ADHDの特性は、仕事選びにおいては弱みではなく、適切な環境で活かせる強みになります。しかし、多くの方が自分に合う職場や働き方が分からず悩んでいるのではないでしょうか。今回は、ADHDの方に向いている仕事と働き方の工夫について解説します。
仕事をする上でのADHDの特性と強み・弱み

ADHDは「注意欠如・多動症」とも呼ばれ、注意し続けることが難しい「不注意」、落ち着きがない「多動性」、思いついたことをすぐ行動に移す「衝動性」といった特性があります。これらの特性は仕事をする上で強みにも弱みにもなるため、まずは自分の特性を正しく理解することが重要です。ここでは、ADHDの強みと弱みについて詳しく見ていきましょう。
ADHDの強み
ADHDの方には、一般的な働き方では見過ごされがちな優れた能力があります。
まず、発想力や創造性が豊かで、さまざまな考えが次々と浮かびやすく、アイデアを豊富に出すことができます。
また、興味のある分野には驚くほど高い集中力を発揮でき、時間を忘れて没頭する「過集中」の状態に入ることもあります。
さらに、人とのコミュニケーションが得意で、初対面の相手とも気軽に話せる社交性を持つ方も多いです。
加えて、思い立ったらすぐ行動に移せる行動力や、迷わず決断できる決断力も強みとなります。大胆な行動や発言が周囲の人を惹きつけ、リーダーシップを発揮する場面もあるでしょう。
ADHDの弱み
ADHDの特性は、職場環境によっては課題となることもあります。
例えば、遅刻してしまう、大事な予定を忘れる、重要な書類をどこかに置き忘れるといったミスが起こることがあります。
また、注意力が散漫になりやすく集中力が持続しないため、ケアレスミスが増えやすい傾向もみられます。興味のない分野には集中して取り組めず、関心を持つことが困難な場合もあります。
さらに、マルチタスクが苦手で、複数の作業を同時に進めると混乱しやすい方も少なくありません。計画を立てることや優先順位をつけることが難しいため、見立てが甘くなってしまうこともあります。
加えて、思いついたことをそのまま口にしてしまい、周囲を驚かせたり戸惑わせたりするケースもあります。
ADHDの方に向いている仕事

ADHDの方には、自身の好きな分野や興味のある分野の中で、発想力・想像力、集中力、コミュニケーション能力、行動力・決断力を発揮できる仕事が向いています。ここでは、ADHDの特性を強みとして活かせる具体的な職種について解説します。
行動力を発揮できる仕事
衝動性が強い方は、思い立ったらすぐ行動できることが大きな強みになります。
イベントスタッフやツアーコンダクターは、その場その場で臨機応変に対応する必要があり、行動力が求められます。営業職では、即時の対応力や決断力が評価され、顧客との関係構築にもコミュニケーション能力が活かせます。
また、教育・育成の仕事では、子どもや新人の指導において、エネルギッシュな対応が求められる場面が多く、ADHDの方の活発さが強みとなるでしょう。
想像力を生かせる仕事
意外性に富むアイデアを自由な発想で形にできる仕事は、ADHDの方に最適です。
特に多動性が強い方の中には、次々とアイデアが浮かぶ「脳内多動」とも呼ばれる特性を持つ人がいます。
デザイナー、ライター、動画編集者などのクリエイティブ系の仕事では、豊かな発想力が直接的に成果につながります。広告・マーケティング分野における企画職、コピーライター、SNS運用では、斬新なアイデアが求められます。
また、研究・開発の仕事では、新しいアイデアを生み出す創造性が評価されるでしょう。
人と話す仕事
初対面の人と話すことが得意である、社交的な性格のADHDの方は、接客に関わる仕事が向いています。
カフェスタッフ、ホテルフロント、販売員などの接客業では、人との会話が仕事の中心となり、コミュニケーション能力が活かせます。カウンセラーやコーチング職では、相手の話を聞き、共感する力が求められます。
カスタマーサポートやコールセンターの仕事でも、人と話すことが好きな方には向いているでしょう。
過集中を活かせる仕事
特定の分野においては、時間を忘れるほど没頭できる「過集中」の特性を持つ方もいます。
ITエンジニアやプログラマーは、コードを書くことに集中でき、問題解決に没頭できる環境があります。職人・技術職における、ものづくりや研究開発では、ひとつの作業に深く集中することが求められます。
ゲームクリエイターや映像編集の仕事も、好きな分野であれば過集中の特性を最大限に活かせるでしょう。
ADHDの方に向かない仕事

