大人のアスペルガー症候群とは?仕事での困りごとと対策を紹介

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アスペルガー症候群(自閉スペクトラム症)とは、発達障害の一種です。社会性や対人コミュニケーションスキルなどに障害が出るという特性があります。

近年、発達障害への理解が広まったことで、幼少期に医療機関を受診し、早期に療育を開始されるケースが増えています。その一方で、知能や言語の発達に遅れが見られないことから、診断を受けないまま成長され、大人になってから職場での人間関係や業務において困難を抱えている方も少なくありません。

「自分はアスペルガー症候群なのかも」と悩んでいる方もいるのではないでしょうか。また、職場にアスペルガー症候群と思われる方がおり、適切に対応するためにも理解を深めたいと考えている方もいるでしょう。

そこで今回は、大人のアスペルガー症候群に見られる特徴や、よくある仕事での困りごとと対策について解説します。

大人のアスペルガー症候群に見られる特徴

顔をうずめている画像

アスペルガー症候群は、現在では「自閉スペクトラム症(ASD)」と呼ばれています。主な特性は、以下の3つに分類されます。

  • 対人コミュニケーションが苦手である
  • 興味・こだわりが限定されている
  • 感覚の偏り(過敏さ・鈍感さ)がある

先天性の発達障害であり、大人になっても特性は基本的に変わりません。

ただし、子どものころには許容されていた行動であっても、成人後の社会生活、特に職場では問題視されやすくなる傾向があります。

なかでも就労の場では、これらの特性に起因したトラブルが起こりやすく、「なぜうまくいかないのか」と本人が悩みを抱えることも少なくありません。

こうした状況に対応するには、本人だけでなく支援する側も特性への理解を深めることが重要です。

ここでは、これら3つの特性について詳しく解説します。

対人関係・コミュニケーションが難しい

アスペルガー症候群の方は、対人関係や他者とのコミュニケーションが苦手です。具体的には、次のようなことがあげられます。

相手の気持ちを推測するのが苦手

行間を読むのが苦手で、比喩表現や皮肉、冗談を理解するのが困難です。言葉通りに受け取ってしまい、真意を汲み取れず、誤解が生じる場合があります。

会話が一方的

相手の表情や雰囲気を読み取るのが難しく、一方的に自分の話をしてしまう傾向にあります。そのため、相手を立てながらの会話や雑談が得意ではありません。

共感することが難しい

他者の気持ちを理解する、共感することも苦手であるため、対人関係がうまくいかなかったり、トラブルが生じたりしやすい傾向にあります。

マルチタスクが苦手である

特定の物事に集中しやすいため、仕事でも高い集中力を発揮できます。しかし、途中で切り替えるのが難しいため、複数の作業を同時に処理するマルチタスクは苦手です。

興味・こだわりが限定されている

特定の物事にだけ興味をもつ、強いこだわりがあるなども、アスペルガー症候群の特性です。具体的には、以下のようなことがあげられます。

特定のものへの強い興味

歴史、鉄道、地図、データ整理など、特定の分野に強い興味を持ち、深く知識を掘り下げる傾向があります。その一方で、関心のない分野や業務においては集中力の維持が難しくなることもあります。

ルーティンへの強いこだわり

決まった手順やルールを好む傾向があり、「この作業はこの順番で行う」といったルーティンを重視する傾向があります。

このこだわりが業務にフィットすれば力を発揮できますが、手順の急な変更や予期せぬスケジュール変更には混乱や不安を感じる場合があります。

こだわりが強い

こだわりの強さは、持ち物や日常の習慣にも現れることがあります。例えば、特定の素材やデザインの服を繰り返し着る、洗濯物の干し方に細かな基準があるなど、見た目や感触への独自のこだわりが表れることがあります。

感覚の偏りがある

アスペルガー症候群の特性として、感覚が過敏すぎる、あるいは鈍感すぎるなど偏りがみられるということもあげられます。

個人によって現れ方は異なり、同時に過敏さと鈍感さの両方を持ち合わせている場合も少なくありません。

感覚過敏

感覚過敏の傾向がある場合、特定の音、光、におい、味、触感などに対して強い不快感を抱くことがあります。例えば、オフィス内の雑音や照明、他人の香水のにおいなどが気になり、業務への集中が難しくなるケースも見られます。

感覚鈍感

感覚が鈍い場合には、暑さや寒さ、痛みなどの身体的感覚に気づきにくいことがあります。

また、聴覚が鈍感な場合は、周囲の呼びかけや会話に反応しづらい場合もあり、指示の聞き取りや会話のキャッチボールに支障が生じることもあります。

アスペルガー症候群でよくある仕事での困りごと・対策

悩んでいる画像

アスペルガー症候群の方は、その特性から仕事上のコミュニケーションやタスク管理などの課題を抱えがちです。

ここでは、アスペルガー症候群の方のよくある仕事での困りごとと、自分でできる対策について解説します。

コミュニケーションが難しいケース

アスペルガー症候群の方は、人の言葉の意図や表情、感情を読み取るのが不得意です。

「良い感じに進めて」など抽象的・婉曲的な指示が理解しづらかったり、相手の表情や雰囲気を読んでの会話などができなかったりなど、コミュニケーションの問題が生じやすい傾向にあります。

