障害者雇用のアウトソーシング先は?メリット・デメリットも解説

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一定数の労働者を雇用する企業では、障害者雇用の法定雇用率の達成が義務化されています。法定雇用率の達成に悩んでいる企業の方も多いのではないでしょうか。今回は、障害者雇用に悩む企業向けに、障害者雇用のアウトソーシングの特徴や活用のポイントについて紹介します。

障害者雇用の「アウトソーシング(外注)」の基本的な仕組み

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障害者雇用のアウトソーシングとは、企業が障害者を雇用して、外部のパートナーに障害者の就労や就業場所のサポートを委託するモデルです。

業務指導や定着支援、勤怠管理などの職業上のサポートを支援事業者側で行う仕組みです。具体的には、支援事業者は障害者が働きやすい就業場所の提供などを行っています。支援事業者によっては、提供するサポート内容が異なることもあります。

障害者を直接雇用するのは、アウトソーシングを利用する企業です。対象の労働者は、法定雇用率の達成状況の算定に含まれます。

障害者雇用をアウトソーシングするメリット

障害者雇用を進めるにあたって、企業の課題としてあるのが、障害者の職場への定着率です。以下のような悩みが企業側ではよくあがります。

  • 障害者の特性に適した人事配置が難しい
  • 人事評価が難しい
  • 業務の分担が難しい
  • 理解不足で障害者本人にも他の従業員にも心理的負担がかかっている
  • 障害者への合理的配慮のやり方がわからない

アウトソーシングは、障害者を雇用する企業に代わって、障害者が安心して働ける環境や体制を提供するサービスです。社内に障害者雇用のノウハウや職場環境がなくても、障害者を雇用できます。

障害者雇用のアウトソーシング先では、障害者の特性に合わせた環境が整っているため定着を図りやすく、法定雇用率を満たしやすいのもメリットです。

障害者雇用の主なアウトソーシング先

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障害者雇用のアウトソーシング先として、主に、農園型障害者雇用サービスと障害者雇用向けサテライトオフィスの2種類があります。それぞれの特徴を紹介します。

農園型障害者雇用サービス

農園型障害者雇用サービスは、支援事業者が、障害者雇用を希望する企業に農園を貸し出す仕組みです。農作業を通じて障害者が働ける環境を提供する雇用支援モデルを特徴としています。

法定雇用率の達成義務がある企業は、農園を利用することで、障害者雇用義務の達成や雇用継続の悩みを解決できます。農園の利用料などを支援事業者に支払う代わりに、障害者雇用に必要な環境整備などのコストや従業員の業務負担を抑えられるのです。

メリット

農作業は、事務作業のようにマルチタスクではないため、さまざまな特性を持つ障害のある方も働きやすいメリットがあります。同じ場所で作業する事務作業より開放感があり、ストレスも受けにくいため、職場定着率の向上につながります。

障害のある方にとって、仕事の成果が目に見えやすいのもメリットです。企業から給与を受け取りつつ、やりがいのある仕事ができます。

障害者を雇用する企業には、障害者雇用のための設備の整備や既存業務の切り出しが不要といったメリットがあります。

デメリット

サービスを利用する企業には、農園設備の利用コストがかかります。また、障害者のサポートのための管理者の雇用が必要な場合、人的コストが増加する可能性があります。

障害者雇用をアウトソーシングしても、企業が社会的責任を引き続き負わなければならない点にも注意が必要です。雇用した障害者をサポートできるように、農園での状況を把握する仕組みづくりや交流の機会が必要です。

障害者雇用向けサテライトオフィス

サテライトオフィスとは、企業が管理する本社や支店以外の場所に設置されるオフィスのことです。本社からはサテライト(衛星)のような存在であることから、サテライトオフィスといわれます。

障害者雇用向けサテライトオフィスは、障害がある方も安心して働ける環境が整備されているのが特徴です。バリアフリーや専門の支援員の常駐などにより、障害がある方の身体的・精神的なストレスを軽減した就労を実現できます。

メリット

障害者雇用向けサテライトオフィスのメリットは、障害のある方が通いやすく、利用しやすい職場環境を提供できる点です。企業側には、定着率の向上により法定雇用率を達成しやすいメリットがあります。

応募する障害者の方にとっては、勤務時間のハードルが低いのもポイントです。サテライトオフィス勤務の求人は、時短勤務なども多く、長時間の労働が難しい方や体調が安定しない方などにも対応しています。

デメリット

サテライトオフィス勤務の場合、本社や支店勤務のように障害のある方と担当者が直接顔を合わせる機会が減ります。指導や精神的なフォローが必要なときに行えず、障害がある方の短期間でのスキルアップが難しくなる場合があります。

アウトソーシング先としてなぜ“農園型”が注目されている?

