障害年金には基礎・厚生・手当金の3種類があり、どれを受け取れるかで支給額や仕組みが大きく変わります。特に初診日や加入状況は誤解しやすいポイントです。そこで今回は、障害年金の種類ごとの特徴と、2025年度の最新支給額、さらに請求手続きの流れまでわかりやすく解説します。
障害年金の種類詳細

障害年金は、「障害基礎年金」「障害厚生年金」「障害手当金」の3つに分かれています。どの制度に加入していたか、初診日がいつかによって受け取れる金額が異なるため、まずは各制度の仕組みを理解しておきましょう。
障害基礎年金詳細
障害基礎年金は、国民年金に加入している方や、20歳前に発症した傷病によって障害を負った方が対象です。自営業者・無職・専業主婦(夫)などの「第1号被保険者」がこれに該当します。等級は1級と2級の2段階に分かれています。
制度の特徴は、加入状況にかかわらず支給額が一律である点です。支給額は等級および子の加算の有無によって決まります。
また、20歳前の傷病であっても支給額に違いはなく、生活の基盤を支える年金として位置づけられています。
障害厚生年金詳細
障害厚生年金は、会社員や公務員など、厚生年金に加入している期間中に発症した病気やケガによって障害を負った場合に支給されます。等級は1級から3級までの3段階で、障害基礎年金よりも区分が細かくなっています。
最大の特徴は「報酬比例」である点です。支給額は、過去の収入(平均標準報酬額)や加入期間に応じて変動します。そのため、同じ障害等級であっても、個人の働き方や収入により受け取る年金額が異なります。
障害手当金詳細
障害手当金は、年金ではなく一時金として支給される制度です。障害厚生年金の3級には該当しないものの、一定の障害が残った場合に、症状が固定した時点で支給されます。
比較的軽度な障害が対象で、「長期的な生活保障」というよりも「治療終了時の支援」を目的とした給付です。
出典:日本年金機構「障害年金」
【2025年度】障害年金の支給額

2025年度(令和7年度)の障害年金は、物価上昇に伴い前年度から1.9%引き上げられました。基礎年金・厚生年金・上乗せ給付金の順に、具体的な金額をみていきましょう。
出典:日本年金機構「障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額」
障害基礎年金の金額詳細
障害基礎年金の金額は毎年決まっており、2025年度は以下の通りです。子の加算がある場合、生活補助として大きな支えとなります。
※子の加算は、受給者によって生計を維持されている子どもがいる場合に適用されます。ここでの「子」とは、以下のいずれかに該当する方を指します。
- 18歳到達年度の末日(3月31日)までの子
- 20歳未満で障害等級1級または2級に該当する子
1級
1,039,625円 + 子の加算
(昭和31年4月1日以前生まれの方:1,036,625円)
2級
831,700円 + 子の加算
(昭和31年4月1日以前生まれの方:829,300円)
子の加算額
- 第1子・第2子:1人につき239,300円
- 第3子以降:1人につき79,800円
詳細は、日本年金機構の案内をご覧ください。
>>障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額
障害厚生年金の金額詳細
障害厚生年金は収入に応じて変動しますが、計算式の基本形は次の通りです。
1級
(報酬比例の年金額 × 1.25)+ 配偶者の加給年金額(239,300円)
2級
(報酬比例の年金額)+ 配偶者の加給年金額(239,300円)
3級
報酬比例の年金額
※最低保障額:623,800円(昭和31年4月1日以前生まれの方は622,000円)
報酬比例の年金額の詳細は、日本年金機構の案内をご覧ください。
>>報酬比例部分
障害年金生活者支援給付金(上乗せ給付金)詳細
生活が困難な障害年金受給者に対し、追加で支給されるのが「生活者支援給付金」です。
- 1級:6,813円(月額)
- 2級:5,450円(月額)
詳細は、日本年金機構の案内をご覧ください。
>>障害年金生活者支援給付金の概要
障害年金の請求手続きの流れ

