心に大きな負担がかかって不調が現れているときに、心療内科を受診すると症状悪化を防いだり、症状が改善したりする場合があります。しかし、心療内科がどのような場所なのか、どんなときに受診すれば良いのかわからない方もいるでしょう。
そこで今回は、心療内科の特徴や精神科との違い、受診すべきサインなどについて解説します。
心療内科とは?

心療内科とは、精神的なストレスや心理的な負担が原因で身体に不調が現れた場合に対応する、専門的な診療科です。
具体的には、精神的な要因によって引き起こされる頭痛やめまい、吐き気や腹痛、下痢などの消化器症状、強い動悸や血圧上昇、喘息などの身体的症状に対する診療を行います。
腹痛で消化器内科を受診するなど、症状に応じた専門科で検査を受けても、これといった問題が見当たらなかったことはないでしょうか。このような場合に心療内科を受診すると、症状の緩和・改善ができる可能性があります。
心療内科と精神科の違い
心療内科と混同されがちな診療科として「精神科」があります。ここでは、精神科とはどのような診療科なのか、心療内科と精神科のどちらを受診すべきか迷った場合どうすれば良いかを解説します。
精神科とは
心療内科は心理的要因で発生した身体の不調を診るのに対し、精神科では心に生じる症状や精神疾患、それに伴う行動や認知の変化などを診るのが特徴です。
例えば、以下のような症状は精神科の治療対象です。
- 気分の落ち込み
- イライラ
- 集中力の低下
- 希死念慮(死にたい、消えたいなどの思考)
- 感情の動きの消失
- 不眠や過眠などの睡眠症状
- 幻聴
- 幻覚 など
精神疾患としては、次のようなものがあります。
- うつ病
- 躁うつ病
- パニック障害
- 強迫性障害
- 統合失調症
- PTSD など
そのほか、もの忘れや強いこだわりなどの症状がみられる認知症も、精神科で診てもらえます。
心療内科と精神科、迷った場合の判断はどうする?
心療内科と精神科に違いはあるものの、身体と心の両方に症状が出ている場合、どちらを受診すべきか迷うこともあるでしょう。このような場合は、心療内科と精神科のどちらにも対応している医療機関を受診するのがおすすめです。
医師に悩みや症状を伝えれば、心療内科と精神科のどちらが適しているかを判断してもらえます。その時々の状態に応じて、院内で臨機応変に対応してもらえるのもメリットです。
心療内科で診る主な症状

今の自分の症状で、心療内科を受診しても良いのか悩む方もいるのではないでしょうか。そこで、心療内科が診療している主な症状を、心・身体・食事・睡眠に分けて解説します。
精神的な症状
心療内科の診療の対象となる精神的な症状として、次のようなものがあります。
- 憂うつな状態が続いている
- 感情の起伏が激しい
- 些細なことで落ち込んだり悲しい気持ちになったりする
- すぐにイライラしてしまう
- 家事や仕事など、やるべきことがあるのに気力が湧かない
- 集中力が続かない
- 将来に対する不安を感じる
- 趣味が楽しめない
- 「消えたい」などと思うことがある など
身体的な症状
心療内科の診療の対象となる身体的な症状として、以下のようなものがあります。
- すぐに疲れてしまう
- 休息をとっても疲れが取れない
- 頭痛やめまいがする
- 動悸や息切れを起こす
- 肩こりなどの不調が続いている
- 公共の場に出ると緊張したり吐き気がしたりする
- 腹痛や下痢など、原因不明の消化器症状が出ている
- 体重が急に増えた、または減った
- 性欲が著しく減退している など
食欲に現れる症状
食欲に関して以下のような症状が出ている場合も、心療内科の診療の対象となります。
- 食欲が湧かない
- 何を食べてもおいしいと思えない
- 喉や胸が詰まっている感覚があり食事が摂れない
- 必要以上に食べてしまう
- 食べた後に吐いてしまう など
睡眠に現れる症状
睡眠について次のような症状が出ているときも、心療内科の診療の対象となります。
- 寝つきが悪い
- 寝たいのに目がさえて眠れない
- 夜中に何度も目が覚めて熟睡できない
- 必要以上に朝早く目が覚めてしまう
- 些細な光や音で起きてしまう
- 起床時にぐっすり眠れた感じがしない
- 日中に眠気を感じる
- 常に眠気があり、必要以上に寝てしまう など
心療内科の初診の流れ

