障害者手帳は、障害のある方が各種支援やサービスを受けるための公的な証明書です。手帳を所持することで多くのメリットがある一方、いくつか注意点もあるため、制度の内容をしっかり理解しておくことが大切です。今回は、障害者手帳を所持するメリットと注意点を解説します。
障害者手帳を所持するメリット

まずは、障害者手帳を所持するメリットを3つ解説します。
障害者雇用へ応募できる
障害者手帳を所持するメリットのひとつは、「障害者雇用枠」への応募が可能になることです。
障害者雇用枠とは、障害のある方を対象とした特別な採用枠のことを指します。障害者雇用枠で就職すると、本人の状況や特性に配慮しながら選考や配属先を決定してもらえるのが特徴です。
なお、障害者手帳を所持した後でも、障害の有無にかかわらず誰でも応募できる「一般雇用枠」を選択することもできます。自分の希望や状況に合わせて就職活動の選択肢が広がります。
障害者手帳を所持すべきかどうか、また障害者雇用と一般雇用のどちらで就職するのが自分に合っているのか迷う場合は、就労支援を行っている専門機関に相談することをおすすめします。
生活に関わる料金の割引や助成を受けられる
障害者手帳を所持すると、日常生活にかかるさまざまな費用について割引や助成制度を利用できます。自治体や事業者ごとに助成内容が異なりますが、手帳を持つことで経済的な負担を軽減できるのが大きなメリットです。
例えば、医療費の面では、自立支援医療費制度や重度障害者・高齢重度障害者医療費の助成など、障害の程度や所得に応じて自己負担が軽減される仕組みがあります。
公共料金についても、水道料金の割引を実施している自治体があるほか、障害者向けの割引プランを提供している携帯電話会社もあります。NHK受信料も、一定の条件を満たせば割引が適用されます。
そのほか、映画館や美術館、動物園、公園、テーマパークといった公共施設やレジャー施設でも、入場料が割引になることがあります。交通機関では、電車やバスの運賃割引が適用されることもあり、通院や外出時の負担が軽減するでしょう。
さらに、身体障害者手帳を持っている方は、日常生活や移動に必要な補装具(歩行器、義手・義足、補聴器など)の購入費用についても助成を受けられます。
税金の負担が軽減される
さまざまな税金の負担が軽減されるのも、障害者手帳を所持するメリットのひとつです。代表的なものとして、住民税や所得税、相続税などで「障害者控除」を受けられる制度があります。
障害者控除は、障害のあるご本人だけでなく、同居の家族などに障害のある方がいる場合も対象となります。具体的には、障害者1人につき27万円(特別障害者の場合は40万円)が所得から引かれ、その分、納める税金が軽減される仕組みです。
また、自動車税や軽自動車税についても、税金の減免や免除の制度が設けられている場合があります。自動車税・軽自動車税は地方税にあたるため、実際の内容や手続きは都道府県や市区町村ごとに異なります。
対象となる障害の程度や、申請に必要な条件・書類なども自治体によって違いがあるため、自治体の窓口や公式ホームページで確認してみましょう。
障害者手帳を所持する際の注意点

障害者手帳を所持すること自体に大きなデメリットはありませんが、申請時やその後に知っておくべき注意点があります。
ここでは、障害者手帳を所持する際の注意点を解説します。
交付まで時間がかかる
障害者手帳を申請してから実際に交付されるまでには、ある程度の時間がかかります。一般的な目安として、身体障害者手帳は1か月程度、精神障害者保健福祉手帳は新規申請で2か月程度、療育手帳は2か月~2か月半程度かかるとされています。
なお、申請から交付までの期間は、申請先の自治体や手帳の種類によって異なる場合があります。
また、申請内容に基づいて追加の調査や書類確認が必要と判断された場合は、さらに時間を要することもあります。障害者手帳の利用予定がある場合は、スケジュールに余裕をもって申請しましょう。
費用と手間がかかる
障害者手帳を発行する際は診断書の提出が必要なため、医療機関を受診した上で、数千円程度の発行手数料を支払う必要があります。
特に、精神障害者保健福祉手帳の場合は、2年ごとに手帳の更新手続きが必要となり、そのたびに新たな診断書を提出しなければなりません。
手帳を継続利用するには、2年ごとに医療機関を受診して診断書をもらう必要があります。
就職する際に雇用契約内容の確認が必要となる
一般的に、障害者手帳を持っていることを就職先に必ず伝えなければならないという決まりはありません。
ただし、一般雇用枠で採用された場合でも、雇用契約の内容によっては、障害者手帳の所持を報告しなかったことで契約違反とみなされるリスクもあります。
そのため、障害者手帳のことを伝えずに就職を考えている場合は、応募先の求人情報や雇用契約の内容をよく確認しておくことが大切です。
障害者手帳の所持に関するQ&A

最後に、障害者手帳の所持に関して、よくある3つの疑問について解説します。
障害者手帳を持っていても、生命保険に入れる?
障害者手帳を所持していても、審査を通過すれば生命保険への加入は可能です。
ただし、持病がある場合や、うつ病・ダウン症・適応障害などの一部の疾患については、審査が厳しくなったり、保険料が割高になったりすることもあります。
なお、生命保険に申し込む際は、現在の健康状態を正直に申告する「告知義務」があり、診断名や治療内容、治療期間、服用中の薬などを申告する必要があります。
保険会社ごとに告知書の内容は異なりますが、虚偽の申告をすると、契約解除や給付拒否につながる可能性があるため、必ず正確に申告しましょう。
障害者手帳を持っていても、運転免許証を所持できる?
障害者手帳を持っていても、原則として運転免許証の所持が可能です。ただし、認知症や統合失調症、てんかん、うつ病などの一部の病気については、運転免許本部や主治医への相談も検討しましょう。
障害者手帳を持っていても、ローンは組める?
障害者手帳を持っていること自体が、ローンの審査に直接影響することはありません。ローンの審査では、手帳の有無よりも、手帳を所持する原因となった病気や障害の内容が重視されます。特に住宅ローンの場合、多くは「団体信用生命保険(団信)」への加入が必要ですが、持病や障害の内容によっては団信に加入できないこともあります。
ただし、団信への加入を条件としないローンもあるため、選択肢として検討できます。
まとめ
障害者手帳を所持すると、障害者雇用への応募や、医療費・生活費・税金の軽減など多くの支援を受けられるようになります。自分の状況や希望に合わせて就職先や働き方の選択肢が広がり、経済的な負担も軽くなるのが大きなメリットです。
一方で、申請から交付までに一定の期間がかかることや、障害の内容によっては生命保険やローンの審査に影響する場合があることも理解しておく必要があります。
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著者プロフィール
めぐるファーム編集部
障害者の雇用が少しでも促進されるよう、企業担当者が抱いている悩みや課題が解決できるようなコンテンツを、社内労務チームの協力も得ながら提供しています。