【企業向け】統合失調症の方にしてはいけないこと、必要な配慮とは?

この記事をシェアする

  • x
  • facebook
悩んでいる画像

統合失調症とは、思考や感情がまとまらなくなり、不安感や幻覚、抑うつ、倦怠感など多様な症状が現れる精神疾患です。

適切に治療すれば症状が緩和され、安定した状態で生活できるようになる可能性があります。また、主治医と相談の上で就労できる場合もありますが、周囲の対応によっては症状が悪化するおそれがあるため、企業は受け入れ体制を整えることが重要です。

しかし、統合失調症のある方にどのように対応すべきなのかがわからない方もいるでしょう。そこで今回は、統合失調症のある方を雇用する企業側が知っておきたい、してはいけないことや必要な配慮について解説します。

統合失調症の方にしてはいけないことは?

話している画像

統合失調症の症状を改善し、安定した状態を維持するためには、適切な治療に加えて、周囲の関わり方が非常に重要です。症状の悪化を防ぐためにも、配慮すべき点や避けるべき対応について、あらかじめ理解しておくことが求められます。

ここでは、特に注意が必要な8つの言動について解説します。

症状を批判する

統合失調症のある方に対して、幻覚や妄想といった症状を否定・批判するような対応は控える必要があります。例えば、「気のせいだ」「そんなことはあり得ない」などの言葉は、本人の体験を軽視するものと受け取られかねません。

幻覚や妄想は、他者から見ると非現実的に感じられるかもしれませんが、本人にとっては極めて現実的で切実な体験です。こうした症状を否定されると、孤独感や不信感、絶望感が強まり、回復の妨げとなる可能性があります。

場合によっては、否定や批判をした相手を敵視するようになったり、病識(自分が病気であるという認識)が低下したり、治療への協力が得られにくくなったりすることもあります。

【正しい声かけ・対応の例】

「悪口が聞こえた」と相談を受けたら、「それはつらかったですね。でも私には聞こえなかったよ」と、一度受け止めた上で、事実を穏やかに伝える

本人を批判する

統合失調症は、脳機能の障害によって引き起こされるものであり、性格や価値観、努力の不足が原因ではありません。また、症状の影響で疲れやすくなったり、思考や意思をうまく表現できなかったりすることもあります。

そのような状態に対して、「なぜできないのか」「努力が足りない」「病気を言い訳にするな」といった言葉で批判や非難をすることは避けるべきです。このような対応は、本人の孤立感を深め、症状の悪化や信頼関係の喪失につながるおそれがあります。

【正しい声かけ・対応の例】

  • 「気力が湧かず仕事が手に付かない」といわれたら、「じゃあ元気が出たら手伝ってね」など、責めるのではなくどうしてほしいのかを伝える
  • 「どうすれば良いか一緒に考えましょう」など、協力したい気持ちを伝える

命令口調や威圧的な態度をする

統合失調症のある方は、神経が過敏になったり、強い不安を感じたりしやすい傾向があります。そのため、イライラした態度を見せたり、「これくらいできるだろ」といった威圧的な言動や命令口調で接したりすることは避ける必要があります。

そのような対応は、不安感や恐怖心を悪化させる原因となるだけでなく、反発や指示への拒否、コミュニケーションの断絶といった問題を引き起こすおそれがあります。

【正しい声かけ・対応の例】

  • 指示や依頼は、「○○をお願いします」「○○していただけますか」といった丁寧で協調的な言い回しを用いる
  • 表情や声のトーンにも注意し、落ち着いた態度を保つ
  • 感情的な表現を避け、指摘が必要な場合も冷静に伝える

無視したり、曖昧な言葉で混乱させる

統合失調症のある方は、思考のまとまりにくさや認知機能の影響により、比喩や曖昧な表現を理解することが難しい場合があります。そのため、遠回しな言い方や曖昧な指示は混乱や誤解を招くおそれがあり、避けることが望まれます。

また、接し方に迷うあまり、距離を置いたり極端に遠慮したりすることも、本人の不安感や孤立感を強める原因となります。あくまでも職場の一員として、挨拶や雑談など日常的なコミュニケーションを大切にすることが重要です。

【正しい声かけ・対応の例】

  • 伝える内容は、簡潔かつ具体的に整理し、段階的に伝える
  • 比喩や抽象的な表現は避け、事実を明確に伝えるよう心がける
  • 内容が正しく伝わっているかを確認しながら対話を進める
  • 日常の声かけやあいさつを継続的に行い、関係性を築く

過保護や過干渉になる

2名が話している画像

統合失調症の治療には、周囲の協力が欠かせません。しかし、過度に干渉しすぎると、自己肯定感が得られなくなる、無力感が強くなる、自立できなくなるなどの問題が生じる場合があります。

サポートする側が疲れてしまい、共倒れになるおそれもあるため、適切な距離感を保つことが重要です。

【正しい声かけ・対応の例】

  • 何でもサポートせず、できることは本人に任せる
  • 失敗した場合は責めるのではなく励まして、次からどうすべきかを一緒に考える
  • うまくいった場合は、どこが良かったのかを具体的に褒めて自己肯定感を高める

本人の負担を考えずに、無理に連れ出したり仕事を押し付ける

統合失調症には、幻覚や妄想などの症状が出やすい急性期や、症状が落ち着く回復期などがあります。

急性期や回復期は、慣れない場所や騒がしいところなど、刺激が多い環境がストレスになることがあるため、無理に連れ出したり、仕事を押し付けたりなどしないようにしましょう。

