障害者雇用納付金の仕組みとは?気になる金額や、対象企業の条件を紹介

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障害者雇用納付金とは、障害者雇用促進法に基づく制度で、企業が一定数以上の障害者を雇用しない場合に納付金が徴収されるというものです。今回は、障害者雇用納付金の仕組みや対象となる企業の条件のほか、障害者の雇用に不安がある際の解決策について解説します。なお、このコラムでは「障害者の雇用の促進等に関する法律」を「障害者雇用促進法」として表記します。

障害者雇用納付金制度の仕組み

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障害者雇用納付金制度とは、企業が本来雇用するべき障害者数が不足している場合に、不足人数に応じた金額を納める制度です。

障害者雇用納付金制度に基づく納付金と主な助成金・給付金には、以下のような種類があります。

納付金・助成金などの種類内容
障害者雇用納付金雇用すべき障害者の人数を満たしていない企業が、不足する障害者の人数に応じて1人当たり月額5万円を納付
障害者雇用調整金障害者の雇用人数を達成している企業に対し、基準率を超えて雇用する障害者数に応じて支給(1人当たり月額2万9,000円など)
特例給付金(※)週20時間未満の短時間で働く障害者を雇用する事業主への支援として、特例給付金を支給
報奨金労働者数が100人以下の企業で、一定数を超えて障害者を雇用している場合は報奨金を支給(1人当たり月額2万1,000円など)
在宅就業障害者特例調整金在宅で就業する障害者に仕事を発注し、報酬を支払った場合に支給

※令和6年4月1日以降の雇用期間については、特例給付金が廃止。なお、令和6年3月31日までに雇入れられた重度以外の身体障害者・知的障害者(週所定労働時間が10時間以上20時間未満の方が対象)については、1年間の経過措置あり。

障害者雇用納付金制度は、障害者の雇用人数が足りない企業からの「徴収金」を財源として、障害者の雇用人数をクリアした企業への「支給金」をまかなうことで、経済的公平を調整する目的で作られました。

出典:独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構「障害者雇用納付金制度の概要

障害者の法定雇用率について詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。

障害者の法定雇用率とは? 雇用促進のためにすべきことを解説

障害者雇用促進法に従い、企業には定められた割合以上の障害者を雇用する義務があります。従業員の増加に伴い、法定雇用率の達成が課題になっている場合や、そもそも自社の規模で雇うべき人数がわからない場合もあるでしょう。障害者雇用の計画立案には、単なる制度の理解だけでなく、自社の雇用義務数と実雇用率を正確に把握するプロセスが不可欠です。今回は、法定雇用率の仕組みや算定方法のほか、未達成の場合のリスクについても解説します。なお、このコラムでは「障害者の雇用の促進等に関する法律」を「障害者雇用促進法」として表記します。障害者の法定雇用率とは?初めに、法定雇用率の制度の趣旨や今後の動向について解説します。障害者雇用促進法に基づく「法定雇用率」について障害者の職業的な自立や職業の安定を目的とした障害者雇用促進法では、事業主に法定雇用率の順守を義務付けています。法定雇用率とは、事業主に求められる障害者の雇用割合です。雇用と就業は、障害者が能力を発揮し、社会の一員として自立した生活を送るための軸として法律でも重視されています。事業者に期待される役割は、社会的責任として雇用を通じて障害者を支援することです。働きやすい職場づくりに取り組むことで、事業者にも、法令遵守による社会的信用の向上やダイバーシティの推進などのメリットがもたらされます。民間企業の法定雇用率は、以下の計算式で算出される数値やその他の要素を考慮して設定されています。障害者雇用率 =(A+B)÷(C+D)A:常用で働く障害者の数B:失業中の障害者の数C:すべての常用で働く労働者数D:すべての失業者数制度の対象となるのは、原則として障害者手帳を所持している方です。特殊法人や国および地方公共団体には、民間企業を下回らない雇用割合が求められます。法定雇用率に関する法令については、こちらの記事をご覧ください。 障害者雇用促進法とは?対象企業から求められる義務、違反リスクまで徹底解説 障害者雇用促進法により、障害者雇用の義務が発生することがわかっていても、具体的な内容を把握しきれていない担当者も多いのではないでしょうか。今回は、障害者雇用促進法の概要や改正ポイント、企業における義務について紹介します。障害者雇用促進法とは?障害者雇用促進法は、障害者の就労の安定を目的とした法律です。1960年に制定された身体障害者雇用促進法から始まり、名…

https://me-gu-ru.net/media/column/114/

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障害者雇用納付金制度の対象企業

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障害者雇用納付金制度の対象企業の条件と、常用雇用労働者の計算方法を紹介します。

