仕事のストレスがきっかけで適応障害を発症した場合、無理に通勤や業務を続けると症状が悪化したり、回復までに長い時間がかかったりすることがあります。日常生活や仕事に支障が出ていると感じたら、休職を検討するタイミングかもしれません。今回は、適応障害で休職を考えている方に向けて、休職期間の目安や、申請の具体的な流れを解説します。
適応障害の症状

適応障害とは、特定の環境や出来事によるストレスが原因となり、心身にさまざまな不調が現れる疾患です。
例えば、職場での人間関係や仕事内容の変化、家庭でのトラブル、進学や転職といった生活上の大きな変化が原因になることが多いとされています。適応障害は誰にでも起こりうるもので、特別な人だけがかかる疾患ではありません。
精神面では、主に抑うつ気分や不安、怒り、焦り、緊張のほか、意欲や集中力の低下といった症状がみられます。身体面では、不眠や動悸、息切れ、めまい、吐き気などが現れることもあります。
さらに、アルコールの摂取量が増える、暴飲暴食に走る、仕事や学校を無断で休むなど、行動面に変化が生じることも珍しくありません。無謀な運転や対人トラブル、けんかなど、攻撃的な行動をとってしまうケースもみられます。
うつ病との違い
適応障害とうつ病は、どちらも気分の落ち込みや不安といった精神的な症状がみられますが、発症のきっかけや症状の現れ方に違いがあります。
適応障害は、特定のストレス要因がはっきりしている点が大きな特徴です。
例えば、職場の人間関係や仕事内容の変化といった具体的な出来事が原因となり、出勤日には不安や憂うつ感、強い緊張などによる身体的不調(手の震え、めまい、発汗など)が出やすくなります。
しかし、休日やストレスの原因から離れているときには気分が少し楽になったり、趣味に打ち込んだりすることでリフレッシュできることも少なくありません。このように、ストレスから離れると症状が和らぐ傾向があります。
一方、うつ病の場合は、ストレスから解放された後も気分の落ち込みや無気力感が継続するのが特徴です。
脳の働きそのものに変化が起こるため、環境が変わっても気分が晴れない、どんなことにも楽しみを感じられない、眠れない、食欲が低下する、集中力が続かないといった症状が長期にわたり現れます。
その結果、日常生活全体に大きな支障をきたすことがあり、重症化するとベッドから起き上がれず、寝たきりになるケースもあります。
適応障害で休職できる?

適応障害と診断された場合、特別に厳しい条件が設けられていることは少なく、一般的には医師の診断書があれば休職が認められます。
ただし、実際の手続きや必要書類、休職期間の取り扱いなどは会社ごとに異なる場合があるため、必ず勤務先の就業規則や労働契約書を確認しましょう。
ポイント1|医師からの診断書が必要となる
休職を申請する際には、一般的に医師による診断書の提出が求められ、自身の症状について職場に説明する必要があります。また、会社が指定する申請書類の提出を求められることもあります。
休職を考えている場合は、まず精神科や心療内科の受診を検討しましょう。
ポイント2|自身の症状の目安
以下のような症状がみられる場合は、休職を考えるべきタイミングです。
- 仕事への意欲が極端に低下し、業務に支障が出ている
- 仕事のミスが増え、集中できない
- 職場の人間関係が原因で、出社そのものが苦痛になっている
- 不眠や食欲不振、頭痛などの身体的な不調が続き、日常生活に支障をきたしている
- 自分自身の状態を客観的に判断できなくなっている
- 自傷や自殺の考えが浮かぶ
このような症状が現れた場合、無理に働き続けると回復が遅れることがあります。早期回復を目指すためにも、早めの休職を検討しましょう。
ポイント3|会社によって、休職中の給与の支払いは異なる
休職期間中は、原則として給与は支給されません。ただし、会社によって取り扱いが異なるため、勤務先の規定や労働契約を確認しましょう。
適応障害の休職期間の目安
適応障害で必要となる休職期間は、一人ひとりの症状や回復のペースによって大きく異なります。
医師からの診断書では、一般的に1か月から3か月程度の休職期間を設けるケースが多くみられます。
企業によっては診断書なしでも休職できる場合もあり、その際は「2週間」や「1か月」など比較的短い期間で様子を見た上で、体調の経過に応じて休職期間を延長することがあります。
無理に復職を急ぐと症状が再発したり悪化したりするおそれがあるため、主治医と相談しながら慎重に復帰時期を決めることが大切です。
また、復職後も無理をせず、体調や気持ちに不安がある場合は再度主治医に相談しましょう。
なお、会社によっては休職期間に上限が設けられている場合や、一定期間を超えると退職や解雇といった取り扱いになることもあります。事前に就業規則や労働契約書を確認し、不明な点があれば人事や労務担当者に確認しましょう。
会社への休職申請の流れ

ここでは、適応障害で会社を休職するときの流れを3つのステップで解説します。
1.病院を受診
適応障害の疑いがある場合は、まず医療機関を受診しましょう。病院を選ぶ際は、産業医として企業のメンタルヘルスや職場復帰支援に詳しい医師がいるかどうかを確認しておくと安心です。
職場特有のストレスや悩みに理解がある医師であれば、症状の原因を的確に把握した上で、状況に応じた診断や治療方針を提案してくれる可能性が高くなります。
また、受診前は自分の症状や困っていることを整理しておくことも大切です。例えば、症状が出始めた時期や具体的な内容、悪化したきっかけ、仕事や日常生活への影響、これまでに試した対処法とその効果など、詳しくメモにまとめておくと診察がスムーズに進みます。
自分の状態を正確に伝えることで、適切な診断や治療方針を立ててもらいやすくなり、早期回復につながります。
2.診断書作成の依頼・受け取り
診断書には、患者の氏名や診断名、症状、日常生活や業務への影響、必要な治療や休養の期間、就業制限の有無など、医師の所見が記載されます。
また、診断書の発行までにかかる日数は病院によって異なります。通常は数日から1週間程度かかることが多いですが、即日発行に対応している精神科や心療内科もあります。
休職を早めに申請したいときは、あらかじめ即日発行可能な医療機関を調べておくとスムーズです。
ただし、医師の診断内容によっては、診断書の発行が難しい場合もあることは理解しておきましょう。
なお、診断書の発行には文書料として4,000~5,000円程度の費用がかかります。
3.会社での休職手続き
休職手続きを進める際は、まず診断書を会社のどの部署に提出すれば良いか確認しましょう。多くの場合は直属の上司や人事部門が窓口となりますが、会社ごとに手続きの流れが異なります。
休職の申請を行う際は、以下の点についても確認しておきましょう。
- 休職期間の上限
- 休職中の給与や手当の扱い
- 社会保険や福利厚生の継続について
- 会社との連絡方法や連絡頻度
- 復職時に必要な手続きや条件
なお、休職手続きには数日かかるケースもあるため、早めに準備し、余裕をもって申請しましょう。
まとめ
適応障害の症状が悪化すると、仕事だけでなく日常生活にもさまざまな支障が出ることがあります。そのため、無理をして働き続けるのではなく、できるだけ早い段階で休職を検討することが大切です。
休職期間や休職中の給与の取り扱いについては会社ごとに違いがあるため、不明点があれば、事前に人事や労務担当者などに確認しておきましょう。
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めぐるファーム編集部
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