農園型障害者雇用サービスは、10数年前に始まった事業です。就労継続支援A型事業所の利用者は8.5万人、特例子会社での雇用者数は4万人程度とされていますが、これらに次ぐ勢いで急速に広まっています。

農園型障害者雇用サービスを利用する企業は全国で800社以上あり、1万人程度の障害者が就労しているといわれています。

農園型障害者雇用サービスが注目される背景のひとつは、企業の法定雇用率の達成です。法定雇用率は段階的に引き上げられており、多くの企業が達成するために、障害者雇用を促進する必要性が高まっているのです。

障害者の法定雇用率とは? 雇用促進のためにすべきことを解説

障害者雇用促進法に従い、企業には定められた割合以上の障害者を雇用する義務があります。従業員の増加に伴い、法定雇用率の達成が課題になっている場合や、そもそも自社の規模で雇うべき人数がわからない場合もあるでしょう。障害者雇用の計画立案には、単なる制度の理解だけでなく、自社の雇用義務数と実雇用率を正確に把握するプロセスが不可欠です。今回は、法定雇用率の仕組みや算定方法のほか、未達成の場合のリスクについても解説します。なお、このコラムでは「障害者の雇用の促進等に関する法律」を「障害者雇用促進法」として表記します。障害者の法定雇用率とは?初めに、法定雇用率の制度の趣旨や今後の動向について解説します。障害者雇用促進法に基づく「法定雇用率」について障害者の職業的な自立や職業の安定を目的とした障害者雇用促進法では、事業主に法定雇用率の順守を義務付けています。法定雇用率とは、事業主に求められる障害者の雇用割合です。雇用と就業は、障害者が能力を発揮し、社会の一員として自立した生活を送るための軸として法律でも重視されています。事業者に期待される役割は、社会的責任として雇用を通じて障害者を支援することです。働きやすい職場づくりに取り組むことで、事業者にも、法令遵守による社会的信用の向上やダイバーシティの推進などのメリットがもたらされます。民間企業の法定雇用率は、以下の計算式で算出される数値やその他の要素を考慮して設定されています。障害者雇用率 =(A+B)÷(C+D)A:常用で働く障害者の数B:失業中の障害者の数C:すべての常用で働く労働者数D:すべての失業者数制度の対象となるのは、原則として障害者手帳を所持している方です。特殊法人や国および地方公共団体には、民間企業を下回らない雇用割合が求められます。法定雇用率に関する法令については、こちらの記事をご覧ください。 障害者雇用促進法とは?対象企業から求められる義務、違反リスクまで徹底解説 障害者雇用促進法により、障害者雇用の義務が発生することがわかっていても、具体的な内容を把握しきれていない担当者も多いのではないでしょうか。今回は、障害者雇用促進法の概要や改正ポイント、企業における義務について紹介します。障害者雇用促進法とは?障害者雇用促進法は、障害者の就労の安定を目的とした法律です。1960年に制定された身体障害者雇用促進法から始まり、名…

https://me-gu-ru.net/media/column/114/

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法定雇用率の達成にあわせて課題にあがるのが、雇用する障害者の定着率の低さです。農園型は、シングルタスクで障害者にとってストレスが少ないとされていることから、職場定着率の向上で注目されています。

農園型障害者雇用サービスを、障害者雇用のアウトソーシング先のひとつに考えてみてはいかがでしょうか。

農園型障害者雇用サービスの詳細はこちらをご覧ください。

農園型障害者支援とは?仕組みとメリットをわかりやすく解説!

