障害者雇用代行サービスを利用するうえで重要なのは、法定雇用率を満たすことだけでなく、障害者が実際に能力を発揮し、長く活躍できる環境を整えることです。しかし、どのような視点で代行サービスを選び、活用すればよいのか分からない担当者も多いのではないでしょうか。
今回は、障害者雇用代行サービスを活用する際に押さえておきたいポイントについて解説します。
障害者雇用の代行サービスとは?

障害者雇用代行サービスとは、自社で障害者雇用を進めることが難しい企業に対して、雇用の実現をサポートする専門サービスです。
このサービスでは、障害者が働くための場として農園や貸しオフィス(サテライトオフィス)などの就労環境を提供するとともに、そこで働く障害者の人材紹介や定着支援、日々のサポートまで一貫して行います。
仕組み
代行サービスを利用する場合でも、農園やサテライトオフィスで働く障害者は、サービスを活用する企業の正式な社員として在籍することになります。
そのため、雇用契約は企業と障害者本人との間で結ばれ、毎月の給与も企業から直接支払われる仕組みです。
支払う費用
企業は固定費として、毎月雇用する障害者への給与に加え、農園やサテライトオフィスの賃貸料、施設の管理費などを負担する必要があります。
サービス利用開始時には農園やオフィスの利用にあたっての初期費用が発生するほか、障害者を採用する際には人材紹介料も必要となるため、トータルのコスト把握が重要です。
障害者雇用の代行サービスにおける課題

障害者雇用代行サービスの拡大に伴い、さまざまな課題が浮き彫りになっています。ここでは、現状の問題点と今後の改善に向けた方向性について解説します。
障害者雇用の本来の理念に反する?
障害者雇用代行サービスは急速に拡大しており、2025年10月末時点で国内に46の代行事業者が存在し、利用企業は1,800社以上、そこで働く障害者は1万1,000人以上に達しています。いずれも増加傾向にあることから、企業のニーズは高いといえるでしょう。
しかし一方で、不適切な雇用管理を行っている事業者の存在が問題視されています。厚生労働省の資料によると、障害者の法定雇用率を形式上満たすことが目的化してしまい、障害者本人の就労意欲が高まらないという指摘が相次いでいるのです。
本来、障害者雇用は企業の戦力として障害者が活躍できる場を提供することが目的ですが、単なる数合わせとなっているケースが少なくありません。
今後の方向性
こうした課題を受けて、「今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会」では、いわゆる障害者雇用ビジネスの諸問題を洗い出し、障害者雇用の質を高めることを目指した議論が進められています。
具体的には、事業者に対するガイドラインの設定や、障害者雇用に精通した資格者の配置義務化などが検討されています。
さらに、利用企業に対しては、障害者の業務の成果を自社の事業に生かすことや、最終的には自社の就業場所での障害者雇用に移行するよう支援することが求められる方向性が示されています。
今後は、法定雇用率の達成ではなく、実質的な雇用の質の向上が期待されています。
出典:厚生労働省「事務局説明資料/障害者雇用の質について(いわゆる障害者雇用ビジネスについて)」
障害者雇用の代行サービスを活用するメリット

