大人の男性に見られるADHDは、仕事や人間関係でつまずきやすく、周囲から誤解されてしまうことがあります。しかし、その背景には特性による明確な理由があります。まずは特徴を正しく理解し、適切な対策を知ることが重要です。今回は、大人・男性のADHDの特徴と仕事での困りごと、具体的な対処法について解説します。

大人・男性のADHDに見られる特徴

ここでは、大人のADHDに見られる特徴と、男性特有の傾向について解説します。

大人のADHDに見られる特徴

大人のADHDには、主に「不注意」「多動性」「衝動性」という3つの特徴があります。これらの特性は、仕事や日常生活においてさまざまな形で現れます。

不注意(集中力の維持が難しい傾向)

不注意の特性がある方は、集中力を維持することが難しく、日常生活や仕事で次のような困りごとを抱えやすい傾向があります。

仕事や日常生活の中で「うっかりミス」が多く、書類の誤字脱字や記入漏れが頻繁に起こります。

会議や打ち合わせで話を聞いても内容が頭に残りにくく、後から「何を決めたんだろう？」と思い出せないことがあります。

約束やスケジュールを忘れやすく、物の置き場所をよく忘れてしまうため、鍵や財布、スマートフォンなどを探す時間が増えてしまいます。

また、優先順位をつけることが苦手で、複数のタスクを同時に進めることが難しく、どれから手をつければ良いのか分からなくなってしまうこともあります。

多動性(落ち着かない、動きたくなる傾向)

多動性の特性がある方は、じっとしていることが苦痛に感じられ、常に体を動かしたくなる傾向があります。

会議中や研修中などでじっとしているのが苦痛で、手や足を動かしてしまう(貧乏ゆすりなど)ことがよくあります。話している途中で次々と考えが浮かび、思いついたことをすぐ口にしてしまうため、相手の話を最後まで聞かずに発言してしまうことも起こりがちです。

頭の中に考えが次々と浮かぶため、ひとつのことに集中が続きにくく、作業が途中で止まってしまうこともあります。

衝動性(思いついたらすぐ行動してしまう傾向)

衝動性の特性がある方は、思考よりも行動が先に出てしまい、後になって「あの時どうしてあんなことを……」と後悔することが多い傾向があります。

思ったことをすぐ口に出してしまうため、相手を傷つけたり、場の空気を壊したりしてしまうことがあります。感情のコントロールが難しく、突然怒ったり、イライラが抑えられなくなったりすることもあります。

また、衝動買いをしてしまったり、ギャンブルやゲームなどにのめり込んでしまったりすることもあり、金銭管理に問題が生じる場合もあります。

男性は特に「多動性・衝動性」が強く現れやすい傾向

男性のADHDでは、女性に比べて多動性や衝動性が強く現れやすいとされています。

子どものころから「落ち着きがない」「衝動的」と指摘されることが多く、学校生活や家庭で注意を受けてきた経験を持つ方も少なくありません。

大人になってからも、この傾向は続きやすく、職場や人間関係で次のような場面が見られることがあります。

• 会議や商談の場で、相手の話を最後まで聞かずに口を挟んでしまう
• 衝動的に行動してしまい、勢いで転職や大きな買い物をしてしまう
• じっとしていられず、デスクワーク中に頻繁に席を立つなど、落ち着きのない動作が見られる

大人のADHDによくある仕事での困りごと・対策

ADHDの特性は、仕事のさまざまな場面で困りごととして現れやすいものです。ここでは、よくある困りごとと、その具体的な対策について解説します。

タスク漏れや忘れ物が多い

ADHDの方は、確認作業が苦手で、誤字脱字や記入漏れをしてしまうことがあります。必要事項を書き忘れたり、提出をし忘れたりすることもよくあります。

また、持ち物を忘れたり、物を置き忘れてしまったりすることが多く、仕事に支障をきたすこともあります。

対策

大切なことはすぐにメモを取り、決まったノートやアプリに一元化することが効果的です。複数の場所にメモを取ると、どこに書いたか分からなくなるため、必ず同じ場所に記録する習慣をつけましょう。

提出前には「指差し確認」「ダブルチェック」を習慣化し、見落としを防ぐのもひとつの手です。可能であれば、同僚に確認をお願いするのも良いでしょう。

出発前の持ち物チェックリストを作り、玄関など目に入りやすい場所に貼っておくことで、忘れ物を防ぐことができます。財布・スマ－トフォン・鍵・名刺など、必須アイテムをリスト化しましょう。

マルチタスクが苦手

複数のタスクを同時に進めると混乱してしまい、どの作業から手をつけるべきか判断が難しくなります。作業の優先順位づけが苦手で、結果として業務が滞ってしまうこともあります。

対策

やることをToDoリストに書き出し、「優先順位」と「所要時間」を明記することが重要です。視覚化することで、何をすべきかが明確になります。

タスクは細分化し、「今やること」をひとつに絞ります。大きなプロジェクトは小さなステップに分け、ひとつずつクリアしていくことで達成感も得られます。

必要に応じて上司や同僚に優先順位の確認をお願いすることも大切です。自分の判断に自信が持てない時は、遠慮せずに相談しましょう。

集中し続けるのが難しい

周囲の音や人の動きに気を取られてしまい、作業が中断されることがよくあります。デスクワークでじっとしているのがつらく、繊細な作業に集中し続けるのが難しいと感じることもあります。

対策

静かな環境を選ぶか、ノイズキャンセリングイヤホンを活用して、外部からの刺激を遮断することが効果的です。会議室や個室スペースが使えるなら、集中が必要な作業はそこで行うのも良いでしょう。

作業スペースには必要最小限の物だけを置き、視覚的な刺激を減らします。デスク周りをシンプルにすることで、集中力が高まります。

「25分作業＋5分休憩」のポモドーロ・テクニックを取り入れることで、短時間の集中を繰り返し、無理なく作業を進められます。タイマーを使って、メリハリのある働き方を実践しましょう。

周囲の理解が得られない

ADHDの特性が仕事に影響を及ぼすことで、周囲から「怠けている」といった誤解を受けることがあります。

特に、成果や地位、責任といった要素が重視される職場環境では、特性による困難が「計画性に欠ける」「自己管理ができていない」などと評価されてしまうことも少なくありません。

こうした誤解や評価が続くと自己肯定感が低下し、うつ病や不安障害などの二次的なメンタルヘルスの問題に発展する可能性もあります。

対策

まずは、自分の特性を正しく理解し、できる範囲で工夫を続けていくことが大切です。完璧を目指すのではなく、「今の自分にできること」を少しずつ積み重ねていきましょう。

また、職場の上司や同僚に特性を伝え、サポートをお願いすることも検討してみてください。理解のある環境で働くことで、自分の能力を発揮しやすくなります。

必要に応じて専門の医療機関やカウンセラーに相談し、適切な診断や治療を受けることも重要です。薬物療法や認知行動療法など、さまざまな支援方法があります。

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めぐるファーム編集部

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