害者を除く)
120万円
(中小企業事業主以外は50万円)
重度障害者等 240万円
(中小企業事業主以外は100万円)
短時間労働者
(20時間以上30時間未満/週)
身体・知的・精神障害者
(重度障害者を含む)
80万円
(中小企業事業主以外は30万円)

特定求職者雇用開発助成金|発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース

障害者手帳を持っていない発達障害者や難病のある方を雇用する場合の助成金です。発達障害者支援法に規定する、自閉症やアスペルガー症候群、学習障害のある方などを対象としています。

支給条件は、特定就職困難者コースと同様、継続雇用を前提に、ハローワークなどを通して対象者を雇用する事業者です。支給額は、労働時間や事業者の規模により異なります。

対象労働者 支給額
短時間労働者以外 中小企業 120万円
中小企業以外 50万円
短時間労働者
(20時間以上30時間未満/週)
中小企業 80万円
中小企業以外 30万円

トライアル雇用助成金|障害者トライアルコース

障害者雇用にあたり、事業者が適性などを見極め、障害がある方との相互理解を図れるように一定期間雇用することを促進する助成金制度です。

事業者には、ハローワークなどの職業紹介事業者を通じて雇用することと、対象期間中は雇用保険被保険者資格取得の届け出が求められます。

助成金の対象にできるのは、以下のいずれかに該当する障害者雇用促進法に定める障害者で、障害者トライアル雇用を理解した上で希望する方です。

(対象労働者の条件)

  • 就労経験のない職業を希望する方
  • 2年以内に離職または転職が2回以上ある方
  • 離職期間が6か月を超えている方
  • 重度身体障害者、重度知的障害者、精神障害者である

支給額は、対象労働者1名につき月額最大4万円(最長3か月)です。精神障害者を雇用する場合は、月額最大8万円(最長3か月)、または月額最大4万円を3か月(最長6か月)が支払われます。

トライアル雇用助成金|障害者短期トライアルコース

継続雇用を前提に、一定の試用期間を定めて、週の労働時間が10時間以上20時間未満の障害者を雇用する事業者を支援する助成金です。

事業者は、3か月~12か月の短期間トライアル雇用として、ハローワークなどの紹介を通して対象労働者を雇用する必要があります。

対象労働者は、障害者短時間トライアル雇用制度を理解した上で希望する、発達障害者または精神障害者に該当する方です。支給要件を満たす場合、対象労働者1名につき月額最大4万円(最長12か月)が支給されます。

企業在籍型職場適応援助者助成金

障害者などの対象労働者を雇用するために、企業在籍型職場適応援助者(ジョブコーチ)を配置して職場適応援助を行わせる事業者を支援する制度です。

助成金の対象となる労働者は、以下のすべての条件を満たす方です。

  • 身体障害者、知的障害者、発達障害者、難治性疾病の方、高次脳機能障害の方、そのほかの障害者で地域センターの職業リハビリテーション計画がある方、のいずれかに該当
  • 雇用保険被保険者(なろうとする方も含む)
  • 対象者のための支援計画があること
  • 訪問型職場適応援助促進助成金による支援がない方
  • 初回受給の場合、地域センターが指定する職場適応援助者とともに支援が実施される方であること

助成金を受けようとする事業者は、支援計画に基づく対象者やその家族を支援するなど、職場適応のためのサポートをする必要があります。支給額は、労働時間や事業者の規模で異なります。

対象労働者 支給額(月額)
短時間労働者以外 中小企業 8万円
中小企業以外 6万円
短時間労働者
(常用の労働者よりも短く、かつ週30時間未満)
中小企業 4万円
中小企業以外 3万円

出典:
厚生労働省「障害者を雇い入れた場合などの助成
厚生労働省「『企業在籍型職場適応援助促進助成金』のご案内

施設の設備準備や適切な雇用管理の措置を行った場合

障害者雇用のための設備の準備や職場環境の整備などについては、障害者雇用納付金制度があります。障害者雇用にあたり、事業者間の経済的負担を調整する目的で設けられた制度です。

障害者法定雇用率を基準に、未達成の事業者に納付金を納めてもらい、納付金を財源に、助成金や報奨金が支給されます。障害者雇用のための施設の整備や能力開発訓練事業を実施する事業者などに対して、負担金の一部が支給される仕組みです。