農園型障害者支援とは、農業と福祉を結びつけた「農福連携(のうふくれんけい)」という取り組みのひとつで、障害者の社会参加や自立支援を目的とした新しい雇用のかたちです。政府もこの取り組みに力を入れており、2016年には「共生社会」の実現を目指す政策の一環として農福連携を推進しました。さらに2024年には「農福連携等推進ビジョン」の改訂版が発表され、その広がりはますます加速しています。今回は、農園型障害者支援の仕組みや注目されている背景、企業側・障害者側のメリットについてわかりやすく解説します。「農福(農業×福祉)連携」のひとつ農園型障害者雇用とは障害者の就労支援と農業振興を両立させる新たな取り組みとして注目されている「農園型障害者雇用」ですが、その仕組みについて詳しく知らない方も多いのではないでしょうか。まずは農園型障害者雇用の概要と仕組みについてみていきましょう。農園型障害者雇用の概要農園型障害者雇用とは、企業が外部の支援業者から農園を借り受け、障害者の就労環境を整える雇用モデルのことです。企業は障害者を直接雇用しつつ、日々の作業場である農園の管理や業務のサポートは支援業者に委ねることで、安心して雇用を継続できます。農園という自然に囲まれた環境は、心身の健康にも良い影響を与え、特に屋内での作業が苦手な人や軽作業を希望する人にも適しています。また、企業にとっては障害者雇用義務の達成や雇用継続の課題を解決でき、社会的責任を果たす手段としても注目されています。農園型障害者雇用の仕組み農園型障害者雇用は、企業と支援業者、障害者の三者が連携して成り立つ仕組みです。以下の4ステップで構成されています。1.企業と支援業者の契約企業は、障害者雇用の受け入れを前提に支援業者と契約を結ぶ支援業者は農園を用意し、必要な設備や作業内容を整備する障害者の紹介や就労開始時のサポートも支援業者が担う2.採用活動支援業者が就労可能な障害者を企業へ紹介する企業が選考を実施し、該当者と直接雇用契約を締結する3.農園での就労開始雇用された障害者は、農園で農作業に従事する4.農園運営と継続支援支援業者が農園全体の管理・運営を担当し、企業に対して雇用継続に関するアドバイスを行う企業の担当者は、業務指導や雇用管理を担う障害者への業務指導や勤怠管理までも支援業者が代行するケースもある農園型障害者雇用が注目されてい…

https://me-gu-ru.net/media/column/152/

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出典:日本農副連携協会「農園型障害者雇用問題研究会報告書

障害者雇用のアウトソーシングを適切に進めるポイント

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障害者雇用のアウトソーシングは、企業自らが障害者雇用の義務を負っていないなどの一部批判もあり、賛否両論があるのも事実です。適切に進めることが、企業、障害のある方、社会のすべてに対して意味をもたらします。

ここでは、障害者雇用のアウトソーシングを適切に進めるために押さえておきたい3つのポイントを紹介します。

障害への正しい理解を深める

先入観から、障害のある方に難しい仕事は任せられないと考える企業も多く存在します。しかし、障害のある方でも、高い能力を発揮できるケースもあります。

障害者を雇用する企業側で、障害者の可能性や能力について正しく理解を深めることが重要です。実態について知見を深め、障害者の適性を見極めて適切な職務に配置し、職業的な配慮を行えば、期待以上の成果を得られる可能性もあります。

就業に意欲的な方は戦力となる期待ももてるため、本業へのステップアップを検討していく仕組みづくりが必要です。

コンサルティングや研修の活用も検討する

障害者雇用のアウトソーシングの利用は、自社にノウハウが蓄積しにくいという問題点があります。障害者の人材登用や管理などは、基本的に支援事業者側が行うためです。

アウトソーシングをうまく活用しつつ、将来的に自社で雇用管理できる環境整備も進めていきましょう。障害者雇用サービスが提供する、研修や業務切り出しなどのコンサルティングが役立ちます。

障害者の雇用管理や成長支援に社会的責任をもつ

障害者雇用のアウトソーシングの無計画な利用は、長期的視点を欠いた一時的な対応を招きがちです。法定雇用率の達成が主な目的となり、単なる人数合わせの手段とみなされる可能性もあります。

企業の障害者雇用における社会的責任を果たすためにも、障害者の適切な管理や成長支援を含めた計画が必要です。自社での社会的責任の位置づけを明確にした上で、アウトソーシングを活用しましょう。

まとめ

障害者雇用は、アウトソーシングが可能です。主なアウトソーシング先は、農園型障害者雇用サービスと障害者雇用向けサテライトオフィスです。アウトソーシングにはメリット・デメリットがあるため、企業側でも障害者雇用の管理などの指針を明確にした上で活用することをおすすめします。

本コラムに記載の内容は、2025年8月4日時点の情報に基づきます。

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めぐるファーム編集部

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