申請義務がある企業の条件

常用雇用労働者数が100人を超えるすべての企業に対して、障害者雇用納付金の申告義務が発生します。

具体的には、申請期間となる前年度の4月から今年度の3月までの間、常用雇用している労働者数が100人を超える月が5か月以上ある企業が対象です。

申告義務があるにも関わらず納付金の申告をしなかった場合は、延滞金などの罰則が科されます。

一方、常用雇用労働者数が100人以下の企業には申告義務がなく、納付金の申告を自主的に行うことで報奨金が支払われる場合もあります。

常用雇用労働者の計算方法

常用雇用労働者は、週所定労働時間が20時間以上で期間の定めなく雇用されている、または雇用期間の定めはあるが1年以上継続して雇用されることが見込まれる方を指します。

常用雇用労働者の人数を算出する際は、以下の計算式を用います。

短時間労働者以外の常用雇用労働者+短時間労働者の人数×0.5=常用雇用労働者の総数

常用雇用労働者のうち、「短時間労働者以外の常用雇用労働者」として週所定労働時間が30時間以上の労働者を1人につき1カウント、「短時間労働者」として週所定労働時間が20時間以上30時間未満の労働者を1人につき0.5カウントします。

正社員の人数だけではなく、パートやアルバイトなどの短時間労働者の人数も含めることで正しい常用雇用労働者の人数を算出できます。

障害者雇用納付金の納付額

障害者雇用納付金は罰金ではなく、障害者雇用に必要な職場環境の整備や設備改善などの経済的負担を調整するための仕組みです。

障害者雇用納付金は、所定の法定雇用率を超えて障害者を雇用し、障害者雇用を促進する企業に対して調整金や報奨金、各種助成金として分配されます。

次の項目から、障害者雇用納付金の納付条件や金額、計算方法を紹介します。

納付条件

雇用する労働者数が100人以上、かつ障害者の法定雇用率を下回っている企業は、障害者雇用納付金を納める必要があります。逆に、法定雇用率を超えて障害者を雇用している企業には調整金や報奨金が支給されます。

納付金額

障害者雇用納付金の納付金額は、雇用が不足している障害者1人あたり月額5万円です。

納付期限

障害者雇用納付金の納付期限は、毎年4月1日から5月15日までです。なお、申告対象期間は前年度の4月から今年度の3月です。

つまり、2024年の4月から2025年の3月までの申告は、2025年の4月1日から2025年の5月15日までに行うことになります。

障害者雇用納付金の計算方法

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障害者雇用納付金の金額を計算するためには、月ごとに雇用すべき障害者人数と、実際に雇用した月ごとの障害者人数が必要です。