対象者の介助、遠隔手話サービスや遠隔文書朗読などのICT活用、障害がある方の通勤を容易にする対策なども助成対象に含まれます。

詳しい内容や条件は、独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構の都道府県支部や窓口サービス課にお問い合わせください。
独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構

職場定着のための措置を行った場合

職場定着に関連する障害者雇用助成金を紹介します。

キャリアアップ助成金|障害者正社員化コース

障害者の正社員への転換または、有期雇用から無期雇用への転換により、職場定着を図る事業者を支援する助成金です。

転換後に雇用保険被保険者の適用を行い、6か月以上継続しているなどの一定の要件を満たす事業者が支給の対象です。対象労働者は、身体障害者、知的障害者、精神障害者、発達障害者、難病患者、高次脳機能障害者のいずれかで、一定の要件を満たすものに限られます。

支給額は、支給対象者の障害の程度や措置内容により異なります。

対象労働者 措置内容 支給額 ()内は中小企業以外の額
重度身体障害者
重度知的障害者
精神障害者
有期雇用→正規雇用 120万円
(90万円)
有期雇用→無期雇用 60万円
(45万円)
無期雇用→正規雇用 60万円
(45万円)
重度以外の身体障害者
重度以外の知的障害者
発達障害者
難病患者
高次脳機能障害
と診断された方
有期雇用→正規雇用 90万円
(67万5,000円)
有期雇用→無期雇用 45万円
(33万円)
無期雇用→正規雇用 45万円
(33万円)

出典:厚生労働省「キャリアアップ助成金(障害者正社員化コース)

職場介助者等助成金|職場介助者の配置又は委嘱助成金

障害特性に応じた雇用管理を図るために、障害のある方に必要な介助者の配置や委嘱を行う事業者を対象とした助成金です。

対象障害者を継続して雇い入れ、対象となる措置を実施するなど一定の要件を満たす事業者が対象です。2級以上の視覚障害者や重度四肢機能障害者の支援を条件としています。

支給額は、支給対象費用の4分の3相当額です。配置する場合は、時間単価×職場介助業務の時間数(月額15万円が上限)、委嘱の場合は1回あたりの費用(1回あたり1万円が上限)を支給対象費用とします。

出典:独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構「職場介助者の配置助成金

障害者介助等助成金|職場復帰支援助成金

事故や難病による障害で長期の休業中の対象労働者が職場復帰できるよう、必要な措置を行った事業者をサポートする助成金です。

職場復帰の日において、身体障害者、精神障害者(発達障害のみを除く)、難病、高次脳機能障害のいずれかの状況にある労働者を対象とします。

助成金を受ける事業者は、能力開発または訓練、労働時間の調整や特別休暇の付与、支援機器の導入、リワーク支援などを実施する必要があります。

支給総額は、中小企業が70万円、大企業が50万円です。

出典:厚生労働省「『障害者職場復帰支援助成金』のご案内

障害者雇用の助成金申請における注意点

男性とPCと手帳の画像

障害者雇用の助成金に関連して押さえておきたいポイントを紹介します。

障害者の特性に対応できる環境をつくる

職場の働きやすさは、従業員一人ひとりのパフォーマンス向上につながり、結果として事業全体にも良い影響を与えます。特に、障害者の新規雇用や継続的な雇用においては、物理的・心理的な職場環境への配慮が欠かせません。

障害の種類や特性によって必要な配慮は異なり、同じ名称の障害であっても、症状の程度や個人の状況により課題はさまざまです。そのため、画一的な対応ではなく、個別のニーズに応じた柔軟な支援が求められます。

また、施設や設備の整備といったハード面に加え、声かけや相談窓口の設置などソフト面での対応も重要です。こうした取り組みにより、障害のある方にとっても安心して働ける職場環境の構築が可能となります。

実雇用率のカウント方法に気を付ける

一定以上の労働者を雇用する事業主には、障害者雇用促進法による法定雇用率達成の義務があります。法定雇用率と比較が必要になるのが、実雇用率です。

実雇用率は、原則として、常時雇用労働者の場合は1とカウントします。

ただし、障害者については以下の表のように、労働時間や障害の程度で数が異なるため注意が必要です。

週所定労働時間30時間以上20時間以上30時間未満10時間以上20時間未満
身体障害者10.5
重度身体障害者210.5
知的障害者10.5
重度知的障害者210.5
精神障害者110.5