過度な負担をかけると、外部との接触に対する不安や恐怖を増大させたり、混乱やパニックを招いたりするおそれがあります。

【正しい声かけ・対応の例】

  • 本人の気持ちや体調を尊重し、負担がかからない範囲で活動できるようにする
  • 外出など何らかの行動を嫌がる場合は、理由を確認してどうすれば解決できるかを一緒に考える
  • 状態によっては無理に仕事をさせず、治療に専念してもらう

本人が限界を感じても休ませない

心身の限界を超えて業務を続けさせることは、症状の悪化や再発のリスクを高める要因となります。

本人が「これ以上は無理」と訴えている場合には、その意思を尊重し、無理に働かせることは控えましょう。

【正しい声かけ・対応の例】

  • 限界だと訴えている場合は休ませる
  • 限界であることを伝えられなかったり、気づかなかったりする方もいるため、周囲が様子を見つつ適宜声かけする

治療を辞めさせる、強制させる

統合失調症の症状改善・回復には、服薬や通院などの適切な治療が不可欠です。本人の意思や医師の判断を無視して治療を中止させたり、反対に治療を強制したりするのは避けましょう。

本人の主体性を奪うだけではなく、信頼関係が崩れたり、反発を招いたり、こっそりと治療をやめてしまったりするおそれがあります。

【正しい声かけ・対応の例】

  • 治療内容や薬の副作用などについて、サポートする側も理解しておく
  • 治療が必要だと思われる状態の場合は、強制するのではなく本人と話し合う
  • 必要に応じて医師と連携し、治療を続けられるようサポートする

統合失調症の方に必要な5つの配慮

2名が話している画像

統合失調症のある方と職場で関わる際には、不適切な言動を避けるだけでなく、状況に応じた適切な配慮を行うことも重要です。

ここでは、特に職場で求められる5つの配慮について具体的に紹介します。

1.病気への理解を深める

統合失調症のある方を適切に支援するためには、病気に対する正確な理解が不可欠です。どのような症状が現れるのか、どのような支援が有効なのかを把握することで、より適切な対応が可能になります。

信頼性のあるWebサイトや書籍を活用したり、医療・福祉の専門職から情報を得たりすることで、理解を深められます。

2.本人が安心できる環境を整える

統合失調症のある方は、不安を感じやすく、騒がしい環境や人との接触が負担になることがあります。

職場内では、個別スペースを確保する、大きな声を出さない、無理に人と会わせないなど、できるだけ静かで落ち着いた環境を整えるよう配慮しましょう。

安心して業務に取り組める状態を維持することが、安定した就労支援につながります。

3.本人のペースを尊重する

統合失調症には、症状が不安定な時期と落ち着いている時期があり、常に一定のパフォーマンスを維持することは容易ではありません。

そのため、業務においても本人のペースを尊重し、作業に時間がかかっても責めたり過度に介入したりせず、見守ることが大切です。

また、体調が優れない様子が見られる場合には、無理をさせず、「そろそろ休憩をとってみてはどうですか」といった、負担を軽減するような声かけを意識すると良いでしょう。

4.症状が悪化したときの対応を決めておく

統合失調症の症状は個人差が大きく、予期せず悪化することもあります。職場では、症状悪化の兆候を把握するための目安や、悪化が疑われる際の対応方針について、あらかじめ関係者間で話し合い、共有しておくことが望まれます。

なお、治療を強制するような対応は控える必要があります。普段と様子が異なる場合には、本人の状態に配慮した声かけや、早退・休養を提案するなど、無理のない範囲での対応にとどめることが大切です。

5.合理的配慮の内容をすり合わせる

企業には、精神疾患や身体障害などを抱える従業員に対して、合理的配慮を提供する義務があります。合理的配慮とは、障害によって就労に制限のある方が働きやすい環境を整えることで、障害者手帳の有無にかかわらず適用されます。

統合失調症のある従業員がいる場合には、症状の特性や困りごとに応じて、企業側に過度な負担がかからない範囲で就労環境を調整することが求められます。例えば、勤務ペースや出勤時間を体調に合わせて柔軟に対応することなどがあげられます。

合理的配慮の内容については、入社時にすり合わせを行うことが基本ですが、入社後も体調や職場環境の変化に応じて、適宜見直しを行うことが重要です。

まとめ

統合失調症は、心身に負荷がかかると症状の悪化・再発のリスクが高まる疾患です。どのような疾患なのかの理解を深め、適切に対処できるようにしておきましょう。

障害者雇用における配慮や環境整備にお悩みの場合は、「めぐるファーム」にご相談ください。めぐるファームでは、障害のある方々に農業を通じて就労やスキルアップの機会を提供しています。

企業の障害者雇用の法定雇用率達成のサポートも行っていますので、まずはお気軽にお問い合わせください。

Profile

著者プロフィール

めぐるファーム編集部

障害者の雇用が少しでも促進されるよう、企業担当者が抱いている悩みや課題が解決できるようなコンテンツを、社内労務チームの協力も得ながら提供しています。

まずはお気軽にご相談ください。

提案書・見学・導入のご質問まで、専任スタッフが丁寧にご対応します。

年末年始休業日のお知らせ

めぐるファームは下記日程でお休みをいただきます
2025/12/30(火)~2026/1/4(日)まで
※2026年1月5日(月)より通常営業させていただきます。

「障害者雇用めぐるメディア」 は、株式会社NEXT ONEが運営する障害者雇用支援事業のメディアサイトです。
働くことは、誰かの役に立つこと。そして、自分自身を誇りに思うこと。
私たちは、障害のある方が自分らしく働ける環境を広げ、
雇用を支える企業や支援者とともに、持続可能な社会の実現を目指します。
このメディアでは、支援の現場、当事者の声、そして雇用のヒントを発信し、
すべての「はたらく」にあたたかいつながりを届けていきます。

Support work. Grow together.