計算方法は以下の通りです。

(法定雇用率による障害者の年度合計数-実際に雇用した障害者の年度合計数)×5万円

なお、納付金額は1年あたりの金額ではなく、1か月あたりの金額になることに注意が必要です。

例えば、本来は5人雇う必要があるのに2人しか雇っていなかった場合、不足人数は3人となるため、以下で算出された金額を納入しなければなりません。

5人-2人)×5万円×12か月=180万円

納付金額は年間を通しての不足人数で算出されるため、法定雇用率が達成できていない月が1つでもあれば納付金を納める必要があります。

障害者雇用納付金制度における調整金・報奨金の支給額

障害者雇用納付金制度における調整金・報奨金の支給額を紹介します。

障害者雇用助成金については、以下の記事でも詳しく解説しているので参考にしてください。

障害者雇用における助成金一覧|申請における注意点も解説

法定雇用率の達成に向けて、障害者雇用を検討しているものの、コスト面で悩んでいませんか。障害者雇用に関連して、さまざまな助成金制度が設けられています。今回は、障害者雇用で活用できる助成金の種類や注意点について紹介します。障害者雇用における助成金とは障害者雇用における助成金とは何か、助成金の背景や受給できる事業者の条件について紹介します。障害者雇用における助成金制度の概要障害者雇用促進法により、一定数以上の従業員を雇用している事業主には、法定雇用率以上の障害者を雇うことが義務化されています。法定雇用率とは、国が定める、常用労働者のうちに占める対象障害者の割合です。法的に障害者雇用が促進されたことにより、障害者の積極的な採用が進むようになりました。障害者雇用のためには、障害者の安全を確保した職場環境の整備が求められます。また、多様な特性をもつ障害者を受け入れる支援体制も必要です。障害者雇用の助成金制度は、事業主が障害者雇用を進めるために必要な環境整備ができるようにするものです。障害者雇用促進に役立つさまざまな、雇用関連の助成金があります。障害者雇用で活用できる助成金の受給条件事業者が雇用関連の障害者雇用の助成金を受給するには、各助成金の要件のほか、以下の共通事項を満たす必要があります。雇用保険適用事業所であること必要な書類を整備・保管すること審査や調査に協力すること会社都合による雇止めなどの事実がないこと(助成金によります) 等雇用保険適用事業所とは、原則として、労働者を1人以上雇用する事業所のことです。上記のほか、助成金ごとに定められた申請期間内に申請することも求められます。企業が活用できる障害者雇用の助成金一覧障害者雇用に関連して、企業が利用できる助成金を紹介します。障害のある方を雇用したい場合障害がある方を雇用した場合に利用できる助成金を紹介します。特定求職者雇用開発助成金|特定就職困難者コース就職が困難とされる高齢者や障害者を雇用した場合の助成金です。障害者については、身体障害者、知的障害者、精神障害者、重度障害者が対象です。支給要件として、ハローワークなどの職業紹介事業者を通しての雇用が求められます。継続して雇用することも条件です。対象の労働者を雇用した場合の1人あたりの助成金の額は、週あたりの労働時間や障害の重さなどで異なります。 対象労働者 支給額 短時間労…

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障害者雇用調整金

障害者雇用調整金とは、常時雇用している労働者数が100人を超えており、法定雇用率を上回る人数の障害者を雇用する企業に支給される調整金です。

支給金額は1人当たり月額2万9,000円(※)で、事業主の申請に基づき支給されます。

障害者雇用調整金の計算方法は以下の通りです。

(法定雇用率による障害者の年度合計数-実際に雇用した障害者の年度合計数)×2万9,000円

調整金に関しても年間の雇用人数で算出するため、障害者雇用人数を満たした月が1つでもあれば調整金を受け取れる可能性があります。

※令和6年4月1日以降の雇用期間に関して、支給対象人数が年120人月を超える場合、当該超過人数分への支給額が1人当たり月額2万3,000円となります。

報奨金

報奨金は、常用労働者数100人以下で納付金の申告義務がない企業において、一定数以上の障害者を雇用している場合に支給されます。

年間の障害者雇用人数が72名、あるいは「常用雇用労働者×4%」の多いほうを超えた場合に、1人当たり月額2万1,000円が支給されます。

報奨金の計算方法は以下の通りです。

(常用雇用労働者の合計数-「72人」あるいは「常用雇用労働者数×4%」のいずれか多いほう)×2万1,000円

報奨金は、積極的な障害者雇用を行っている小規模事業主に対して経済的な支援を行うことを目的としています。

在宅就業障害者特例調整金・報奨金

在宅就業障害者特例調整金・報奨金とは、在宅で働く障害者を雇用している事業主に対して調整金を支給する制度です。

特例調整金または特例報奨金の対象企業が、自宅で就業する障害者に仕事を発注する場合、または在宅就業支援団体を通して仕事を発注した場合に支給されます。

特例調整金は常時雇用する労働者が100人を超える事業主、特例報奨金は常時雇用する労働者が100人以下の事業主に支給されます。

在宅就業障害者特例調整金・報奨金それぞれの支給金額は以下の通りです。

  • 在宅就業障害者特例調整金:2万1,000円
  • 在宅就業障害者特例報奨金:1万7,000円

また、在宅就業障害者特例調整金・報奨金それぞれの計算方法は以下の通りです。

  • 在宅就業障害者特例調整金の場合:(障害者への年度内の支払い総額÷評価額35万円)×2万1,000円
  • 在宅就業障害者特例報奨金の場合:(障害者への年度内の支払い総額÷評価額35万円)×1万7,000円

