精神病にはさまざまな種類があり、それぞれ特徴的な症状や原因が異なります。自分や身近な人の症状がどの疾患に該当するのか分からず、不安を感じている方も多いでしょう。今回は、精神病の主な種類とその特性、受診の流れについて解説します。
精神病の主な種類

精神病には多様な種類があり、それぞれ異なる症状や特性を持っています。
| 疾患名 | 主な特性 | 代表的な症状 |
|---|---|---|
| 統合失調症 | 現実と想像の区別がつきにくくなる | 幻覚、妄想、感情や意欲の低下 |
| 気分障害 | 気分の波が主な症状として表れる | うつ状態、躁状態、睡眠障害 |
| てんかん | 脳の過剰興奮による発作を繰り返す | けいれん、意識消失、感覚異常 |
| 依存症 | やめたくてもやめられない状態 | 執着、否認、生活の優先順位の変化 |
| 高次脳機能障害 | 脳損傷による認知・行動の障害 | 記憶障害、注意障害、感情制御困難 |
それでは代表的な精神疾患について、主な特性・症状・考えられる原因を詳しく解説しましょう。
統合失調症
統合失調症は、心や思考のまとまりが難しくなり、現実と想像の区別がつきにくくなる精神疾患です。幻覚や妄想をはじめ、感情・意欲・社会性の低下など、さまざまな生活のしづらさが見られます。
主な特性
統合失調症では、脳内の情報処理や感情のコントロールがうまく機能しなくなります。そのため、本人にとっては現実に感じられる幻覚や妄想が生じ、周囲とのコミュニケーションに支障をきたすことがあります。発症は思春期から30代に多く見られ、男女ともに発症する可能性があります。
症状
統合失調症の症状は、以下4つに分類されます。
- 陽性症状
幻覚(特に幻聴)や妄想(被害妄想・関係妄想など)が現れます。 - 陰性症状
感情や意欲の低下、快感の喪失、人づきあいを避けるなどの社会的引きこもりが見られます。 - 解体症状
思考がまとまらず話の筋道が通らなくなったり、行動が奇妙になったりします。 - 認知症状
集中力・記憶力・判断力の低下により、仕事や学習への支障が生じます。
考えられる原因
統合失調症の詳しい原因は不明ですが、遺伝的要因と環境的要因の両方が関係していると考えられています。発症しやすい体質の人が、強いストレスや緊張をきっかけに発症する場合が多いとされています。
一般人口の発症率は約1%ですが、家族に統合失調症の人がいる場合は約10%、一卵性双生児では約50%の確率で発症するとされています。
気分障害
気分障害は、気分の波が主な症状として表れる精神疾患で、日常生活や人間関係に大きな影響を及ぼすことがあります。うつ病や双極性障害などが代表的な疾患です。
主な特性
気分障害では、本人の意志とは関係なく気分が大きく変動します。
うつ状態では活動意欲が著しく低下し、逆に躁状態では過剰なエネルギーと活動性が見られます。これらの気分変動は日常生活や対人関係に深刻な影響を与え、適切な治療を受けずに放置すると症状が悪化する可能性があります。
症状
うつ状態では、気持ちの強い落ち込み、無気力、集中力の低下、疲れやすさ、自己否定感、希死念慮(死について考える)などの精神症状が現れます。
また、身体的な不調として、食欲不振、頭痛、肩こり、便秘や下痢、睡眠障害(不眠・過眠)などが見られます。
一方、躁状態では、気分の過剰な高揚、浪費や無謀な行動、自信過剰、睡眠時間の減少、活動量の増加、怒りっぽくなる傾向などが特徴的です。
双極性障害では、躁状態とうつ状態が周期的に繰り返され、気分の変動が激しくなります。
考えられる原因
気分障害の原因として、脳内の神経伝達物質(セロトニン・ドーパミンなど)のバランス異常が関与していると考えられています。また、遺伝的な要因による発症しやすさも指摘されています。
さらに、強いストレス、トラウマ、生活環境の変化(結婚・出産・転職・更年期など)が引き金となることもあります。脳の機能低下やエネルギー不足など、生理的な不調が関与する場合もあるとされています。