ADHDの特性が業務上の困難に結びつきやすい仕事もあります。向かない仕事を理解しておくことで、職場選びの失敗を防ぎ、自分に合った環境を見つけやすくなります。
細かい正確性が求められる仕事
細かい照合作業やミスが許されない仕事は、不注意の特性がある方にとって負担に感じやすいです。
例えばデータ入力では、長時間にわたって正確な作業を続けなければなりません。
また、精密機械の組み立て作業では、わずかなミスが製品の品質に影響するため、常に高い集中力と正確さが求められます。
業務に集中して取り組む仕事
ADHDの特性として、単調な繰り返し作業では集中力が途切れやすい傾向があります。
例えば、工場のライン作業では同じ工程を繰り返すことが多く、変化が少ないため集中力を保つのが難しくなります。
また、単一業務を終日続ける事務職も、注意の持続が求められるため向かないケースがあります。
短時間・短納期の仕事
時間に追われる環境では、焦りやストレスからミスが増えやすくなります。
例えば、校正・校閲の仕事は、締め切りまでに誤字・脱字を確認する必要があり、正確さとスピードの両立が欠かせません。
同様に、経理・会計職では締め日などの繁忙期に短時間で正確な処理を求められるため、ADHDの方には大きな負担となることがあります。
細かい手順やチェック項目が多い仕事
ADHDの方は、いわゆる「ヌケ・モレ」が起きやすいため、手順が複雑な業務はミスにつながりやすい傾向があります。
例えば、テストエンジニアの仕事では、マニュアルに沿って動作確認し、バグを見つける必要があります。細かいチェックを続ける作業が多く、注意力を維持するのが難しい場合があります。
また、品質管理の文書作成や監査対応なども、手順が多く確認項目が細かいため、精神的な負担が大きくなりやすい業務です。
ADHDの方ができる働き方の工夫・ポイント
ADHDの特性を理解した上で、働き方を工夫することで、より快適に仕事を続けることができます。ここでは、実践的な工夫やポイントを紹介します。
自由度の高い働き方を選ぶ
フレックスタイム制や裁量労働制、フリーランスなど、自分の体調や集中できる時間に合わせやすい働き方を検討しましょう。
決められた時間に出社することが難しい方でも、フレックスタイム制なら自分のペースで働けます。
また、フリーランスとして働くことで、自分が最も集中できる時間帯に仕事をすることが可能になります。
マルチタスクを避ける
一度に複数の仕事を抱えず、ひとつずつ完了させてから次の仕事に取り掛かることが重要です。
やるべきことを細かくToDoリスト化し、完了したら線を引いて消すことで、達成感を得やすくなります。タスクを小さく分割することで、作業に集中しやすくなり、モチベーションも維持できます。
集中できる環境づくり
周囲の刺激を減らすことで、集中力を維持しやすくなります。
パーテーションを設置したり、ノイズキャンセリングイヤホンを使用したりして、視覚的・聴覚的な刺激を減らしましょう。
また、デスク周りを片付け、気が散る要因を減らすことも効果的です。整理整頓された環境は、作業に集中しやすい状態を作り出します。
苦手な部分を補う
スケジュール管理や経理など、苦手な業務をサポートしてくれるパートナーや外部サービスを活用しましょう。
一人ですべてを抱え込まず、苦手な部分は他者に任せることで、自分の強みを活かせる業務に集中できます。
また、スマートフォンのリマインダー機能やスケジュール管理アプリを活用すれば、忘れ物や予定の見落としを防げます。
まとめ
ADHDの特性は、適切な仕事と環境を選ぶことで大きな強みとなります。自分の特性を理解し、強みを活かせる職種を選び、働き方を工夫することで、長く安心して働くことができるでしょう。
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めぐるファーム編集部
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