障害年金の請求には複雑な手続きが伴うため、年金事務所や社会保険労務士に相談しながら進めると安心です。
ここでは、障害年金を請求する際の一般的な流れを解説します。
1. 相談・準備
障害年金の請求は、まず自身の状況を把握し、必要な準備を進めることから始まります。
●初診日の確認
障害の原因となった病気・ケガで最初に医療機関を受診した日が「初診日」です。
この日を基準に、以下が判断されます。
- 障害基礎年金か障害厚生年金か
- 保険料の納付要件を満たしているか
●保険料納付要件の確認
初診日の前日時点で、一定期間以上の年金保険料を納めている必要があります。未納期間が長いと請求ができない場合があるため、早めに年金事務所で確認しましょう。
●障害認定日の確認
初診日から原則1年6か月後、または症状が固定した日が「障害認定日」です。この日の状態によって障害等級が判断されます。
●請求方法(認定日請求・事後重症請求)を決める
- 認定日請求:障害認定日時点で基準を満たしていた場合
- 事後重症請求:認定日時点では満たしていなかったが、その後悪化して基準に達した場合
自分がどちらに当てはまるのかは、年金事務所で相談すると安心です。
●請求書類を入手する
日本年金機構のWebサイトからダウンロードするか、最寄りの年金事務所で受け取ります。
2. 診断書の作成を依頼する
障害年金の審査で最も重要な書類が「診断書」です。医師が作成し、障害の状態を客観的に示す根拠となります。
●初診医療機関には「受診状況等証明書」を依頼する
初診日を証明する書類です。もし医療機関がすでに閉院している場合は、年金事務所に相談しましょう。
●現在の主治医に障害年金用の診断書を作成してもらう
以下の点を具体的に伝えると、正確な診断書を作成することが可能です。
- 日常生活で困っていること
- 身体機能や精神状態の具体的な状況
- 仕事・家事の可否や程度
●作成期間と費用
- 作成期間:2~6週間
- 費用:5,000~10,000円程度
3. その他の必要書類を準備・作成する
診断書以外にも、さまざまな資料の提出が必要です。
●病歴・就労状況等申立書
初診日から現在までの症状の変化や生活状況を記載します。外出頻度、就労の有無、日常生活での困難さなどを具体的に記入すると、障害の状態がより伝わりやすくなります。
●戸籍謄本・住民票など
家族構成や扶養関係により必要書類が異なります。扶養親族の有無は年金額に影響することもあります。
●その他準備する書類の例
- 年金手帳
- 本人名義の通帳
- 配偶者・子の所得証明書
- 検査資料(レントゲン、検査結果など)
- 障害者手帳(持っている場合)
4. 請求書類を提出する
必要書類がすべて揃ったら、提出に進みます。提出先は年金の種類によって異なります。
- 障害基礎年金:市区町村役場の年金窓口
- 障害厚生年金:最寄りの年金事務所または街角の年金相談センター
また、提出書類の控えを手元に残しておくと、後の問い合わせや不備対応に役立ちます。
5. 審査・結果の通知
書類を提出すると、日本年金機構によって審査が行われます。審査期間は通常3か月~3か月半程度とされていますが、内容や状況によってはさらに時間がかかる場合もあります。
審査の結果、受給が認められた場合は「年金証書」が自宅に郵送されます。
一方で、支給が認められなかった場合には「不支給決定通知書」が届き、不支給となった理由も記載されています。
6. 受給開始
審査に通過すると、いよいよ障害年金の支給が始まります。
●年金の振込
審査を通過すると、障害年金の支給が始まります。年金は、申請時に指定した口座へ、原則として偶数月に2か月分ずつ定期的に振り込まれます。
なお、実際に受け取れる年金額は、障害等級や保険加入期間、扶養家族の有無などによって異なります。支給額を事前に把握しておくことで、家計の見通しが立てやすくなります。
出典:
日本年金機構「障害基礎年金を受けられるとき」
日本年金機構「障害厚生年金を受けられるとき」
まとめ
障害年金は、等級や加入制度によって受け取れる金額が大きく変わります。正しい情報を知ることで、生活設計にも安心が生まれます。手続きに不安を感じる場合は、専門家へ相談しながら進めていきましょう。
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著者プロフィール
めぐるファーム編集部
障害者の雇用が少しでも促進されるよう、企業担当者が抱いている悩みや課題が解決できるようなコンテンツを、社内労務チームの協力も得ながら提供しています。