てんかん
てんかんは、脳の一部が一時的に過剰に興奮することで、けいれんや意識消失などの発作を繰り返す脳の慢性疾患です。発作の症状は人によって異なりますが、同じ患者ではほぼ一定のパターンで繰り返されます。
主な特性
てんかんは、脳の神経細胞が突然一時的に異常な電気活動を起こすことで発作が生じます。発作は予測できないタイミングで起こるため、日常生活において注意が必要です。適切な薬物治療により、多くの患者で発作をコントロールすることが可能です。
症状
てんかんの症状は多様で、けいれんを伴う発作、突然の意識消失、意識はあるが認知や感覚の変化を伴う発作などがあります。
発作の起こる脳の部位によって症状が異なり、手足のけいれん、異常な動作、視覚・聴覚の異常、ぼんやりして動作が止まる欠神発作などが見られます。
発作が長く続いたり、短い発作が繰り返され意識が戻らなかったりする状態(てんかん重積状態)では、生命に危険が及ぶこともあるため注意が必要です。
考えられる原因
てんかんの原因には、脳出血・脳梗塞・アルツハイマー病などの脳疾患があります。また、出産時のトラブルによる脳障害やウイルス感染、遺伝子変異、先天的な代謝異常、自己免疫異常なども原因となります。
脳の神経細胞(ニューロン)の興奮と抑制のバランスが崩れることで、過剰な電気的活動が発生し発作が起こると考えられています。小児期に発症する場合も多く、高齢者では脳血管障害が原因で発症するケースが増える傾向にあります。
依存症

依存症は、特定の物質や行為に強くとらわれ、「やめたくてもやめられない」状態になる精神的・行動的な障害です。依存行為を繰り返すうちに、脳内で快楽物質(ドーパミン)を求める回路が形成され、自己コントロールが難しくなります。
主な特性
依存症は、アルコール・薬物などの物質依存と、ギャンブル・ゲーム・買い物などの行為依存に分類されます。どちらも脳の報酬系に作用し、一時的な快楽や安心感を得られるため、繰り返し行動を求めるようになります。
本人は問題を認識していても、意志の力だけではやめることが困難です。
症状
依存症の特徴的な症状として、やめようとしても繰り返してしまう、ほどほどにできないという状態があげられます。行為や物質への執着が強まり、家族や仕事など生活の優先順位が変化します。
また、問題を否認したり、事実を隠すようになったりする(嘘・ごまかし・攻撃的態度など)傾向も見られます。依存症は進行性であり、放置すると依存が深まり、やめることがより困難になっていきます。
考えられる原因
依存症の原因には、脳の報酬系(快楽を感じる神経回路)の変化により、ドーパミン分泌を求める行動が強化されることが関係しています。また、ストレス、不安、孤独感などを一時的に解消しようとする心理的要因も大きく影響します。
アルコール・薬物などの物質による神経伝達異常や、生活リズムの乱れ、社会的孤立など、環境要因の影響も指摘されています。
高次脳機能障害
高次脳機能障害は、交通事故や脳血管障害、感染症などによる脳の損傷によって起こる「認知」や「行動」の障害です。記憶、注意、遂行機能、社会的行動などの認知機能に問題が生じ、日常生活や社会生活に支障をきたします。
主な特性
高次脳機能障害は、外見からは分かりにくい障害であるため、「見えない障害」とも呼ばれます。本人も周囲も障害に気づきにくく、適切な支援を受けるまでに時間がかかることがあります。障害の程度や現れ方は、脳の損傷部位や範囲によって個人差が大きいのが特徴です。
症状
高次脳機能障害の症状は、以下のように多岐にわたります。
- 記憶障害
新しいことを覚えられない、物の置き場所を忘れる、同じ質問を繰り返すなどの症状が見られます。 - 注意障害
集中力が続かない、ぼんやりする、同時に複数の作業ができないといった問題が生じます。 - 遂行機能障害