これまで心療内科を受診したことがない場合、どのような流れで受診すれば良いのか分からず、不安を感じることもあるかもしれません。
ここでは、心療内科を初めて受診する際の一般的な流れについて、予約から診察までの各ステップを順を追って解説します。
予約する
心療内科は予約制を採用していることが多いため、受診を希望する場合は事前に予約を行う必要があります。予約方法は他の診療科と同様で、クリニックに電話をかけ、初診であることや現在の症状について問診に応じる形で対応します。
近年では、Web予約やオンライン診療に対応している医療機関も増えています。電話や対面でのコミュニケーションに不安を感じる方にとっては、こうした選択肢が利用しやすい場合もあります。
なお、心療内科は初診の予約が数か月先になることもあるため、できるだけ早めに予約を行うことが推奨されます。オンライン診療の場合は、対面よりも比較的早く予約が取れるケースもあります。
問診表の記入をする
予約した日時にクリニックに出向いたら、まず問診票の記入を求められます。問診票の内容はクリニックによって異なりますが、次のような内容である場合が多いでしょう。
- 今悩んでいることや症状について(選択式または自由記入)
- その悩み・症状での受診歴
- 悩み・症状の原因と考えられること
- これまでの病歴や服用した薬について
- 生活状況(食事や睡眠、飲酒・喫煙の有無など)
- 家族関係(家族構成や近親者に精神疾患の方がいるかなど)
問診票にはできるだけ細かく答えたほうがより正確な診断につながりますが、答えたくない質問については記入する必要はありません。
なお、Web予約の場合は、予約時にWeb問診表を記入するよう案内される場合がありますが、内容はクリニックで書く問診票と同じです。
診察を受ける
問診票の記入が終わったら、いよいよ診察に進みます。診察では、医師に現在の悩みや気になることを率直に伝えることが大切です。たとえ話しづらい内容や些細なことでも、遠慮せず相談しましょう。
心療内科では、他の診療科よりも初診の時間が長めに確保されているのが一般的です。通常は30~60分ほどの時間が設けられているため、焦る必要はありません。
可能であれば、現在の悩みや症状が起きたきっかけ、自分の考えなどをあらかじめメモにまとめておくと、診察がスムーズに進みやすくなります。
必要に応じて検査がある
診察の結果、医師が必要と判断した場合には、検査を受けることがあります。主な検査は次の2種類です。
- 身体的な検査:血液検査・心電図などを通して、身体的な疾患の有無を調べる
- 心理検査:質疑応答や道具を用いた検査によって、心理的な状態を把握する
なお、検査は患者本人の同意を得た上で行われるものであり、無理に検査されることはありません。
会計が案内される
診察や検査が終了した後は、待合室で会計の案内を受け、料金を支払います。
心療内科の初診料の目安は、保険適用(3割負担)で2,500~5,000円程度です。検査なしの場合は2,500円程度、検査が行われた場合は5,000円程度と考えておくと良いでしょう。
また、心療内科の初診時には、他の診療科と同様に初診料が加算されるため、再診時に比べて費用が高くなる傾向があります。
心療内科を受診すべきサイン
心療内科にあまりなじみがなく、「どのようなタイミングで受診すべきか」と迷う方も少なくありません。受診の判断に迷った場合でも、前述の「心療内科で診る主な症状」に一つでも当てはまる項目があれば、受診を検討して差し支えありません。
特に、気分の落ち込みが続いている場合や、日常生活に支障をきたすほど意欲の低下がみられる場合は、早めの受診が望ましいとされています。
心の不調も早期に対応することで回復しやすくなるため、「我慢すべきかもしれない」とためらわず、専門機関の受診を選択肢のひとつとして考えてみてください。
まとめ
心療内科は、精神的なストレスや心理的な負担が原因で身体的な症状が現れている場合に対応する診療科です。精神疾患や心理的問題が主な症状である場合には、精神科の診療が適していることもありますが、実際の受診時には医師が症状に応じて適切な診療科を案内します。
症状が悪化する前に適切な対応を取ることが重要です。判断に迷う場合でも、一人で抱え込まず、早めに医療機関へ相談しましょう。
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めぐるファーム編集部
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