障害者雇用代行サービスには、企業にとってさまざまなメリットがあります。ここでは、主な3つのメリットについて詳しく解説します。
雇用のための環境整備の手間が省ける
障害者雇用代行サービスを利用する最大のメリットは、自社の制度や設備を大きく変えることなく、障害者雇用を実現できる点です。通常、障害者を雇用する際には、バリアフリー化などの施設改修、就労支援体制の構築、社内理解の促進など、多くの準備が必要となります。
しかし代行サービスでは、代行事業者側に障害者雇用の豊富なノウハウが蓄積されており、採用から日々の労務管理まで専門的にサポートしてもらえます。企業は本業に集中しながら、障害者雇用の責任を果たすことが可能になるのです。
特に、障害者雇用の経験が少ない企業にとっては、専門家のサポートを受けられることは大きな安心材料となります。
定着率が高い
代行サービスでは、基本的に障害特性に配慮した業務環境が整えられており、障害がある方が取り組みやすい業務を提案してもらえます。農園での軽作業やサテライトオフィスでのデータ入力など、個々の能力や特性に合わせた仕事が提供されるため、障害者本人も無理なく働き続けることができます。
また、専門スタッフによる継続的な支援体制があることで、困りごとにも迅速に対応でき、結果として定着率が高まる傾向にあります。定着率の向上は、企業にとっても採用コストの削減につながる重要なポイントです。
法定雇用率を達成できる
自社で障害者の採用活動を行う場合、適切な人材を見つけるまでに時間がかかることも少なくありません。しかし代行サービスを利用すれば、事業者のネットワークを通じて速やかに人材を確保でき、法定雇用率を達成しやすくなります。
法定雇用率を達成できない場合、企業は障害者雇用納付金の支払いが必要となるほか、企業名の公表といったレピュテーションリスクも生じます。こうした未達成時のダメージを避けるために、代行サービスの活用は有効な選択肢となるのです。
障害者雇用の代行サービスを活用するデメリット
障害者雇用代行サービスには便利な面がある一方で、いくつかのデメリットも存在します。ここでは、企業が注意すべきマイナスポイントについて解説します。
自社にノウハウが残らない
代行サービスでは、代行業者が採用から日々の管理までを一手に担ってくれるため、企業側が障害者雇用に直接携わる機会がほとんどありません。その結果、自社内に障害者雇用に関するノウハウや経験が蓄積されず、実績も積み上げにくいという問題があります。
将来的に自社での本格的な障害者雇用を目指す場合、この経験不足が大きな障壁となる可能性があるため、長期的な視点での計画が必要です。
働きがいが得られにくい
代行事業者の中には、障害者に提供する業務の質が十分ではないケースも見られます。ほとんど作業がない状態で待機していたり、単調な作業の繰り返しばかりだったりと、障害者本人が働きがいや成長を感じられない環境となっている場合があります。
これでは障害者の就労意欲を高めることができず、本来の障害者雇用の理念からも大きくかけ離れてしまいます。
外部から疑問視される
障害者雇用代行サービスの利用は、外部のステークホルダーから「社会的責任を果たしていない」「形だけの雇用ではないか」と疑問視される可能性があります。近年、企業の社会的責任への関心が高まる中、こうした批判は企業イメージの低下につながるリスクがあります。
代行サービスを活用する際は、社会的評価への影響を慎重に見極め、透明性のある運用を心がけることが重要です。
障害者雇用の代行サービスを活用する際のポイント
障害者雇用代行サービスを適切に活用するためには、厚生労働省が示す指針を参考にすることが重要です。
厚生労働省は2023年6月に、障害者が活躍できる職場環境の整備や適正な雇用管理のため、事業主が行うことが望ましい取組のポイントをリーフレットにまとめています。このリーフレットでは、以下の9つのポイントが詳しく解説されています。
- 障害者雇用の方針の検討、社内理解の促進
- 障害者の職務の選定・創出
- 募集・採用・配置(マッチング)
- 雇用形態・雇用期間
- 労働時間・休日
- 賃金等労働条件
- 勤怠管理、業務管理
- 職業能力の開発・向上
- 評価、待遇
特に重要なのは、法定雇用率の達成のみを目的化しないという姿勢です。リーフレットでは、ハローワークへの相談が可能であることや、就労支援機関の支援を受ける際の留意点についても周知されています。
代行サービスを利用する場合でも、これらのポイントを踏まえ、障害者本人が真に活躍できる環境づくりを目指すことが重要です。
出典:厚生労働省「障害者雇用の質について(いわゆる障害者雇用ビジネスについて)」
出典:厚生労働省「障害者が活躍できる職場づくりのための望ましい取組のポイント(リーフレット)」
まとめ
障害者雇用代行サービスを活用する際は、法定雇用率の達成を目的化せず、厚生労働省のガイドラインに沿って、職務設計や労働条件、育成・評価まで総合的に考えることが重要です。代行サービスはあくまで手段であり、障害者本人が活躍できる職場づくりが本質です。ガイドラインを積極的に活用し、質の高い障害者雇用の実現に向けて取り組んでいきましょう。
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著者プロフィール
めぐるファーム編集部
障害者の雇用が少しでも促進されるよう、企業担当者が抱いている悩みや課題が解決できるようなコンテンツを、社内労務チームの協力も得ながら提供しています。