自分でできる取り組み

  • 指示や業務に必要な情報は、テキストや図などで視覚的・具体的に伝えるようお願いする
  • 人に合わせた臨機応変な対応が難しいため、指示を出す人を固定してもらう

タスク管理と優先順位付けの困難なケース

アスペルガー症候群の方は、複数のタスクを同時進行したり、優先順位をつけて効率的に進めたりするのが苦手です。

また、1つのことに集中しすぎて、他にやるべきことを忘れてしまうこともあります。そのため、期限に間に合わないなどのトラブルが起こりがちです。

自分でできる取り組み

  • アプリを活用するなどして割り振られたタスクと期限を「見える化」し、優先順位を明確にする
  • 締め切りに間に合うように重要なタスクから着手する
  • アラームを鳴らすなどして集中する時間を決める
  • 適宜休憩をはさみ、苦手な作業でも集中力が続くよう工夫する

感覚の過敏や鈍感が生じるケース

感覚過敏・鈍感が原因で、オフィス内が騒がしいと感じたり、匂いが気になると感じたりして業務に集中できない場合もあります。

また、周囲の状況が把握できない、呼びかけに気づかないなどで業務の進行や同僚とのコミュニケーションに問題が生じることもあります。

自分でできる取り組み

  • 会社の許可を得て、ノイズキャンセリングイヤホンやイヤーマフ、サングラスなどを使用する
  • 不快感を覚える肌触りの衣服は避けるなどの工夫をする

臨機応変な対応が困難なケース

いつもの業務の手順が変わる、想定外の残業が発生する、会議の時間が変更になるなど、イレギュラーな事態に対応するのが難しいのもアスペルガー症候群の特性です。

臨機応変に対応できないことで、現場が混乱したり周囲と摩擦が生じたりする場合があります。

自分でできる取り組み

  • 予定変更や残業依頼は、できるだけ早く伝えてもらうようお願いする
  • 作業の手順変更などは、理由を理解して段階的に取り組めるよう移行期間を設ける

医療機関に行くべきかの判断基準

診察をしている画像

「自分はアスペルガー症候群かもしれない」と感じていても、医療機関を受診すべきかどうか判断がつかない方も少なくありません。また、「受診するほどのことではない」と考え、相談をためらうケースもあるでしょう。

しかし、仕事や日常生活に支障を感じている場合には、「これくらいは大丈夫」と軽く考えず、早めに専門機関へ相談することが勧められます。

近年の精神医療では、QOL(生活の質)の向上を重視しており、症状の重さにかかわらず早期の対応が推奨されています。

とはいえ、具体的にどのような状態になったら受診すべきかわからない方もいるかもしれません。

ここでは、心療内科などの受診を考える際の判断基準についてご紹介します。

基準・目安のチェックリスト

【心の症状】

  • 落ち込みやすい、イライラしやすい
  • 集中力が続かない
  • 何事にも意欲が湧かない
  • 他者と接する際に、必要以上に緊張したり怖くなったりする

【身体の症状】

  • 頭痛やめまい、肩こりが続いている
  • 動悸や息苦しさを感じる
  • 腹痛や吐き気、下痢などの消化器症状が出ている
  • 疲れやすい
  • 性欲が落ちた

【行動に関する症状】

  • 他者との接触を避けてしまう
  • 身だしなみに気を配れなくなった
  • うまく会話ができない

【食事に関する症状】

  • 食欲が湧かない
  • 食事がとれない
  • やたらと食べてしまう
  • 大量に食べて吐いてしまう
  • 何を食べてもおいしいと思えない

【睡眠に関する症状】

  • なかなか寝つけない
  • 眠りが浅く、何度も目が覚める
  • 予定しているより何時間も前に目が覚めてしまう
  • 少しの音や光で目が覚める
  • 日中も眠気を感じる
  • 長時間寝てしまう

上記以外にも気になる症状がある場合は、心療内科や精神科で相談してみましょう。

まとめ

アスペルガー症候群には、対人コミュニケーションの困難、興味・こだわりの限定、感覚の偏りという3つの特性があります。

職場においては、抽象的な指示の理解やマルチタスク、臨機応変な対応に課題を感じやすい傾向にあります。そのため、視覚的な指示を依頼したり、タスクを見える化したりする工夫が求められます。

ただし、心身の不調や生活への支障を感じている場合は、早めに専門機関へ相談されることをおすすめします。

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