出典:厚生労働省「在宅就業障害者支援ノウハウブック 障害者の就業機会の拡大に向けて

障害者の雇い入れに不安がある企業へのQ&A

障害者の雇い入れに不安がある企業のためのQ&Aを紹介します。

納付金の支払いができないときは?

納付金の支払いができないときは、分納を選択できます(申告書提出時に延納の申請が必要)。分納は、5月16日、8月1日、11月30日が期限です。

ただし、障害者雇用納付金が100万円以上の場合のみ分納が可能で、100万円以下の場合は全納のみです。

障害者雇用納付金の支払いをしていなかったときには督促が行われますが、納付期限を過ぎても納められる場合もあるため、速やかに支払いましょう。

障害者の雇い入れに関する相談先は?

障害者の雇い入れに関する相談先として、主に以下の4つがあります。

  • ハローワーク

全国544か所(令和7年度時点)。障害者の態様に応じた職業紹介や職業指導、求人開拓などを行う。

  • 地域障害者職業センター

全国47都道府県に設置。障害者職業カウンセラーによる障害者に対する職業評価や職業準備支援、事業主への障害者雇用に関する専門的な支援を行う。

  • 障害者就業・生活支援センター

全国337か所(令和7年6月時点)。障害者の身近な地域で就業面と生活面の一体的な相談・支援を実施している。事業主からの雇用管理についての相談も受付可能。

  • 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構

障害者に対して適職の選定や職業能力向上の支援、事業主に対して施設設備や作業環境の整備の援助など、さまざまな支援サービスを提供している。

障害者を雇い入れる体制が構築できていないときは?

障害者の雇用を進めたいと考えていても、障害者を雇用するイメージやノウハウがない、職場の安全面が適切に配慮できないなどの問題を抱えている企業は多いものです。

その際は、農園型障害者雇用という選択肢もあります。農園型障害者雇用とは、障害者の給与や社会保険に関しては企業側が責任を持ち、普段の業務管理やサポートを支援事業者が担う仕組みです。

農園型障害者雇用の「めぐるファーム」では、障害者がやりがいを持って働けるよう、農作業を通してスキルアップができる環境を提供しております。

農園は年間を通じて快適な温度に保たれており、自然災害に強いトラス構造のハウスを採用しているため、安心して働けます。

また、障害者の方は農園での作業に従事しますが、雇用主である企業が管理監督を担う形となるため、自社の障害者法定雇用率にカウントすることが可能です。

「障害者の雇用に不安がある」「どう進めてよいか分からない」とお悩みの方は、ぜひ以下の詳細をご覧ください。

>>めぐるファームについて詳しくはこちら

まとめ

障害者雇用納付金は、企業が障害者の法定雇用率の基準を満たさない場合に納付金を徴収する制度です。企業が障害者を雇用する際の負担を調整するものであり、罰金とは異なり、支払ったからといって障害者雇用義務がなくなるわけではありません。

企業は障害者の雇用に積極的に取り組むことで、ブランドイメージの向上や企業の成長、発展を促進できるなど、メリットもあります。法律の求めに応じ、可能な取り組みを進めましょう。

障害者雇用のノウハウがなく不安な方は、今回紹介した相談先をはじめ、農園型障害者雇用のようなサービスを活用することもぜひご検討ください。

本コラムに記載の内容は、2025年8月4日時点の情報に基づきます。

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めぐるファーム編集部

障害者の雇用が少しでも促進されるよう、企業担当者が抱いている悩みや課題が解決できるようなコンテンツを、社内労務チームの協力も得ながら提供しています。

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