出典:厚生労働省「障害者雇用率制度について

障害者雇用促進法の法定雇用率や実雇用率については、こちらの記事で詳しく紹介しています。

障害者の法定雇用率とは? 雇用促進のためにすべきことを解説

障害者雇用促進法に従い、企業には定められた割合以上の障害者を雇用する義務があります。従業員の増加に伴い、法定雇用率の達成が課題になっている場合や、そもそも自社の規模で雇うべき人数がわからない場合もあるでしょう。障害者雇用の計画立案には、単なる制度の理解だけでなく、自社の雇用義務数と実雇用率を正確に把握するプロセスが不可欠です。今回は、法定雇用率の仕組みや算定方法のほか、未達成の場合のリスクについても解説します。なお、このコラムでは「障害者の雇用の促進等に関する法律」を「障害者雇用促進法」として表記します。障害者の法定雇用率とは?初めに、法定雇用率の制度の趣旨や今後の動向について解説します。障害者雇用促進法に基づく「法定雇用率」について障害者の職業的な自立や職業の安定を目的とした障害者雇用促進法では、事業主に法定雇用率の順守を義務付けています。法定雇用率とは、事業主に求められる障害者の雇用割合です。雇用と就業は、障害者が能力を発揮し、社会の一員として自立した生活を送るための軸として法律でも重視されています。事業者に期待される役割は、社会的責任として雇用を通じて障害者を支援することです。働きやすい職場づくりに取り組むことで、事業者にも、法令遵守による社会的信用の向上やダイバーシティの推進などのメリットがもたらされます。民間企業の法定雇用率は、以下の計算式で算出される数値やその他の要素を考慮して設定されています。障害者雇用率 =(A+B)÷(C+D)A:常用で働く障害者の数B:失業中の障害者の数C:すべての常用で働く労働者数D:すべての失業者数制度の対象となるのは、原則として障害者手帳を所持している方です。特殊法人や国および地方公共団体には、民間企業を下回らない雇用割合が求められます。法定雇用率に関する法令については、こちらの記事をご覧ください。 障害者雇用促進法とは?対象企業から求められる義務、違反リスクまで徹底解説 障害者雇用促進法により、障害者雇用の義務が発生することがわかっていても、具体的な内容を把握しきれていない担当者も多いのではないでしょうか。今回は、障害者雇用促進法の概要や改正ポイント、企業における義務について紹介します。障害者雇用促進法とは?障害者雇用促進法は、障害者の就労の安定を目的とした法律です。1960年に制定された身体障害者雇用促進法から始まり、名…

https://me-gu-ru.net/media/column/114/

詳細を見る

まとめ

障害者雇用に関する助成金には、雇用に関するものや環境整備に関するものなどがあります。状況に応じてうまく活用していきましょう。

障害者雇用を進めていきたいと考えていても、自社だけでは十分な取り組みができないこともあります。障害者雇用におけるコストや人手の不安については、農園型障害者雇用支援サービスの活用もご検討ください。

本記コラムに記載の内容は、2025年8月4日時点の情報に基づきます。

>>障害者雇用「めぐるファーム」の詳細はこちら

Profile

著者プロフィール

めぐるファーム編集部

障害者の雇用が少しでも促進されるよう、企業担当者が抱いている悩みや課題が解決できるようなコンテンツを、社内労務チームの協力も得ながら提供しています。

まずはお気軽にご相談ください。

提案書・見学・導入のご質問まで、専任スタッフが丁寧にご対応します。

「障害者雇用めぐるメディア」 は、株式会社NEXT ONEが運営する障害者雇用支援事業のメディアサイトです。
働くことは、誰かの役に立つこと。そして、自分自身を誇りに思うこと。
私たちは、障害のある方が自分らしく働ける環境を広げ、
雇用を支える企業や支援者とともに、持続可能な社会の実現を目指します。
このメディアでは、支援の現場、当事者の声、そして雇用のヒントを発信し、
すべての「はたらく」にあたたかいつながりを届けていきます。

Support work. Grow together.