自分で計画を立てて行動できない、順序立てた行動が苦手、他人の指示がないと動けないなどの困難が現れます。 - 社会的行動障害
感情のコントロールができない、興奮や暴力的行動、自己中心的な言動が増えることがあります。言語・コミュニケーション障害では、言葉が出ない、言い間違える、会話の意図やユーモアを理解できないなどの問題が生じます。 - 失認・失行
見えているのに何であるか分からない、動作の順序が分からなくなるといった症状が見られます。 - 地誌的障害
慣れた場所でも道に迷う、自宅内でトイレに行けなくなるなどの症状が現れます。 - 病識欠如
自分の障害を自覚できず、できるつもりで行動してトラブルを招くこともあります。
考えられる原因
高次脳機能障害の原因は、交通事故、脳出血、脳梗塞、脳炎、低酸素脳症などによる脳損傷です。
特に、前頭葉、側頭葉、頭頂葉など、認知や行動を司る脳領域の損傷によって、さまざまな認知機能障害が生じます。
精神病の受診・治療の流れ

精神的な不調を感じたとき、どのように受診すれば良いのか分からず不安に感じる方も多いでしょう。ここでは、初めて精神科や心療内科を受診する際の流れについて、ステップごとに詳しく解説します。
ストレス症状が長く続く、不調によって日常生活に支障が出ている場合は、自己判断をせずに早めの受診をおすすめします。
ステップ1|予約
受診を希望するクリニックを見つけたら、まずは電話またはWebから予約します。その際、「初診の予約」であることを伝え、聞かれた範囲で現在の悩みや症状を簡単に話しましょう。
精神科や心療内科では、初診は数週間から数か月待ちになることもあるため、早めの予約が安心です。症状が辛いときは、予約時にその旨を伝えると、状況によっては優先的に案内してもらえる場合もあります。
ステップ2|来院~受付~問診表の記載
予約日に病院へ行き、受付で初診であることを伝えて健康保険証を提出します。その後、問診票に症状や生活の状況について記入します。
問診票には、現在の症状、いつごろから症状が始まったか、日常生活への影響、過去の病歴や服薬歴などを記入する欄があります。答えにくい質問は無理に記入しなくても大丈夫です。初診は問診票記入の時間もあるため、診察の15~20分前に到着するのが理想的です。
ステップ3|診察
問診票をもとに医師が症状や生活の様子を丁寧に確認します。初診では治療というよりも、悩みを整理し今後の治療方針を相談する場と考えてください。
医師は、話の内容だけでなく、表情や話し方も含めて総合的に判断します。リラックスして、困っていることや不安に感じていることを素直に伝えることが大切です。言いにくいことがあれば、無理に話す必要はありません。
ステップ4|(必要な場合)検査、診断、治療方針の決定
診察後、医師が必要と判断した場合は身体検査や心理検査を実施します。血液検査や脳波検査などで身体的な異常がないか確認したり、心理検査で認知機能や性格傾向を評価したりすることがあります。
問診と検査結果をもとに、医師が総合的に診断を行います。診断後、症状に合わせて治療方針が決定されます。
治療方法には、薬物治療、カウンセリングなどの精神療法、生活に関するアドバイスなどがあり、患者さんの状態や希望に応じて最適な方法が選択されます。
まとめ
精神病には統合失調症、気分障害、てんかん、依存症、高次脳機能障害など、さまざまな種類があり、それぞれ特徴的な症状と原因があります。
自分の症状がどの疾患に当てはまるのか不安な場合は、自己判断せず早めに専門医を受診することが大切です。適切な診断と治療を受けることで、症状の改善や日常生活の質の向上が期待できます。不調を感じたら、まずは精神科や心療内科に相談してみましょう。
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めぐるファーム編集部
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